left★原文・現代語訳★
〈補足…政治的背景と人物〉
平安初期、藤原氏は皇室に順子・明子・高子と次々と
娘を入内させ、生まれた皇子が即位し文徳天皇・清和
天皇・陽成天皇となるとその外戚として摂政・関白と
なり、朝廷内で絶大な権勢を振るうようになる。
「芥川」は、この政治的事情を背景とした話である。
高子は従姉妹の明子に仕えていた時に、既に清和天皇
妃として入内することが決まっていたが、その高子に
在原業平が言い寄り続け遂に盗み出すことになる。
しかし、高子の兄の藤原基経・国経兄弟はこれを察知
して密かに高子を奪い返したのである。
従って、女が鬼に食われたという比喩表現は、実際は
連れ戻されたのであって、背後に藤原氏の影があった
事実を反映しているのである。
(『伊勢物語』第4段「月やあらぬ」〜
第6段「芥川」について)
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right★補足・文法★
〈補足…藤原氏系図〉
藤原冬嗣---- 長良---------------★国経
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|-- 良房--★明子 |--★基経
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|-- 順子 | |--【高子】
| | |----陽成天皇
| |--------清和天皇
|----文徳天皇
仁明天皇
※在原業平は恋多き人物として伝えられるが、生涯に
限りなく思いを寄せた数少ない女性に、藤原高子が
いる。彼女は藤原長良の娘で、五条の邸の西の対に
一時住んでいて、後に清和天皇の后となって二条后
と呼ばれた女性である。だが、入内する前、業平と
関係があったように、『伊勢物語』には記される。
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