left★板書(+補足)★
みちのくの <母のいのちを> 一目見ん
一目見んとぞ いそぐなりけれ
(ただにいそげる)
=みちのくにいる母が生きているうちに
一目でも顔を見たい
(臨終の時に間に合って)一目でいいから
顔を見たい、と(道を)急いだことだよ。
〈出典〉
大正2年(1913)(作者31歳)第一歌集『赤光』
収録、「死にたまふ母」四部連作59首の「其の一」
の中の一首。初出は同年「アララギ」四連56首。
〈主題〉(感動の中心・心情)
<危篤の母の残された命を見届けたいと急ぐ、必死の
思い>(切迫した心情)が強く表れた挽歌
〈鑑賞〉(補足・背景・感想)
母の死という万人に共通の経験が、痛切に歌い上げら
れている
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right★発問☆解説ノート★
・みちのく=「道の奥」、東北地方→山形県金瓶村
「万葉」以来多いが二句目は地名・植物名が一般的
・母のいのち=今際の…(大正2年5月)。一度中風
で倒れ、その後はかばかしくなかった
・…ん(意思)…ぞ(強意→結びは連体形○)
・「一目見ん…」という切迫した調子の繰り返しが
はやる思いをじかに伝えている
・ぞ…いそぐ(故郷に向かう途上で、駅や汽車の中)
なり(断定)けれ(詠嘆・已然形×)
・…けれ=文法的破格(「ける」の誤り)→「万葉」
の語法・用語・調べを現代に再生しようとした
〈参考資料…M〉(鑑賞)
母の亡くなった年齢と同じ59首の連作。其の一は報
せを聞いてから故郷上山に駆けつけるまで。「一目見
ん一目見ん」の繰り返しは作者の心中の呟きで、祈る
ような心境の表出であろう。作者にとって故郷そのも
のである母を「みちのくの母」と詠んでいる。
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