left★原文・現代語訳★
「古文現代語訳ノート」(普通クラス)
   「竹取物語/なよ竹のかぐや姫」
             (かぐや姫の生い立ち)
〈作品=『竹取物語』〉
〇平安前期(中古)成立(未詳→9世紀?)
 →口承文学(語り継がれる)→漢文体→平仮名文体
「物語の祖」=現存最古の作り物語
 →伝奇物語(虚構と現実)
 →写実主義の小説以上に
  人間的真実を語る幻想的物語
 →平安以降の物語に大きな影響
〇書名→『源氏物語』に「竹取の翁の物語」とある
〇貴族社会を風刺
 →竹取の翁に竹の中から見出されたかぐや姫が、帝
  や五人の貴公子たちの求婚を全て拒絶し、最後に
  月の都に帰ってしまうという昔話

〈概要=「なよ竹のかぐや姫」〉
〇竹取の翁が、光る竹の中から見出したかぐや姫は、
 三か月後には美しく成人した。

right★補足・文法★
(物語)2017年12月(2021年9月改)


〈作者〉
・未詳→学者または僧侶(推定)
















全体の構成 【一】(起)かぐや姫の発見 【二】(承)豊かになっていく竹取の翁
【三】(転)三か月で美しく成人したかぐや姫 【四】(結)世の男みんなが魅せられたかぐや姫
left★原文・現代語訳★
〈授業の展開〉

【一】かぐや姫の発見
今は昔、竹取の翁といふものありけり。野山にまじり
て竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、
さかきの造となむいひける。
今(となって)は昔(のことだが)、竹取の翁という者
 がいた。野山に分け入って竹を取っては、(それを)
 多くのことに使った。名はさかきの造と言った。

その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。あやし
がりて寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れ
ば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。
=その竹の中に根元が光る竹が一本あった。不思議に
 思って近寄って見ると、筒の中が光っていた。それ
 を見ると、(背丈が)三寸ほどである人がたいそう
 可愛らしい様子で座っていた。

right★補足・文法★



・万(ヨロヅ)=数が多いこと・万事・全て
・さかきの造→「讃岐造麿」(別の原文)
・…と()なむ(係助詞)いひ()ける(過去、連体形)
 →係り結び→強意



・あやしがる=不思議に思う
・…たり=(存続の助動詞)…している
・一寸=3cm  →三寸=9cm
・…なる=(断定の助動詞)…である
・うつくし=可愛らしい(シク活用形容詞→ウ音便)
・居る=(ワ行上一段「ゐる」)座る・止まる


left★原文・現代語訳★
【二】豊かになっていく竹取の翁
翁言ふやう、「我朝ごと夕ごとに見る竹の中におはす
るにて、知りぬ。子となり給ふべき人なめり。」と
て、手にうち入れて家へ持ちて来ぬ。
=翁が言うことには、「私が毎朝毎夕に見る竹の中に
 いらっしゃるので分かった。我が子とおなりになる
 はずの人であるようだ」と(独り言を)言って、手の
 (平の)中に入れて家へ持って(帰って)来た。

妻の嫗にあづけて養はす。うつくしきこと限りなし。
いと幼ければ籠(コ)に入れて養ふ。
=妻の嫗に預けて養わせる。可愛らしいことはこの上
 もない。たいそう幼ないので籠に入れて育てる。

竹取の翁、竹を取るに、この子を見つけてのちに竹取
るに、節を隔ててよごとに黄金(コガネ)ある竹を見つく
ること重なりぬ。かくて翁やうやう豊かになりゆく。
=竹取の翁は竹を取って(物を作るような生活して)
 いたが、この子を見つけて後に竹を取っていると、
 節を隔ててその節の間ごとに黄金が入っている竹を
 見つけることが度重なった。こうして翁は次第に裕
 福になっていく。

right★補足・文法★

・…やう=(形式名詞)…こと(には)
・おはす=(サ変、「あり」の尊敬語)いらっしゃる
・…給ふ(尊敬、補動)べき(当然=…のはずだ)人()
 な(断定、撥音便「ん」無表記)めり(推定=ようだ)
・来(カ変の連用形「き」)ぬ(完了=…てしまった)



・「子」は竹の縁語「籠」に掛けた洒落




・よごとに=節と節との間ごとに
・やうやう=(副詞)だんだん・次第に







left★原文・現代語訳★
【三】三か月で美しく成人したかぐや姫
この児、養ふごとに、すくすくと大きになりまさる。
三月ばかりになるほどに、よきほどなる人になりぬれ
ば、髪上げなどさうして、髪上げさせ裳(モ)着す。
=この幼児は養ううちに、すくすくとますます大きく
 なっていく。三ヶ月位になる頃に(背丈が人並みで
 結婚するのに)相応しい位である人になったので、
 髪上げなど(成人式の儀式)をあれこれと手配して、
 髪を結い上げさせ、裳も着せる。

