孔子「論語/政治」  
left★原文・現代語訳★   
「古典現代語訳ノート」(普通クラス)
   孔子「論語/政治」

〈出典=『論語』〉
・中国の思想書、10巻20編(512章)
・内容 孔子の思想を伝える最も基本的な書。
 →孔子や門人たちの言行などを、
  孔子の死後に門人たちがまとめたもの。
  512の短文(章)が20編で構成されており、   編の名称は文章の最初の2文字をとっている。

〈作者→孔子(の門人)〉
・紀元前552〜前479年(春秋時代
・名は丘、字は仲尼。春秋時代、魯(山東省曲阜市を  都とした国)の生まれ。
・「」を中心とする思想により、儒家の祖とされる

〈概要〉
〇学問をする楽しみとその心構えについて
 述べている。



right★補足・文法★   
(思想)2022年10月

<時代背景>
・殷(前1767〜前1122年)
    ↓
・周(前1122〜前770年)
    ↓
・春秋時代(前770〜前403年…春秋五覇)
 戦国時代(前403〜前221年…戦国七雄)
    ↓    (秦の始皇帝による統一)
・秦(前221〜前206年)
     →china(英語)→支那(日本語)
     →東シナ海・南シナ海
・前漢〜後漢(前206〜220年)……

                    
問題 【一】 【二】 【三】 【四】
【五】 【六】 【七】 【八】
left★原文・現代語訳★   
〈授業の展開〉

季康子問政於孔子。
孔子対曰、「政者正也。子帥以正、熟敢不正。」
              (顔淵第十二−17)
(季康子政(まつりごと)を孔子に問ふ。
 孔子対(こた)へて曰はく、「政(せい)なる者は  正(せい)なり。子帥(ひき)ゐるに正を以ってせ  ば、熟(たれ)か敢へて正しからざらん。」と。)
=(魯の大夫の)季康子が政治について孔子に尋ねた。
 孔子が答えて言った、「政とは正(に通じるもの)  である。(上に立つ)貴方が率先して正しい道を行く  ならば、(民衆の)誰が敢えて正しくない道を行く  者がいるだろうか、いや誰もが正しい道を行くはず  である。」と。

〈鑑賞〉(感想・補足…まとめ)
政治の根本とは、為政者が先ず正しい道を行くことに ある。

right★補足・文法★   
・子=先生→孔子を指す。男子に対する敬称。
・季康子=魯の大夫(中国古代の官位名で、広く高位      高官の者)。魯の3人の家老の一人。
・政=世の中を治めること。民を正しく導くこと。
・子=貴方(敬語)。
・帥(=率)=率先して物事をして、人々を導く。
・敢不…=どうして…しないだろうか、いやきっと…      する(反語)。
・顔淵=『論語』の第12番目の編→第17章。


            ヘンデル「協奏曲ト短調」
left★原文・現代語訳★   
子貢問政。
子曰、「足食、足兵、民信之矣。」
(子貢政(まつりごと)を問ふ。
 子曰はく、「食を足らし、兵を足らし、民は之を信  にす。」と。)
=子貢が政治について(孔子先生に)質問した。
 先生が言った、「食糧を十分にし、軍備を十分にし  (て)、民衆に政治への信義の心を持たせるように  することだ。」と。

子貢曰、「必不得已而去、於斯三者何先。」
曰、「去兵。」
(子貢曰はく、「必ず已(や)むを得ずして去らば、  斯(こ)の三者に於いて何をか先にせん。」と。
 曰はく、「兵を去らん。」と。)
=子貢が言った、「どうしても止むを得ずに捨て去る  (断念する)とするならば、この三つの中で何を先に  捨て去るべきでしょうか。」と。
 (先生が)言った、「軍備を捨て去ろう。」と。

