left★板書(+補足)★
「現代文授業ノート」(普通クラス)
   (近代短歌) 若山牧水

〈作者〉
・明治18(1885)〜昭和3(1928)
明治40年代
 <旅の歌>を情感的・感傷的に詠んだ
 <自然主義>の歌人
・歌集 『新声』『海の声』『別離』など

right★発問☆解説ノート★
(短歌)2015年2月〜16年6月
              (2020年1月改)


・〜43歳(旅と酒を愛した歌人)





left★板書(+補足)★
<白鳥は> かなしからずや| 空の
      海のあをにも  <染まずただよふ>
=白鳥は悲しくないのか。青い空が高く広がり、青い
 海が深々と続く中を、それらの色にも染まる事なく
 漂って(飛んで)いることだ。

〈出典〉
明治40年(1907)『新声』初出(作者22歳
『海の声』収録、明治43年『別離』にも収録

〈主題〉(感動の中心・心情)
広大な自然の中を漂う<白鳥の孤独への共感>
(を色彩の対照性によって浮かび上がらせた)

〈鑑賞〉(補足・背景・感想)
・牧水初期の代表歌
・歌と人生上の一区切りをつけるもので、
 ある女性との愛と別れが背景にある。


right★発問☆解説ノート★
・白鳥=カモメの白さを強調→安房の根本海岸に多い
 →心情が孤独(焦点)→「染まず」→青春の純粋性
・かなしからずや→挿入句の働き→二句切れ(感動)
 →や(疑問・強く反語)→読者に共感を求める
☆「青」「あを」の使い分けの効果
 ・各々の青さを強調(「海」=母なる柔らかさ?)
 ・「白鳥」がどちらにも染まらぬ事を強調
 →青い空と海・間を漂う白鳥のコントラストを強調


青春の純粋性・浪漫性と悲哀
 →他のものと溶け合えない孤独と悲しさ
 (純粋で濁る事のない哀感)


・歌の詞書
「女ありき、我と共に安房の渚に渡りぬ。我その傍ら  にありて夜も昼も断えず歌ふ」


left★板書(+補足)★
幾山河   越えさり行かば  <寂しさの>
     <はてなむ国ぞ>|  今日も旅ゆく
=幾つもの山や河を越えて(どこまでも)行ったなら
 ば、(そこには)寂しさが果てるような国がきっと
 あるだろうか。(そう思いながら)私は今日も旅を
 続けてゆく(ことだ)。

〈出典〉
明治40年(1907)8月『新声』初出(22歳
「旅人」と題した15首の中の作品。『海の声』収録
『別離』にも収録された代表作の1つ

〈主題〉(感動の中心・心情)
<寂しさの果てる国を求めての旅>を続ける思い


〈鑑賞〉(補足・背景・感想)
・明治40年夏、早稲田大学に在学中だった牧水は、
 故郷の宮崎への帰途、友人の勧めでその故郷・岡山
 に降り、一人で岡山から山々を越えて広島に入り、
 川伝いに帝釈峡などを見て安芸に出た事があって、
 それが歌作の直接の契機となる。
青春の彷徨・漂泊の旅というイメージがある歌で、
 人生は旅と見なす事が多い人々には、愛唱せずには
 おれないような浪漫的で感傷的な甘美さがある。


right★発問☆解説ノート★
「中国を巡りて」という注記→越えても越えても
 行き着くことが出来ない   というニュアンス
・果て(なくなる)な(強意「ぬ」未然)む(婉曲)
 国 /ぞ(強意)(+あらむ)→四句切れ(感動)
 →…にもかかわらず→…求めての旅
☆作者が追い求める憧憬・疑問→孤独な寂しい心
 =青春の純粋性・浪漫性と悲哀
 →純粋で他と溶け合えず濁る事のない孤独と哀感




・寂寥は、人が生きている限り心の中に住み続けて、
 取り去る事の出来ないものであり、それに向かって
 行く心を詠んだ歌

☆ドイツの詩人カールーブッセの詩「山のあなた」
 (上田敏の訳詩集『海潮音』)の影響→間接の契機

   山のあなたの空遠く
   「幸」住むと人のいふ
   噫(ああ)、われひとと尋(と)めゆきて
   涙さしぐみ(涙ぐみて)かへりきぬ。
   山のあなたの空遠く
   「幸」住むと人のいふ


left★板書(+補足)★
海鳥の    風にさからふ   一ならび
       一羽くづれて   みなくづれたり
=海鳥(の群れ)が風に逆らうように(風上に向かっ
 て整然と)一列に(なって飛んでいたが、先頭の)
 一羽が隊列から崩れると(連鎖反応のように次々と
 崩れて)全て隊列が崩れてしまったことだ。

〈出典〉
大正10年(1921)夏の作(作者36歳
「雑詠」と題した作品群の1つ、「静浦」という説明
がつく。牧水後期の特徴の歌

〈主題〉(心情)
些細なきっかけから、全て崩れていく海鳥の様を
             <冷静に観察して描写>

〈鑑賞〉(補足)
・牧水の歌の特徴だった<感傷性を排除>して、
 ものの崩壊していく様を、冷静に客観描写(表現)


right★発問☆解説ノート★
・海鳥=カモメ・ウミネコなど
☆数詞「一ならび」「一羽」の効果
 →見事な集団行動をなしていたものが、ほんの一点
  から総崩れしてゆく、様子をダイナミックに表現
・…たり(完了=…てしまった)
・句切れなし



・住んでいた沼津市南部にある漁業地区の静浦を詠む



・冷たく荒涼とした虚無感を表現



☆「白鳥は…」「幾山河…」という初期の歌は
 詩的な情感性・感傷性がたっぷりと溢れていたが…


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