left★原文・現代語訳★  
「古文現代語訳ノート」(普通クラス)
   兼好法師「『徒然草(第51段)
       /亀山殿の御池に」


〈作品=『徒然草』〉
三大随筆の一つ
 ・清少納言『枕草子』(1001年頃→平安中期)
 ・鴨 長明『方丈記』(1210年頃→鎌倉初期)
 ・兼好法師『徒然草』(1330年頃→鎌倉末期)
鎌倉時代末期1330年頃成立
〇作者=兼好法師
〇内容
 ・処世・趣味・自然・有職故実・仏教など
  →人生経験に基づいた人間・社会に対する省察
  →『枕草子』からの影響
 ・隠者文学→(仏教的)無常観の思想
 ・240余段
〇表現→漢文訓読調・王朝的な流麗な和文

〈概要〉
水車造りに関する話で、素人と専門家の様子を対照的 に描いており、専門家を尊重する作者・兼好の姿勢が 窺える。            (→要約・要旨)

right★補足・文法★        
(随筆)2021年7月



〈作者について補足〉
・伝記未詳
・歌人として活躍
 →「和歌四天王」の一人
















全体の構成 【一】(起)亀山殿の水車造り 【二】(承)大井の土民の失敗
【三】(転)宇治の里人の見事な水車 【四】(結)専門家は尊いという作者の感想
left★原文・現代語訳★
〈授業の展開〉

【一】<亀山殿の水車造り>

亀山殿の御池に、大井川の水をまかせられむとて、
大井の土民に仰せて、水車を造らせられけり。
=(後嵯峨天皇が)亀山殿(という御殿の庭)のお池  に、大井川の水を引き入れなさろうとして、大井川  沿いの土地の住民にお命じになって、水車を造らせ  なさった。

▼(段落まとめ)
亀山殿のお池に大井川の水を引き入れるため、水車を 造らせることになった。

right★補足・文法★        




・亀山殿=右京区嵯峨にあった後嵯峨上皇・亀山上皇      の御所(離宮)。人の名前ではない
・まかす=(引す、下二段)池や田などに、水を引き      入れる
・られ(尊敬)む(意思)
・仰す=(「言ふ」の尊敬)仰る、命ずる
・せ(使役)られ(尊敬)けり(過去)




left★原文・現代語訳★    
【二】<大井の土民の失敗>

多くの銭を賜ひて、数日に営み出だして、掛けたりけ るに、おほかた廻(めぐ)らざりければ、とかく直し けれども、つひに廻(まは)らで、いたづらに立てり けり。
=多くの金銭をお与えになって、数日かけてこしらえ  あげて、(水車を川に)掛けたところ、全く廻らな  かったので、あれこれ直したけれど、最後まで廻る  ことはなくて、(水車は)無駄に立ってい(るだけ  だっ)た。

▼(段落まとめ)
大井川沿いの土地の住民に、金と時間をかけて水車を 造らせたが、失敗した。

right★補足・文法★        


・営み出す=こしらえ上げる
・おほかた…打消=(全部否定)全く…ない
・徒らなり=むなしい、無駄だ、無意味だ
・立て(已然形)り(存続)けり(過去)










left★原文・現代語訳★
【三】<宇治の里人の見事な水車>

さて、宇治の里人を召して、こしらへさせられければ 、やすらかに結ひて参らせたりけるが、思ふやうに廻 りて、水を汲み入るゝ事めでたかりけり。
=そこで、(水車で有名な)宇治の里の人をお呼びに  なって、(水車を)造らせなさったところ、(彼ら  は)やすやすと組み立てて差し上げてしまったが、  (その水車は)思うように廻って、(亀山殿のお池  に)水を汲み入れることが見事であった。

▼(段落まとめ)
水車で有名な宇治の里人を呼び、組み立てさせると、 水車は見事に廻って亀山殿のお池に水を汲み入れた。

right★補足・文法★        


・宇治=古来、水車の名所
・させ(使役)られ(尊敬)けれ(過去)
・結ふ=結ぶ、縛る。組み立てる、拵える










left★原文・現代語訳★    
【四】<専門家は尊いという作者の感想>

万(よろづ)に、その道を知れる者は、やんごとなき ものなり。
=何事においても、その道に精通している者は、尊い  ものである。

▼(段落まとめ)
何事も専門家は尊いものである。

right★補足・文法★        


・知れ(已然形)る(存続)
・やんごとなし=尊い、立派だ
☆『徒然草』では、作者の感想や主題が最初か最後の  一文に表現されることが多い




left★原文・現代語訳★
〈90字要約〉
素人の「大井の土民」は金と時間を費やしながら水車 造りに失敗するが、専門家の「宇治の里人」は労力も たいして使わず容易に水車を完成させた様子を対照的 に描いて、最後に専門家を尊重すべきだという作者の 感想を述べる。




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