left★板書(+発問)★   
(先生の授業ノート……普通クラス)
   内田 樹「届く言葉」

〈作品〉
○出典 『街道の文体論』(2012年刊)(62歳)

〈筆者〉
〇昭和25(1950)〜
〇哲学者、(合気道)武道家
 哲学を身近な具体例を用いて分かり易く述べ、武道  論や映画論などの分野でも活躍する。
○主な著書 『寝ながら学べる構造主義』『下流志向』       『日本辺境論』『修行論』など

〈概要〉
〇他者論(?)
〇相手に心が理解して貰おうと必死になって話す言葉  は、「届く言葉」であると述べる。

right★補足(+解説)★   
(評論)2025年5月










全体の構成 【一】(起)プロジェクトの説明のうまさに驚嘆
【二】(承)専門家たちの理解と確信による説明能力
【三】(転)説得力のある外に向かう言葉
【四】(結)説得力のある届く言葉
left★板書(+発問)★   
〈授業の展開〉

【一】(起)プロジェクトの説明のうまさに驚嘆
                    (序論)
〇小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトに関する
 T君の<説明のうまさに驚嘆>した
    ・小惑星イトカワに行った「はやぶさ」の
     リチウム電池の制作に関わる研究者
    ・プロジェクトと経緯・結果

▼〈まとめ〉
小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトに関するT君の 説明のうまさに驚嘆した

right★補足(+解説)★   

※小惑星探査機「はやぶさ」
 =2003年に打ち上げられ、2005年に小惑星「イトカ   ワ」に到着。一時期通信不能になるなどの困難に   遭いながらも、2010年に地球に帰還。
  2014年に後継機「はやぶさ2」が打ち上げられ、   2019年に小惑星「リュウグウ」に到着。
    < 小惑星「イトカワ」 >
       ↑↓ 探査
    <小惑星探査機「はやぶさ」>
       ↑↓ 打ち上げ・帰還
    <  地球  >
・プロジェクト=事業計画

left★板書(+発問)★   
【二】(承)専門家たちの理解と確信による説明能力
                (考察1…説明)
<説明能力の高さ>
 <巨大プロジェクトのメンバー>ならではのもの
    ↓
@最先端の仕事は
 多くの他分野の専門家に<理解>される事を求める
 ・イノベイティブな領域の知的活動は
  本質的に協働的なものだから
 =多様な専門家たちがそれぞれの知識と技術を持ち   寄って支援し合っていく形でした、本当に創発的   なプロジェクトは前に進まない
 =特定の集団内だけで通じる専門用語では
  話が通じない
    ↓
 <だから>
 ・<説明がうまく>なってゆく
     (忍耐強く・適切な言葉で・分かり易く)

A国民的に必須の事業だという事を<確信>
 =世のため人のための事業であり
  単に日本一国の学術進歩のために止まらず
  人類のためになるという事を確信
    ↓
 <説得力のある言葉>となるのだ

▼〈まとめ〉
T君の説明能力の高さは巨大プロジェクトのメンバー ならではのものだ。最先端の仕事は協働的でなければ 前に進まず、多くの他分野の専門家に理解される事を 求めるものだから説明がうまくなり、国民的に必須の 事業であり人類のためになるという事を確信している から、説得力のある言葉となるのである。

right★補足(+解説)★        







・イノベイティブ=革新的な
☆イノベイティブな領域の知的活動
 =最先端の仕事=巨大プロジェクト
・協働的=皆が協力して一緒に働く
・創発的=新たに大きなものを創り上げていく






















left★板書(+発問)★   
【三】(転)説得力のある外に向かう言葉
                (考察2…説明)
「内向きの言葉」
    ↓
 <自分の利益のため>に話す言葉は排他的で
 <説得力がない>

    ←<自分の分配比率を増やす>ための言葉は
     「査定する者」を志向して排他的になる
    =自己利益を求めて語る人間の言葉は
     閉じられた集団内で資源を分配する
     権力を持った人間だけに向けられる
    =「パイの分配」について案分の権利を持っ      ている人間だけに用があり、あとの人には      用がない
    ↑↓(対比)
 <それとは逆に>
「外に向かう言葉」
    ↓
 評点を与える査定者がいない
    ←採点者の前に提出された答案ではなく
     できるだけ多くの人間に届けてたい
     メッセージだから
    ↓
 求めているのは
 <できるだけ多くの人間に受信され理解される>
 こと
    ↑
<情理を尽くして語る、懇請の言葉>だけが
 「外に向かう」ことができる

▼〈まとめ〉
自分の利益のために話す「内向きの言葉」は排他的で 説得力がない。それとは逆に、できるだけ多くの人間 に受信され理解されようと情理を尽くして語る懇請の 言葉は「外に向かう」ことができ、説得力を持つ。

right★補足(+解説)★   
※どうすれば、説得力のある言葉となるか





・査定=金額・等級などを調査した上で決定すること
・志向=意識がある対象に向かうこと
・パイの分配=パイとは円いお菓子で、ナイフで分割  するが、この動作を利益を分け合う意味、限られた  資源を争って取り合うことの比喩として用いる。
・案分(按分)=割合に応じて分けること
★自分の利益に関係する者だけに対する排他的な利益  の分配であり、他の多くの者には関係ない


☆自分の利益とは関係のない者たちに対する言葉

・評点=成績などを評価してつける点数





・生成的=見えていないものを見えるようにする


・情理を尽くす=気持ちをよく汲み取り、同時に道理         に適うようにする
・懇請=心を込めてひたすら頼む






left★板書(+発問)★   
【四】(結)説得力のある届く言葉
                 (結論・補足)
〇「届く言葉」と「届かない言葉」
 ・修辞的・論理的・政治的というレベルとは無関係
    ↓
 <どこが違うのか>
「届く言葉」には
 発信者の<「届かせたい」という切迫>がある

 =できるだけ<多くの人に>
  できるだけ<正確に>
  自分が言いたいことを<伝えたい>
  という<必死さがある>
    ↓
 言葉を駆動し
 思いがけない射程まで言葉を届かせる

▼〈まとめ〉
「届く言葉」と「届かない言葉」とがあるが、それは 修辞的・論理的・政治的というレベルと無関係なもの である。「届く言葉」には、発信者の「届かせたい」 という切迫、即ち、できるだけ多くの人にできるだけ 正確に自分が言いたいことを伝えたいという必死さが ある。

right★補足(+解説)★   





・駆動=動力を伝えて動かす










left★板書(+発問)★   
〈要約〉
小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトに関するT君 の説明のうまさに驚嘆した
その説明能力の高さは、巨大プロジェクトのメンバー ならではのものであり、多くの他分野の専門家に理解 される事を求めるものだから説明がうまくなり、人類 のためになるという事を確信しているから、説得力の ある言葉となるのである。
自分の利益のために話す排他的な「内向きの言葉」で なく、できるだけ多くの人間に受信され理解されよう と情理を尽くして語る懇請の「外に向かうっ言葉」で あるので、説得力を持つ。
修辞的・論理的・政治的というレベルと無関係なもの で、発信者の「届かせたい」という切迫、即ちできる だけ多くの人にできるだけ正確に自分が言いたいこと を伝えたいという必死さがある説得力のあるもので、 思いがけない射程まで「届く言葉」なのである。


right★補足(+解説)★   
〈補足…参考資料〉

『』(YouTube解説)
         ヘンデル「協奏曲ト短調」
         バッハ「平均律1−24ロ短調」
         温泉旅館「不死王閣」CM





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