left★原文・現代語訳★
題知らず 小野小町
=歌の題名や詠まれた事情が明らかでない(歌)
花の色は 移りにけりな| いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに
(巻二 春歌下113)
=(桜の)花の色は(すっかり)色あせてしまった
なあ。(同じように)空しく私もこの世で長く生き
ながらえて(容色が衰えて)しまったことだよ。
降る長雨をぼんやりと眺めながら物思いに耽って
いた間に。
or=(咲き誇った桜の)花の色は、むなしく色あせて
しまったことだよ。(ちょうど)空しく私が長く
生きながらえ、美貌が衰えてきたように。
降り続く(春の)長雨をぼんやりと眺めながら、
(恋や世間の諸々の)物思いに耽っていた間に。
〈成立日時〉
〈主題〉(感動の中心・心情)
<色褪せた桜の花に、美貌が衰えた自分を重ねる>
思いを詠んだ歌。(容色の衰えへの嘆き)
〈鑑賞〉(感想・補足)
・二句切れ・倒置法・掛詞2つ
・小野小町の最も有名な歌だが、 「移りにけりな」
とは、我が容色の衰えに対する嘆きでだけでなく、
恋が実らない故に心も衰えて行く嘆きだろうか。
・色褪せることのない花など、この世に存在しない。
美貌の女流歌人とされる小町も、その例外でなく、
老いという運命からは逃れられなかったのである。
彼女の老後とはどのようなものであったのか、諸説
あるが、謡曲や伝説・物語が多く残されている。
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right★補足・文法★
・花の色=桜の花の色 →女性の若々しい美しさ
・うつる=色が褪せる、衰える、散る
・…に(完了)けり(詠嘆)な(詠嘆)→二句切れ
・いたづらなり=空しい、無駄だ
・世(ヨ)に経(フ)=この世に(長く)生きながらえる
→「世」=男女の仲の意味が含まれる
→ふる=@雨が「降る」・A年月が「経る」の掛詞
・ながめ=@「長雨」・A「眺め」の掛詞
→「降る」と「長雨」は縁語
・…せ(サ変)し(過去)ま()に()

小野小町「花の色は…」(YouTube 朗読)
コレルリ「ソナタト短調」
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