left★板書(+発問)★    
(先生の授業ノート…普通クラス)
   夏目漱石 「夢十夜」

〈作品・出典〉
明治41年(1908)「朝日新聞」連載

〈作者〉慶応3(1867)〜大正5年(1916)
<近代文学を確立した文豪>
  ・愛媛県松山中学教諭(明治28年)
  ・正岡子規と俳句に熱中
  ・イギリス留学(明治33〜36年)

〈作風の変化など〉
○処女作     『吾輩は猫である』(明治38年)
               (文明・社会批評)
         『坊っちゃん』(明治39年)
○<前期三部作> 『三四郎』『それから』『門』

○<後期三部作> 『彼岸過迄』『行人』『こころ』
                (大正3=47才)
○最後の作品   『明暗』(絶筆・未完)
          →晩年の境地「則天去私」
          (自然にのっとり
           自分のエゴを捨てて生きる
○評論で有名な作品
  ・『日本文明の開化』『私の個人主義』

〈概要〉               (→主題)
作者の心の内部に潜む深層心理や不安や空虚な思い等 を、各作品の「夢」に登場する人物に仮託して描いた とされる。第一夜〜第五夜の「こんな夢を見た」との 書き出しが有名である。


right★補足(+解説)★      
(短編小説集)2023年9月



・47歳→自然主義文学(明40〜)に反対の立場

・慶応で江戸が終わり、明治が始まる(〜49歳)
・漱石=頑固者の意、本名は金之介→占いで名付ける
・英文学者として出発

・森鴎外はドイツ留学


・1905年、雑誌「ホトトギス」に載り、文壇に登場

余裕ある態度で社会を風刺
倫理観と反社会的な行為
 →急激に変化する社会・流れについていけない人間
<エゴイズム>(利己主義)・個人主義を追求
         (人間の自己本位で身勝手な心)
    ↓
乗り越える道を追求
 =「天」(自然の摂理)に従い、
  「私」(自分)の小さな考えを捨てる

・講演内容のまとめ (自由には責任がついている)
夏目漱石「夢十夜」原文(全)
夏目漱石「夢十夜 第一夜」アニメ
夏目漱石「夢十夜 第一夜」解説動画
夏目漱石「夢十夜 第六夜」解説動画
夏目漱石「夢十夜 第一夜」解説
夏目漱石「夢十夜 第六夜」解説
夏目漱石「夢十夜 第七夜」解説

left★板書(+発問)★   
〈『夢十夜』の各作品世界…粗筋〉
第一夜 死んでゆく女との再会を約束して百年待つと     いう男を描く
第二夜 悟りにとらわれた自らの我執を捨て切れない     侍を描く
第三夜 子供(罪)を背負って闇の中を歩く自分自身     を描く
第四夜 言葉の通りに真っ直ぐに歩き続けた爺さんを     描く
第五夜 逢瀬を妨げられて死を待つだけの男の恨みを     描く
第六夜 仏師運慶の姿と作品に見た時代と芸術に対す     失望感を描く
第七夜 行く先不明の船上で感じた不安と死を描く?
第八夜 床屋で鏡越しに見た不思議な光景を描く?
第九夜 夫のためにお百度参りをする妻の悲しみを描     く?
第十夜 女の言葉に操られ死んでゆく男の哀れを描く     ?
right★補足(+解説)★   




全体の構成 【一】第一夜
【二】第三夜
【三】第六夜
【四】第七夜
left★板書(+発問)★    
〈授業の展開〉

【一】第一夜

〈小説の舞台設定…5W1H〉
 (いつ)   明治時代の(?)ある日の夜
 (どこで)  自分の家で
 (誰が)   自分が
 (何を)   死ぬと言う女を
 (どうした) 枕元で座って見ていた
   ↑
 (なぜ)   死んだら、きっと逢いに来るから、
        百年墓の傍で待っていてと言うので

