left★原文・現代語訳★
【二】<まそほの薄を是非習得したい登蓮法師>
人の数多(あまた)ありける中にて、ある者、「ますほ
の薄(すすき)、まそほの薄など言ふ事あり。渡辺の
聖、この事を伝へ知りたり。」と語りけるを、
=(ある人の所に)人がたくさん(集まって世間話を
して)いた中で、ある者が、「(和歌を詠むのに)
ますほの薄(とか)まそほの薄などと言う事がある。
渡辺に住む高徳の僧が、この事を伝え聞いて知って
いる。」と語ったのを、
登蓮法師、その座に侍りけるが、聞きて、雨の降りけ
るに、「蓑・笠やある。貸し給へ。かの薄の事習ひに
、渡辺の聖のがり尋ね罷らん。」と言ひけるを、
=登蓮法師が、その集まりの中におりましたが、耳に
して、(その時は)雨が降っていたのに、「蓑と笠
はありますか。(あれば)お貸し下さい。あの薄の
事を習いに、(今から)渡辺に住む聖のもとに尋ね
に参りたいのです。」と(家の主に)言ったのを、
▼(段落まとめ)
ある集まりで、登蓮法師は渡辺の聖が「まそほの薄」
の事を知っていると聞き、直ぐに習いたいと思った。
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right★補足・文法★

・ますほの薄…=穂が長くて一尺ばかりあり、赤みを
帯びている薄
・渡辺の聖=(現在の大阪=摂津国西成郡で難波江の
渡り口にある)渡辺に住む高徳の僧
・登蓮法師=平安時代の歌人
・…の(助詞)がり(名詞)=…のもとへ、…の所へ
・尋ぬ=問う、さがし求める、さぐる
※雨の降る日、ある家に顔馴染みの者が集まって世間
話をしていた際、「ますほの薄というのは、どんな
だろう」という話になり、「渡辺という所にこれに
詳しい聖がいるそうだ」とある者が話し始めると、
それを聞いた歌人である登蓮法師は、疑問に思う事
があったのか、居ても立っても居られなくなったの
だろう
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