left★板書(+補足)★
「現代文授業ノート」(普通クラス)
中島 敦 「山月記」
〈出典・作品〉 (コタン)
○昭和17年(1942)、『古譚』の名で
「山月記」「文字禍」の二作発表
○唐代の伝奇小説「人虎伝」を典拠
↓ (変身譚…李景亮 撰)
<中国の古典に取材>し、虚構の世界を構築
(実在の世界の枠組みを借りて
登場人物を自己の精神の分身として
↓ 再創造し、自我に迫る
(他の作品)「弟子」「李陵」「名人伝」
○<人間存在の不条理(運命)>
<近代人の自我意識(の問題)>
→主題として追求
○題名の由来
詩の中の一節に
「此夕渓<山>対明<月>」とある
↓
(李徴の)人間としての意識を象徴
○原作との比較
・「人虎伝」
未亡人との逢引を妨げられた腹いせ(原因)で
その一族を焼き殺したという
非道な所業の報いで変身 (→因果応報)
・「山月記」
臆病な自尊心と尊大な羞恥心という性情が原因
だと書かれ、より深みのある内容
〈作者〉1909(明治42)〜1942(昭和17)年
〇漢学者の一族
知的で格調高い漢文訓読体で、
自己の人間観を語る
〇幼少期(家庭の不幸)
母の離縁、二人の継母の死別
〇宿痾(持病)の喘息
↓
喘息の発作で死去(33歳)
◎<第二次大戦の統制下>で
(文学不在・荒廃した暗い時代)
<文学の純粋性>を守り抜いて、夭折
文学史上に、(流星の如く)
特異な一筋の光茫を放ち、消えて行った作家
(尾を引く光の筋)
〈概要〉
〇臆病な自尊心と尊大な羞恥心という
猛獣を飼い太らせた結果、
虎に身を堕としてしまった詩人の悲劇 (→主題)
〇近代人の自我意識の悲劇でもある
|
|
right★発問☆解説ノート★
(小説)2014年6月(2020年8月改)
・太平洋戦争中…文壇デビュー作(33歳)
・清朝の説話集に収められる(←唐代の小説だが)
・古譚(昔話・説話・物語)に材を取ったものが多い
↓
芥川龍之介「羅生門」と比肩
→「今昔物語」「宇治拾遺物語」に取材
・遺作として没後に発表
・不条理=道理にあわない→幾ら考えても分からない
・絶望的な自意識
→作品の底には、知識人の孤独と憂愁が漂う
・怪異譚→人間が虎になるという有り得ない出来事を
語る点では同じだが、驚くべき事実が現実にあった
のだという一点に興味が置かれる
・近代小説→怪異を描くにしても、人間はこうである
という<真実>を語るための手段として用いる
※虚構=作者が人間についての真実を語ろうとして、
現実の外に仮の別の世界を考え作り上げる事
・〜33歳
〇漢籍の素養が深い
・漢語を巧みに用いた文体
・優れた知性→高く評価
〈年譜〉
昭和8年(24歳)東大卒業。
昭和16年(32歳)まで横浜高女の教師。
作品の大部分はこの間に書かれたが、世に知られず。
翌17年「山月記」発表、死去。 作家として
ほとんど知られないまま、不遇な短い生涯を終える
〇時流に流されぬ芸術性→改めて再認識
↓↑
多くの文学者が、時代・権力に迎合して
戦争を賛美する作品を書く
☆詩家としての名を死後百年に残そうとした男が、
文名が揚がらないことへの絶望から、
ついに発狂して虎と化した苦悩を告白し、
人間としての尊厳を回復する物語
|
|