@<もう死ぬと言う女>

〇腕組みをして枕元に座っていると、
 女が静かな声でもう死にますと言う

A<死んだら墓の傍で百年待ってという女>




B<百年待ちながら騙されたのではと思う自分>




C<女の化身として現れた真っ白な百合の花>




▼〈段落まとめ=要約〉
ある夜、女が死ぬと言うので、枕元で座っていたら、
死んだら逢いに来るから、百年墓の傍で待っていてと 言われた自分は、真珠貝で穴を掘って埋葬して、待ち 続けた。しかし、どれだけ待っても女は逢いに来ない ので、騙されたのではないかと思い出した夜、真っ白 な百合の花が咲いたので、百年はもう来ていたのだと 思った。

right★補足(+解説)★        






☆女は「もう死にます」と言うが、「温かい血の色」  「唇の色は赤い」「大きな潤いのある眼」などは、  生のイメージが強く、死のイメージとは異なる。


☆「真珠貝」「天から落ちて来る星の破片」「月の光  」「白百合へ落ちた露」は死や儚い命を、幻想的な  雰囲気や「死」の儚い美しさを連想させる。
 命の儚い美しさが幻想的な雰囲気を強くしていて、  印象的に綴られる。
★百年後にあうから「百合の花」という解釈もある。  『それから』にも登場するが、真っ白で純潔なイメ  ージを持ち甘く強い香りを放つ百合の花は、美しく  情熱的な男女の愛を表すものであるそうだ。
 また、「暁の星」とは、明けの明星すなわち金星を  指していて、愛や美を象徴する星である。
 従って、「第一夜」における自分と女を結ぶ関係は  愛であり、愛を語る言葉はないが、愛の物語なので  ある。命の美しさを背景とした?、幻想的な雰囲気  の中での二人の愛の夢を語っているのが、第一夜な  のだ。

☆印象的な色彩表現としては、女の唇、赤い日が繰り  返されるのが赤色に注目すべきだ。赤は血の色で、  人の命を象徴する。
★第一夜は自分と女のの死別が描かれた物語である。  十の夢の中で、最も幻想的な印象が強い夢である。


left★板書(+発問)★    
〈要約150字=24×6〉(…段落まとめ)

〈補足…鑑賞〉
幻想的な雰囲気の中で、愛する二人の男女が死別する という愛の物語である。

ヘンデル「協奏曲ト短調」

right★補足(+解説)★      
〈補足〉()







left★板書(+発問)★      
【二】第三夜

〈小説の舞台設定…5W1H〉
 (いつ)   
 (どこで)  
 (誰が)   
 (何を)   
 (どうした) 
   ↑
 (なぜ)   

    ↓
〇建築における東西の相違
  ・西欧…壁という強固な物理的遮蔽物によって
      <内と外を明確に区分>
      ↓↑(二項対立=対比)
  ・日本…中間領域を媒介として
      <内は自然に外へつながる>

▼〈段落まとめ〉


right★補足(+解説)★      
















left★板書(+発問)★    
〈要約150字=24×6〉


〈要約200字=24×8〉(…参考資料)


ヘンデル「協奏曲ト短調」


right★補足(+解説)★      
〈補足〉()








left★板書(+発問)★    
【三】第六夜

〈小説の舞台設定…5W1H〉
 (いつ)   明治時代のある日
 (どこで)  護国寺の山門で
 (誰が)   自分が
 (何を)   仏師運慶の彫刻は木の中から         仏像が出て来ると         皆が騒いでいるのを
 (どうした) 耳にして木を持って帰って彫った
   ↑
 (なぜ)   木の中から仏像が出て来るか         と思ったから

@運慶が護国寺の山門で仁王を刻んでいるという評判  だから、行ってみると、もう大勢集まって下馬評を  やっていた。
〇松の緑と朱塗りの門が互いに照り合ってみごとに見  え…何となく古風であり、鎌倉時代とも思われる。
    ↓
〇ところが見ている者は、みんな明治の人間で、
 仏師や仁王について様々に評判し合っている。

A運慶は見物人の評判には委細頓着なく鑿と槌を動か  して、仁王を彫り抜いて行く。その様子がいかにも  古くさく、わいわい云っている見物人と釣り合いが  取れないようで、自分はどうして今自分まで運慶が  生きているのかなと思い、不思議な事があるものだ  と考えながら、立って見ていた。
〇しかし運慶は…一生懸命に彫っている。
〇この態度を眺めていた一人の若い男が、「さすがは  運慶だな…」と誉め出した。「よくああ無造作に鑿  を使って、思うような眉や花ができるものだな」と  自分はあんまり感心して独り言のように云った。
    ↓
〇すると、さっきの若い男が、「あの通りの眉や鼻が  木の中に埋っているのを、鑿と槌の力で掘り出すま  でだ。まるで土の中から石を掘り出すようなものだ  から…」と云った。
    ↓
B自分は…彫刻とはそんなものかと思い出した。そう  なら誰にでもできる事だと思い出し、それで自分も  仁王が彫ってみたくなったから、見物をやめて家へ  帰った。
〇鑿と金槌を持ち出して…積んである薪を片っ端から  掘ってみたが、仁王を蔵しているものはなかった。  見当たらない。
    ↓
Cついに明治の木には到底仁王は埋っていないものだ
 と悟った。
 それで運慶が今日まで生きている理由もほぼ解った。




