left★原文・現代語訳★  
「古文現代語訳ノート」(普通クラス)
   兼好法師『徒然草(第189段)
       /今日はそのことをなさんと思へど』


〈作品=『徒然草』〉
三大随筆の一つ
 ・清少納言『枕草子』(1001年頃→平安中期)
 ・鴨 長明『方丈記』(1210年頃→鎌倉初期)
 ・兼好法師『徒然草』(1330年頃→鎌倉末期)
鎌倉時代末期1330年頃成立
〇作者=兼好法師
〇内容
 ・処世・趣味・自然・有職故実・仏教など
  →人生経験に基づいた人間・社会に対する省察
  →『枕草子』からの影響
 ・隠者文学→(仏教的)無常観の思想
 ・240余段
〇表現→漢文訓読調・王朝的な流麗な和文

〈概要〉
世の中は予測通りに事が運ぶとは限らないので、
全ては定め難いと悟るべきである。(→要約・要旨)

right★補足・文法★        
(随筆)2019年4月(2021年7月改)



〈作者について補足〉
・伝記未詳
・歌人として活躍
 →「和歌四天王」の一人











☆(世の中は)予測通りに事が運ばないものだ
 →予測と食い違わない事もある(物事は定め難い)
 →全ては不定だと悟るべきだ

全体の構成 【一】(起)予測と結果が食い違う事例 【二】(承)予測通りに事が運ばない世の中
【三】(転)予測と食い違うとは限らない物事 【四】(結)不定という悟りだけが真実
left★原文・現代語訳★
〈授業の展開〉

【一】<予測と結果が食い違う事例>

今日はその事をなさんと思へど、
あらぬ急ぎ先づ出で来て紛れ暮らし、
=今日はその事をしようと思うけれど、
 意外な急用が先に出来て(それに)心を奪われて
 一日を過ごし、

待つ人は障りありて、
頼めぬ人は来たり、
=待ち人は支障があって(来ないのに)、
(来訪を)期待させない人はやって来(たりし)、

頼みたる方の事は違ひて、
思ひ寄らぬ道ばかりは叶ひぬ。
=当てにしていた方面の事は(期待とは)食い違って
(思い通りにならないのに)、
(無理と諦めていた)思いも寄らない方面の事だけは
 望みが現実になってしまう(事がある)。

煩はしかりつる事はことなくて、
易かるべき事はいと心苦し。
=面倒だと思っていた事は(容易で)何事もなくて、
 容易であるはずの事は(上手く行かず)とても辛い
 (思いをする事もある)。

▼(段落まとめ)
用事・人物・物事・心配事などは、予測と結果の食い 違う事が多い.

right★補足・文法★        




・あらぬ=意外な、予期せぬ、思いも寄らぬ
・急ぎ=急用
・出で来=(カ変)起こる、出来(上が)る
・紛る=区別できない、紛れる、心が奪われる


・障り=支障、差し障り、差し支え
・頼む=(下二段)当てにさせる、期待させる
    (四段)当てにする、期待する信頼する


・違う=食い違う、はずれる
・思ひ寄る=考えつく、思い当たる
・道=方面
・叶ふ=思い通りになる、望みが現実になる



・煩はし=面倒だ、厄介だ、複雑だ
・事無し=平穏無事だ、容易だ
・やすし=容易だ、簡単だ、心安らかである
・心苦し=辛い、気がかりだ、気の毒だ






left★原文・現代語訳★    
【二】<予測通りに事が運ばない世の中>

日々に<過ぎ行くさま、かねて思ひつるには似ず>
=(このように)毎日が過ぎて行く様は、
 予め思っていた事とは異なる(ものだ)。

一年の中もかくの如し。一生の間もまたしかなり
=一年の間もこれと同様である。一生の間もまたその  通りである。

▼(段落まとめ)
以上のように、日々・一年・一生が過ぎて行く様は、 予め思っていた事とは異なるものだ.

right★補足・文法★        


・かねて=前もって、予め、以前から



・かくの如し=このようだ(通りだ)、これと同じだ
・然(シカ)なり=そうである、その通りである
★過ぎ行くさま、かねて思ひつるには似ず





left★原文・現代語訳★
【三】<予測と食い違うとは限らない物事>

かねてのあらまし、皆違ひ行くかと思ふに、
おのづから、違はぬ事もあれば、
いよいよ、物は定め難し。
=以前からの(こうなると)予測(していた事)が、
 全て食い違って行くかと思うと(そうも限らず)、
 たまには(予測と)食い違わない事もあるので、
 ますます物事は定め難い(ものだ)。

▼(段落まとめ)
予測と結果は、必ずしも食い違うとは限らないので、
物事は定め難いものだ.

right★補足・文法★        


・かねて=以前から、前もって。かねがね
・あらまし=(こうなるという)予想・予測、概略
・おのづから=自然に、たまたま、偶然に









left★原文・現代語訳★    
【四】<不定という悟りだけが真実>

不定(フジョウ)と心得ぬるのみ、実(マコト)にて違はず。
=(物事は全て)不確かで定まらないもの(不定)だ
 と悟ってしまう事だけが、真実であって
 間違いがない(のである)。

▼(段落まとめ)
物事は全て定まらないもの(不定)だと悟る事だけが
真実なのである。

right★補足・文法★        


・不定=定まらない、不確かで当てにならないこと
・心得=(ア下二)悟る、理解する、承知する

★作品の根底には、仏教的無常観がある。「この世の
 全ては絶えず生滅変化し、永久不変のものはない」
 という思想で、栄達や住居といった物事に執着する
 のは虚しいことであり、仏道修行に励むことが大事
 であるという考えが背景にある。

left★原文・現代語訳★
〈60字要約〉    ←〈各段落まとめ〉
世の中は予測した通りに事が運ぶとは限らないので、
全ては定め難く、不定なものだと悟ることだけが真実
だと言える。






right★補足・文法★    


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