left★原文・現代語訳★
〈授業の展開〉
【一】<予測と結果が食い違う事例>
今日はその事をなさんと思へど、
あらぬ急ぎ先づ出で来て紛れ暮らし、
=今日はその事をしようと思うけれど、
意外な急用が先に出来て(それに)心を奪われて
一日を過ごし、
待つ人は障りありて、
頼めぬ人は来たり、
=待ち人は支障があって(来ないのに)、
(来訪を)期待させない人はやって来(たりし)、
頼みたる方の事は違ひて、
思ひ寄らぬ道ばかりは叶ひぬ。
=当てにしていた方面の事は(期待とは)食い違って
(思い通りにならないのに)、
(無理と諦めていた)思いも寄らない方面の事だけは
望みが現実になってしまう(事がある)。
煩はしかりつる事はことなくて、
易かるべき事はいと心苦し。
=面倒だと思っていた事は(容易で)何事もなくて、
容易であるはずの事は(上手く行かず)とても辛い
(思いをする事もある)。
▼(段落まとめ)
用事・人物・物事・心配事などは、予測と結果の食い
違う事が多い.
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right★補足・文法★
・あらぬ=意外な、予期せぬ、思いも寄らぬ
・急ぎ=急用
・出で来=(カ変)起こる、出来(上が)る
・紛る=区別できない、紛れる、心が奪われる
・障り=支障、差し障り、差し支え
・頼む=(下二段)当てにさせる、期待させる
(四段)当てにする、期待する信頼する
・違う=食い違う、はずれる
・思ひ寄る=考えつく、思い当たる
・道=方面
・叶ふ=思い通りになる、望みが現実になる
・煩はし=面倒だ、厄介だ、複雑だ
・事無し=平穏無事だ、容易だ
・やすし=容易だ、簡単だ、心安らかである
・心苦し=辛い、気がかりだ、気の毒だ
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