帳の内よりも出ださず、いつき養ふ。
=(部屋に垂れ下げた)垂れ絹の中からも出さず、大切
 に養育する。

この児のかたちのけうらなること世になく、屋の内は
暗き所なく光満ちたり。翁、心地あしき苦しき時も、
この子を見れば、苦しき事も止みぬ。腹立たしきこと
も慰みけり。
=この子の容貌の清らかで美しいことは世の中に(比
 べるものが)ない程で、家の中は暗い所がないほど
 光が満ちていた。翁は気分が悪く苦しい時も、この
 子を見ると苦しい事も治まってしまう。腹立たしい
 ことも(気持ちが)慰むのだった。

right★補足・文法★

・児=(乳飲み子)赤ん坊・幼児
・大きに=ナリ活用形容動詞「大きなり」連用形
・なりまさる=(次第に)ますます…になる
・よき人=背丈が人並の、結婚適齢期の女性
・髪上げ=子供の髪形を大人の髪形に結い上げること
     女子の成人の儀式の一つ
・左右(サウ)す=(サ変)とやかく手配する
        →儀式の日取りを占ったりする

・帳=垂れ絹。or帳台(垂れ絹を廻らした貴人の座)
・いつく=神に仕える・大切にする・かしずく


・けうらなり=清らかで美しい(「清ら」が変化)
・世になし=世の中に比べるものがない
・悪(ア)し=悪い







left★原文・現代語訳★
【四】世の男みんなが魅せられたかぐや姫
翁、竹取ること久しくなりぬ。勢い猛の者になりにけ
り。
=翁は(黄金の入った)竹を取ることが長く続いた。
 (それで)勢いの盛んな(有力)者になってしまった。

この子いと大きになりぬれば、名を三室戸斎部の秋田
を呼びてつけさす。 秋田、なよ竹のかぐや姫とつけ
つ。
=この子がたいそう大きくなったので、名前を三室戸
 斎部の秋田を呼んで付けさせる。秋田は、なよ竹の
 かぐや姫と名付けた。

このほど三日うちあげ遊ぶ。よろづの遊びをぞしける
。男はうけきらはず呼び集へて、いとかしこく遊ぶ。
=(命名した)この間の三日間、宴会を開いて楽しむ。
 (詩歌・管弦・歌舞などの)あらゆる遊びを楽しんだ
 のだった。男は誰も彼も受け入れ呼び集めて、たい
 そう盛大に(詩歌・管弦・歌舞などの)遊びをする。

世界の男、あてなるもいやしきも、いかでこのかぐや 姫を得てしかな見てしかなと、音に聞きめでて惑ふ。
=世の男たちは、身分が高い者も低い者も、何とかし
 てこのかぐや姫を妻にしたいものだ見てみたいもの
 だと、噂に聞き心惹かれて思い乱れていた。



right★補足・文法★

・勢ひ=権勢・勢力
・猛なり=(ナリ形動)勢いが盛んである・勇ましい
・…に(完了「ぬ」連用形)けり(過去)


・三室戸(地名)斎部(氏)の秋田(名)
・なよ竹=(弱竹)細くしなやかな竹、若竹
・つけ(カ行下二段「付く」連用形)つ(完了=…た)




・打ち上ぐ=酒宴を開いて歌い騒ぐ
      手や楽器を打ち鳴らして宴会をする
・遊ぶ=(詩歌・管弦・歌舞などをして)楽しむ
    楽しい時間を過ごす
・かしこく=盛大に、大いに、非常に


・貴なり=身分が高い・高貴だ・上品だ
・いかで=@(疑問)どうして…か
     A(反語)どうして…か(いや…ない)
     B(願望)何とかして
・…てしかな=(終助詞・願望)…(し)たいものだ
・愛づ=(めづ・下二段)心惹かれる・魅せられる・
    賞美する・称賛する・褒める

left★原文・現代語訳★
〈要約〉
竹取の翁が、光る竹の中からを見出したかぐや姫は、
三か月で美しく成人して、成人の儀式をしたところ、
世の男たち全ては惹かれて心を乱された。





right★補足・文法★   

写真は、ネット上のものを無断で借用しているものも あります。どうぞ宜しくお願い致します。

貴方は人目の訪問者です