(先生の授業ノート)齋藤亜矢「上手い、おもしろい」  
left★板書(+発問)★   
(先生の授業ノート…普通クラス)
   齋藤亜矢「上手い、おもしろい」

〈出典・作品〉
・芸術・文化論
・本文は『ルビンのツボ 芸術する体と心
          (2019年)による

〈筆者〉
・1978(昭和53)年〜
・チンパンジーと人の描画研究をはじめ、認知科学
 の立場から、「芸術する心の起源」を探求する。
           (…明治書院「現代の国語)
・著書 『ヒトはなぜ絵を描くのか 芸術認知科学
     への招待』など

〈概要→要約〉
・芸術には、「上手」ではなく「おもしろい」ことが  最も重要であると論じる

right★補足(+解説)★   
(評論)2023年6月


※随筆=自己の感想・意見・見聞・体験などを
    筆に任せて自由な形式で書いた文章(随想)
 評論=物事の善悪・価値・優劣などを
    批評し論じた文章






全体の構成 【一】(起)「おもしろい」は万能で深い言葉だ
             (導入…話題提示・問題提起)


【二】(承)アートでも「おもしろい」がキーワードである
                   (具体的考察1)


【三】(転)「おもしろい」がアートに適した評価だ
 @「上手」という評価が苦手を生み出す(具体的考察2)
 A認知的特性が写実的な絵を難しくする
 B「上手」より「おもしろい」がアートの適した評価だ
【四】(結)写実的に描くのを否定するわけではない
                    (結論…課題)


left★板書(+発問)★    
〈授業の展開〉

【一】(起)「おもしろい」は万能で深い言葉だ
          (導入…話題提示・問題提起)
〇小学生の頃の日記は、いつも「おもしろい」という  言葉で終わっていた
  →先生の指摘がきっかけだったが
   当時の自分の感情を表すのに適していたから
    ↓          (改めて考えると)
「おもしろい」は、いい加減なようで、
 <実は万能で、深い言葉>

▼〈段落まとめ〉
小学生の頃の日記はいつも「おもしろい」という言葉 で終わっていたが、改めて考えると「おもしろい」は いい加減なようで、実は万能で深い言葉だ。

right★補足(+解説)★        

















left★板書(+発問)★    
【二】(承)アートでも「おもしろい」がキーワード
                (具体的考察1)
研究・アートの起源でも
 <「おもしろい」がキーワード>になる
  ・鑑賞者は「美しい」に着目するが
   表現者には「おもしろい」が重要なのでは
    ↓
〇チンパンジーも
 個々の「おもしろい」に従って絵を描くようだ
  ・ご褒美のリンゴは必要ない
  ・出力と入力の関係を探索するのがおもしろい
  ・人間同様に、チンパンジーにも
   それぞれ「画風」がある

〇人間も、チンパンジーと同様に、最初は
 描く行為自体をおもしろがる(…「なぐり書き」)

▼〈段落まとめ〉
研究・アートの起源も、「おもしろい」がキーワード になる。鑑賞者は「美しい」に着目するが、表現者に は「おもしろい」が重要であるようだ。チンパンジー も人間も、描く行為そのものが「おもしろい」から絵 を描くようだ。

right★補足(+解説)★        








☆チンパンジーは、描く行為そのものをおもしろがる筆を動かすことで、痕跡(点や線)が現われること
 (を見ておもしろがる)
・探索=(未知の事柄などを)探り調べること
☆自分好みの描き方、自分のつくった描き方のルール











left★板書(+発問)★    
【三】(転)「おもしろい」がアートの適した評価だ
                (具体的考察2)
@<「上手」という評価が苦手を生み出す>

  (最初は描く行為自体をおもしろがるが)
    ↓
〇人間は三歳頃、表彰を描くようになると
 個人的な動機づけに
     (なぐり書きしていて探索がおもしろい)
 社会的な動機づけが、加わる
     (他者に伝えられるのが嬉しい)
    ↓
一元的な「上手」という評価を受けるうちに
             その価値観を内面化して
 写実的に(上手に)描けないから絵が苦手だと思う  者が出てくる
    ↓ ・ダリの絵を上手だと言うのを聴いて
    ↓  びっくりすることがあるが…

▼〈段落まとめ〉
人間は最初は描く行為自体をおもしろがっていたが、 三歳頃に表彰を描くようになると、一元的な「上手」 という評価を受けるうちに、写実的に描けない自分は 絵が苦手だと思い込むようになったりする。

right★補足(+解説)★        
      (人間の発達に伴う絵の描き方の違い)
 発達段階 | 描き方   | 動機づけ 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
三歳未満  |なぐり書きを |個人的な動機づけ
      |する     |=探索する過程が
      |       | おもしろい
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
三歳頃〜  |表象を描く  |個人的な動機づけ
      |       |=イメージを紙の上
      |       | に生み出すことが
      |       | おもしろい
      |       |社会的な動機づけ
      |       |=他者に伝えられる
      |       | ことが嬉しい
・表象=形として表れたもの、表れた形、考えを形に     現わすこと、抽象的な物事を具体的な物事に     よって現すこと
☆著名な画家の絵の批評としては不適切である
 or難解な超現実主義の絵を理解するとは驚異的だ

