left★原文・現代語訳★
【二】(承)酒は先に蛇を描いた者の物
(展開@)
ヒテ ハク
舎 人 相 謂 曰、
(舍人相謂(アイイ)ひて曰(イ)はく、)
=使用人たちは相談して言った、
ニテ マバ ヲ ラ
「 数 人 飲 之 不 足、
レ レ
(数人にて之を飲まば足らず、)
=「数人でこれを飲むなら足りない(が)、
ニテ マバ ヲ リ リ
一 人 飲 之 有 余。
レ レ
(一人にて之を飲まば余り有り。)
=一人でこれを飲むなら余るほどある。
フ キテ ニ リ ヲ
請 画 地 為 蛇、
レ レ
(請ふ地に画(ウェガ)きて蛇を為(ツク)り、)
=(ひとつ)地面に蛇の絵を描いて、
ヅ ル マント ヲ
先 成 者 飲 酒。」
レ
(先づ成る者酒を飲まん。」と。
=真っ先に出来上がった者が酒を飲むことにしよう
ではないか。」と。
ノ ヅ ル
一 人 蛇 先 成。
(一人の蛇先づ成る。)
=(やがて)一人の者の描いた蛇が最初に出来上が
った。
キテ ヲ ニ マント ヲ
引 酒 且 飲 之。
レ レ レ
(酒を引きて且に之を飲まんとす。)
=(その者は)酒を引き寄せて今にもそれを飲もう
とした。
チ ニ チ ヲ
乃 左 手 持 卮、
レ
(乃ち左手に卮(シ)を持ち、)
=そこで左手で大きな杯を持ち、
ニ キテ ヲ ハク
右 手 画 蛇 曰、
レ
(右手に蛇を画きて曰く、)
=右手で蛇に描き加えながら言った、
ク ルト ガ ヲ
「 吾 能 為 之 足。」
二 一
(吾能(ヨ)く之が足を為(つく)る。」と。)
=私は蛇の足を描くことも出来る」と。
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right★補足・文法★
・相=互いに(→相談=互いに話をする)
・曰は(「曰ふ」未然)く(接尾語=…ことには)
→言うこと(には)・(次のように)言った
・之→大きな杯についだ酒
・請ふ=(ひとつ)…しようではないか
…してほしい・どうか…をお許し下さい
・地に画きて蛇を為る=地面に絵を描いて蛇を作る
→地面に蛇の絵を描く
・成る=出来上がる・完成させる
・且=「まさニ…セントす」と読む再読文字
→「今にも…しようとする」の意
・乃=(すなはチ)そこで、なんと、やっと
(一つの事を終え、間を置いて次へ及ぶ)
(なんぢ)あなた、お前
☆蛇に(元々ある筈がない)足を描き加える
・能(よ)く=…できる(「あたフ」とも読む)
・為(つく)る=ここでは「描き加える」ことになる
(「なル」「なス」「す」「ためニ」とも読む)
☆せっかく酒を独り占め出来る権利を得たのに、
調子に乗って<余計な事をして損をする>事になる
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