▼〈段落まとめ〉
第一夜〜第五夜は生と死が描かれるが、第六夜は少し 異なり芸術に関係がある話である。

right★補足(+解説)★      




・運慶=平安後期〜鎌倉初期の仏師
 →快慶と共に、東大寺南大門の金剛力士像を作る
 →金剛力士像は、阿形像と吽形像の二体で寺院の門   などに安置される。仁王とはこれを意味する。
 →男性的な力強さ、ダイナミックでリアルな作風は   時代を超えて多くの人を魅了する??
★仏教文化という古くから続いてきた歴史の中で作ら  れた運慶の仁王像は、西欧化の影響を受けて急速に  変わっていく文化の中では二度と再現できないであ  ろう、昔ながらの日本の精神文化の象徴と捉えるこ  とができる★
 すなわち、運慶の仁王像に並ぶ名作は明治文化の中  では現れないであろうと諦め、それによって更に運  慶の仁王像の芸術的価値が高まっていることを、運  慶が明治時代彫仁王像を彫っている姿に譬えたのだ  ろうと考えられる★
 明治を超えて、現代でも生きていると言える

★明治文化(人間の精神的活動によって生み出される  芸術・文学)に対する失望感や落胆の思い??
 明治文化に批判的立場??
★「明治の木には〜」の表現について、ここでいう
 「木」とは物理的な気を意味しているのではなく  、明治という時代の中で育っていった文化の比喩で  あるように思う。様々なz主義、流派に分かれてい  った名ぞ文化は、まさしく枝分かれしながら大きく  育っていく木を連想させるようだ。
★日本の開花に対して批判的であった漱石は、外発的  要因で急激に育った「明治の木」=明治文化に、運  慶の仁王のような名作は二度と現れないだろうとい  う失望感や落胆、あるいは自嘲の思いを込めて、第  六夜を描いたのではないかと考える。
★近代化によって日本文化が激変していく中で、失わ  れつつある日本の精神を表現した作品の芸術的価値  が一層高まり、時代を超えて評価されている。??
 →<理由>

left★板書(+発問)★    
〈要約150字=24×6〉


〈要約200字=24×8〉(…参考資料)


ヘンデル「協奏曲ト短調」


right★補足(+解説)★      
〈補足〉()
☆江戸時代、鎖国下にあった日本は、明治維新・開国  を経て、急速に近代化へ進む。文化の世界において  も、近代化の影響は大きくあらわれている。
 文明開化による欧化主義の影響で、当初は洋風が流  行し、次第に国粋主義が起こって伝統芸術に回帰し  ていった経緯がある。
 文学の世界も同様に、明治10年代後半頃から西欧  近代文学への理解が起こり、明治20年頃には欧化  への反動として義古典主義が生まれる。
 そして日清戦争を契機として浪漫主義の誕生、更に  明治30年代〜40年代にかけての自然主義文学の  隆盛、その自然主義文学に対して反自然主義文学が  起こった。因みに、この反自然主義文学のグループ  の中に余裕派と呼ばれる流派があり、夏目漱石は余  裕派に属する作家である。
 つまるところ、明治期の文化とは、44年という短  い期間でありながら、文明開化による近代化の影響  を皮切りに、急激な変化を遂げていった文化といこ  とが分かる。
 ところが、漱石は、この開花について、外発的で上  滑りだとして、日h名的な目を向けている。


left★板書(+発問)★        
【四】第七夜

〈小説の舞台設定…5W1H〉
 (いつ)   
 (どこで)  
 (誰が)   
 (何を)   
 (どうした) 
   ↑
 (なぜ)   

@<ホンモノのおカネを作る極意>
              (結論…意見の確認)














▼〈段落まとめ〉


right★補足(+解説)★      


















left★板書(+発問)★    
〈要約150字=24×6〉


〈要約200字=24×8〉(…参考資料)


ヘンデル「協奏曲ト短調」


right★補足(+解説)★      
〈補足〉()








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