・おもしろい=興味をそそられて、心がひかれること
・上手=物事に巧みなこと→一面的・一元的である



left★板書(+発問)★    
A<認知的特性が写実的な絵を難しくする>

<しかし>人間は
<認知的な特性上、写実的に描くのは難しい>
 =目に入る視覚情報を、概念的に認知するために、
  認知以前の知覚の段階のものをそのまま

  写実的な絵として描くことが難しい
 →頭の中に知識としてある
  表象スキーマ(→記号)を描くことになる
    ↓
〇筆者自身も、記号的な表現に逃げていた
    ↓
〇ある時、「おもしろく」誇張して描こうとしたこと
 があったが、怪訝に思いながらも
 結果的に、生き生きとした絵を描くことができた
 =枠を壊せたように思った
        ↓
      「!」なのだ

▼〈段落まとめ〉
しかし、人間は目に入る視覚情報を概念的に認知する 特性があるので、写実的に描くのは難しくて記号的な 表現となるのである。ある時「おもしろく」誇張して 描こうとしたところ、結果的には生き生きとした絵を 描くことができ、写実的な絵が評価されるのだという 枠を壊せたように感じたことがあった。

right★補足(+解説)★        


★人間は、世界にあるもの(視覚情報)を言葉によって
 思考・判断して、共通点や相違点によって他と区別  ・分類し、イメージ(概念)として認識しているので
 あって、それを言葉や絵で表現しているのである。
 従って、認知(認識)以前の知覚の段階とは異なるの  だから、それをそのまま写実的な絵として描くこと  は難しいのである。

☆頭の中に(知識として)ある表象スキーマ
≒頭の中で言葉によって考え、認知されて知っている  ものを表現すること
写実的な絵が評価されるのだと思い込んでいたが、  誇張して描いた絵を母に褒められた

☆心の中で驚くべき感動が起きること
     or劇的な変化が生じること









left★板書(+発問)★    
B<「上手」より「おもしろい」が…適した評価だ>

絵を評価する言葉も
 <「上手」より「おもしろい」がいい>

    ↑
 「おもしろい」という評価は、多様性があって、
 鑑賞者にも主体的に向き合うことを求める点で、
 「上手」よりも誠実(で、アートに適した評価だ)

▼〈段落まとめ〉
「おもしろい」というのは、多様性があり、鑑賞者も 主体的に向き合わなければならない点で誠実であり、 「上手」よりアートに適した評価だ。

right★補足(+解説)★        


☆多様な「おもしろい」があり、見る方も主体的に  向き合う努力が必要で、誠実な評価だから


left★板書(+発問)★    
【四】(結)写実的に描くのを否定するわけではない
                 (結論…補足)
<但し>
〇「上手」にというか
 写実的に描くことを、否定するわけではない
    ↓
〇写実的に描くことは
 「見る力」を磨く上では大切である
 =概念の枠組みをいったん外して
  世界をありのまま知覚的に捉える訓練になる
    ↓
  多くの画家が、一度写実的な表現を極めてから
  独創的な表現を見出していく

▼〈段落まとめ〉
但し、「おもしろい」はアートには適した評価だが、
「上手」に写実的に描くことも、見る力を磨く上では 大切である。

right★補足(+解説)★        



☆上手に=対象を非常に写実的に描いていること
     但し、多様性がなく一元的な捉え方である














left★板書(+発問)★    
〈要約400字=24×16〉
「おもしろい」は、いい加減なようで実は万能で深い
言葉だ。研究・アートの起源でも、「おもしろい」が キーワード になる。 チンパンジー も人間も、描く 行為そのものが「おもしろい」から絵を描くようだ。
人間は三歳頃から表彰を描くようになると、一元的な 「上手」という評価を受けるうちに写実的に描けない から絵が苦手だと思い込んだりする。しかし、人間は 視覚情報を概念的に認知する特性があるので、写実的 に描くのは難しく、記号的な表現となるのだ。ある時 筆者は「おもしろく」誇張して描こうとしたところ、 枠を壊せたのか、生き生きした絵を描くことができた ことがあった。「おもしろい」というのは、多様性が あり、鑑賞者も主体的に向き合わなければならない点 で誠実であり、「上手」よりアートに適した評価なの だ。但し、「上手」に写実的に描くことも、見る力を 磨く上では 大切である。

right★補足(+解説)★        










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