left★原文・現代語訳★
千五百番歌合に 藤原俊成女
=千五百番歌合に、春の歌(という題で詠んだ歌)
風通ふ 寝覚めの袖の 花の香に
かをる枕の 春の夜の夢
(巻二 春歌下)
=(春の夜、夢を見ながら眠っていると、庭から)
風が吹き通って来て(桜の花の香りを運んできた)、
(ふと)寝覚めた(私の)袖が桜の花に香り、その
香りが漂う枕で(眠りながら、はかない)春の夜の
夢(の名残(余韻)に浸っていること)であるよ。
〈成立日時〉
〈主題〉(感動の中心・心情)
風が運んで来る桜の花の香りに包まれて眠りながら、
<はかない春の夜の夢の余韻に浸る思い>を詠む。
〈鑑賞〉(感想・補足)
・体言止め、頭韻「ア」段音・音韻「の」の繰り返し
→多くの体言を格助詞「の」で連結した構成の歌
・作者32歳の作
・後鳥羽院の主催で、当時の代表歌人30人が詠んだ
三千首を左右に分かちて、対戦形式で計千五百番と
した最大規模の歌合せ。判者は後鳥羽院や藤原定家
などで、『新古今和歌集』の選集資料とされた。
・女性の気怠い寝覚めに、桜の花の香と春の夜の夢を
組み合わせ、何とも妖しく夢幻的な雰囲気が漂う。
・『新古今集』を象徴するような幻想的で妖艶な歌と
される。
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right★補足・文法★
・千五百番歌合せ=後鳥羽院が歌人30人から召した
第三度百首を組み合わせ、歌合としたもの。
1203(建仁3)年頃に成立。
・風通ふ=風が吹き通って流れる
・花の香にかをる=「袖」と「枕」の両方にかかる
・春の夜の夢=はかないもののたとえ。
→『平家物語』冒頭にもある。

ヘンデル「協奏曲ト短調」
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