left★原文・現代語訳★
入道前関白、右大臣にはべりける時、百種歌よま
せはべりける、ほととぎすの歌 藤原俊成
=入道である前の関白が右大臣でありました時、
百種の歌を詠ませました(折の歌で、題は)、
ほととぎすの歌
昔思ふ 草の庵の 夜の雨に
涙な添へそ 山ほととぎす
(巻三 夏歌201)
=(宮仕えを辞め、山里で侘び住まいをしていたら、
ある日、山の郭公の鳴くのが聞こえた。)
(華やかだった)昔を懐かしく思っている草の庵に
降る夜の雨(でしんみりなっている所)に、(悲しい
声で鳴いて、これ以上)涙を添えてくれるな、山の
ほととぎすよ(余計に侘しくなるから)。
〈成立日時〉
〈主題〉(感動の中心・心情)
雨が降る山里の草庵で山ほととぎすの鳴き声を聞き、
<華やかだった昔を懐かしむ思い>を詠む。
〈鑑賞〉(感想・補足)
・(修辞法)字余り、四句切れ、体言止め、倒置法
・2年前、病気のため官を辞して出家していて、
昔の華やかな宮中での事を思い、今の侘び住まいを
対比して詠む(作者64歳の作)。
・詫び住まいをする作者が、山ほととぎすを鄙にいる
鳥と見立てて、鳴くと昔が思われると、ほととぎす
に向かって呼びかけるように詠む。
・典拠とした白居易の詩は、左遷されていた四十六、
七歳、廬山の草庵に宿った夜の感懐を、長安の旧友
に言い贈ったものである。栄達して宮中で活躍する
友人と、左遷されて不遇な日々を送る自己とを対比
させている。
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right★補足・文法★
・入道前関白=藤原兼実(1149〜1207)九条家始祖
・百種歌=1178(治承2)年の「右大臣家百種」。
・山ほととぎす=夏には山から里に降りてくる習性が
ある渡り鳥で、山に残ったままのホトトギス。
→五月雨(梅雨)の頃の山里を暗示
・草の庵=草葺きの粗末な小屋
・草の庵の夜の雨=白居易『白氏文集』「蘭省の花の
時の錦帳の下、廬山の雨の夜の草庵の中」の一部。
訳は「君たちは都の尚書省という官庁で花盛りの時
を美しい帳の下で愉しく過ごし、私は廬山の雨降る
夜を粗末な庵の中で侘しく過ごしている」。
・な…そ=…するな、しないでくれ(禁止)

ヘンデル「協奏曲ト短調」
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