子貢曰、必不得已而去、於斯二者何先。」
曰、「去食。自古皆有死。民無信不立。」
               (顔淵第十二−7)
(子貢曰はく、「必ず已(や)むを得ずして去らば、  斯(こ)の二者に於いて何をか先にせん。」
 曰はく、「食を去らん。 古(いにしえ)より皆死
 有り。民信無くんば立たず。」と。)
=子貢が言った、「どうしても止むを得ずに捨て去る  (断念する)とするならば、この二つの中で何を先に  捨て去るべきでしょうか。」と。
 (先生が)言った、「食糧を捨て去ろう。(食糧が  なかったなら人は死ぬが、食糧があったとしても)  昔から人は皆(誰でも遅かれ早かれ)死ぬものだ。  (しかし)民衆が政治への信義の心を待たなかった  ならば、(誰も言うことを聴かず)政治(国家)は  成り立たないものだ。」と。

〈鑑賞〉(感想・補足…まとめ)
政治で大事なものは、食糧・軍備・信義の心の三つで あるが、最も重要なのは民衆が信義の心を持てる政治 を行うことである。

right★補足・文法★   

・足=十分にする、充足させる。
・兵=軍備、兵器
・信=信義を重んじる(信頼する)ようにさせる。
★民は之を信にす→民をして之を信ぜしむ
 =民衆に政治(為政者)を信頼(するように)させる
・矣=(置き字)断定



・必=どうしても
・去=捨て去る、取り除く、断念する








・不立=政治は成り立たない。
・無くんば←(強調)←無くば←「無く」(未)+「は」
 =仮定(…無いならば、なかったら)
★民衆の信頼がなかったならば、
 政治(国家・為政者)は成り立たないのである。
・顔淵=『論語』の第12番目の編→第7章。









left★原文・現代語訳★   
子曰、「道之以政、斉之以刑、民免而無恥。
道之以徳、斉之以礼、有恥且格。」
                (為政第二−3)
(子曰はく、「之を道(みちび)くに政(まつりごと)を  以ってし、之を斉(ととの)ふるに刑を以ってすれ  ば、民免れて恥無し。
 之を道くに徳を以ってし、之を斉ふるに礼を以って  すれば、恥有りて且つ格(いた)る。」と。)
=(孔子)先生が言った。「民衆を法律や規制によって  導き、(民衆を)刑罰によって統制すれば、民衆は  (法の目や刑罰から)抜け道を考えて免れようとし  (悪を犯しても)恥じることがなくなってしまう。

 (これに対して)民衆を道徳によって導き、(民衆を)  礼儀によって統制すれば(足並みをそろえるように  すれば)、(悪事を犯すのを)恥じるようになり、  その上正しい道(善)に至るものだ。」と。

〈鑑賞〉(感想・補足…まとめ)
民衆を導くには、規制と刑罰によるのではなく、道徳 と礼儀による政治を行うべきである。

right★補足・文法★   
・政=法律や規則、規制。
・斉=そろえる、統制する。
・免れる=抜け道を考える。
・徳=人間としての正しい道。
・礼(禮)=「仁」の心を形に表したもの。
・格(いた)る=善or正しい道に進む→格し(正しい)
・為政=『論語』の第2番目の編→第3章。









left★原文・現代語訳★   
子曰、「為政以徳。譬如北辰居其所而衆星共之。」
                (為政第二−1)
(子曰はく、「政を為すは徳を以ってす。
 譬ふれば北辰の其の所に居りて衆星之と共にするが  如し。」と。)
=(孔子)先生が言った。「政治は道徳に基づいてす  べきである。
 譬えれば、北極星が不動の位置にいて 多くの星が  (これを中心として運航して)共にあるようなもの  である。」と。

〈鑑賞〉(感想・補足…まとめ)
道徳によって政治を行えば、民衆は自然と心を寄せて 付き従ってくるものだ。

right★補足・文法★   
・北辰=(天の中心として動かない存在の)北極星。     ここでは「為政者」の譬え
・衆星=多くの星。ここでは「民衆」の譬え
  ・為政=『論語』の第2番目の為政編→第1章。


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