left★原文・現代語訳★
百首歌よみはべりけるに 藤原良経
=百首の歌を詠みました時に (題は「居所」で
詠んだ歌)
ふるさとは 浅茅が末に なり果てて
月に残れる 人の面影
(巻十七 雑歌中1681)
=昔の住んでいた家は、浅茅が生い茂る野にすっかり
荒れ果てて、
(今も昔と変わらない)月(を見上げてみると、幻
のように浮かんで、そこ)に残っているのは(昔、
一緒に見た懐かしい)人の面影だけだよ。
(今も見えるのは懐かしい人の面影だけだ)
〈成立日時〉
〈主題〉(感動の中心・心情)
浅茅が原と化した家で昔と変わらない月を眺め、今は
<懐かしい人の面影だけが浮かぶ>との思いを詠む。
〈鑑賞〉(感想・補足)
・(修辞法)体言止め、倒置法
・「人の面影」とは、昔馴染みの人や故人であろう。
武家の鎌倉幕府の台頭が背景にあるのだろうか。
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right★補足・文法★
・百首歌=百首で一組になるように構成を整えて歌を
詠んだもの。これは1191(建久2)年に
自邸で催した「十題百首」という歌の催し
・浅茅が末=(イネ科の多年生草木である短いチガヤ
の茂る)浅茅が原の野末(野のはずれ、野のはて)
屋敷が荒れ果てて浅茅が原の端に取り込まれた状態
・残れ(四段・已然)る(存続=…ている)
※この「百首歌」は、叔父の慈円や寂連らが参加して
いた。後に詞書を「古里の心を」とし、判じた藤原
俊成は、「月に残れる面影、まことにありがたく」
と絶賛したと言う。

ヘンデル「協奏曲ト短調」
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