5月、新緑が鮮やかだ。山が見たくなり、信貴山朝護孫子寺に行った。聖徳太子や虎に縁があるという所で、これが2回目だ。参道は何軒か土産屋があり賑やかだ。つい漬物や菓子などを買ってしまった。参詣の後、予約しておいた宿に行き、昼食をとった。結構歩いたからか、ビールが美味い。温泉もなかなかである。
信貴山温泉は、奈良県の北西で、大阪府との境に聳える生駒山地の南端に位置する信貴山の朝護孫子寺近くにある温泉だ。宿が4軒ほどある。天然温泉は1軒だけであろうか。日帰り入浴は、飲食をすればOKである。 泉質は、単純泉23℃,pH7.6で、主成分は、炭酸水素ナトリウム・鉄分・メタケイ酸など。湯は、淡い黄緑濁色で、微香臭がする。神経痛・関節痛・慢性消化器病・疲労回復などに効能があるそうだ。
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宿は老若男女を問わず様々な人がいた。酒宴で顔が赤い人・定年でちょっと暇そうな人・若いカップルらしき人など……、行者スタイルの人も何人か見かけた。湯船では子供がはしゃいででいた。自然がいっぱいで、心身ともに癒された気がする。山間の川に赤い鉄橋がかかり、たまに列車が通る途中の風景も、懐かしい郷愁を覚えた。
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この辺りも歴史が古い所だ。東に7kmほど行けば、昔、聖徳太子が「飛鳥」との間を往復した「斑鳩」と称される地である。世界最古の木造建築である「法隆寺」がある所だ。すぐ西には藤ノ木古墳が、更に西には竜田川や龍田神社がある。
「ちはやぶる神世も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは」 在原業平が平安時代に詠んだ有名な歌で、『古今集』にあり『百人一首』にも選ばれている。 「あらしふくみ室の山のもみぢばは 竜田の川の錦なりけり」 これも平安時代後期に能因法師が内裏歌合せで詠んだ歌で、『後拾遺集に』収められ同じく『百人一首』にも選ばれている。京都にありながら、奈良の竜田川の嵐に舞い散る美しい紅葉の情景を、目に浮かべさせる表現だ。技巧的で清新さに欠けるともされ、評価が分かれる歌でもある。
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「柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺」 これは時代が下って近代の作品である。明治28年10月26日、正岡子規が大和路を旅し、法隆寺門前の茶店で休んでいる時に、秋ののどかさを詠んだ俳句だ。このように、色々な詩歌にも詠まれたりしている所である。
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斑鳩の西に位置する信貴山にも、1400年前の聖徳太子についての伝承が残っている。仏敵である物部守屋討伐の戦勝祈願した際、「寅の年・寅の日・寅の刻」に四天王の一つの毘沙門天が現れ、蘇我馬子と共に戦ったところ、その加護によって勝利を収めたことから、594年に寺院を創建し、「信ずべき貴ぶべき山」と名付けたというのだ。寺に「虎」の張り子が幾つも置かれているのは、それに由来するそうだ。
その後、醍醐天皇が902年「朝廟安穏・守護国土・子孫長久」を祈願したことから、「朝護孫子寺」の勅号を賜ったという。
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信貴山温泉へのドライブ
▼ 近畿道-松原JCT-西名阪道-香芝IC-R168を北-
▼ JR王寺駅-大和川の北-県道を西(信貴山料金所方面)で
香芝ICより所要20分(高速料金片道\900)(大阪より所要1時間)
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信貴山「朝護孫子寺」の聖徳太子像
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戦勝祈願の故事、毘沙門天を本尊とし、虎を守り神とすることから、阪神タイガースの選手が必勝祈願に訪れるそうだ。今年はもしかすれば阪神タイガースが優勝するかもしれない。 有名な「信貴山縁起絵巻」も描かれたりした朝護孫子寺……。他に、万葉時代の国道である「竹内街道」・「暗峠」の上を通り見晴らしも良い信貴山生駒スカイラインなどもある。3回目に行く時は、4月初めにしよう。桜が満開の頃に。
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▼ 阪奈道-信貴山生駒スカイライン(往復\1,900)-信貴山料金所すぐでは所要1時間。中央環状線-R308-外環状線-高安-R170-R25-国分-龍田神社-県道を信貴山生駒スカイライン方面10分で90分。鉄道ではJR天王寺駅-関西線18分-王寺駅-タクシー10分。
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