left★板書(+補足)★
〈補足1〉蜉蝣の話に込められた父の気持ち
人間の生は、本人の意志によるものではなく、受身で
あるのだ、という少年の発言を受けて、
母の死が少年の生と因果関係があったことの意味を、
今こそ話すべき機会かも知れないと考え、
蜉蝣の話を通して少年に罪の意識を与えず、生と死は
生物の宿命で様々な形があるが、そのようにして貴い
生命が受け継がれていくことを教えようとした。
〈補足2〉生き死にの悲しみ…冷たい光の粒々
目まぐるしく繰り返される生き死にの悲しみ…冷たい
光の粒々だった
↓
蜉蝣は僅かな命であって、身体の器官は生命の維持が
初めからできないようになっている。自分のためでは
なく、子孫を残すためだけに生まれてきたような生物
である。子孫を残すためだけに生きて、子孫を産めば
後は死しか残されていないのである。光り輝く生命の
誕生は、冷たくなる母の死を伴うものだったのだ。
そう考えると、生と死は生物が逃れることができない
宿命で、様々形があるもので、そのようにして生命は
受け継がれていくにせよ、つくづくと複雑な悲しみを
覚えるものだった
ヘンデル「協奏曲ト短調」
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right★発問☆解説ノート★
〈補足3〉最後の部分についての補足説明
父は少年に、蜉蝣の話と母の死について語った。繰り
返される生き死にの悲しみは、どの生物も逃れること
のできない宿命で、様々な形がある。そのような生と
死を通し、貴い命は受け継がれていくのだ。その意味
を少年に理解して欲しい、と父は思った。
少年は父の話を聞き、生き死にの悲しみを具象化した
蜉蝣を、イメージ化して思い浮かべた。そして、自分
を胎内に宿して死んだ母を、その蜉蝣と重ねるように
して思った。蜉蝣の体いっぱいの卵のように、母の胸
までふさぐ僕の白い肉体という生き死にの悲しみを、
具体的なイメージとして思い浮かべ、その脳裏に灼き
ついたのだった。
こういう経験は初めてのことで、少年の精神的な成長
を意味した。
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