奥蓼科温泉郷 (長野県)   (諏訪IC→R152)

八ヶ岳

 夏休みのある一日、信州へ日帰りドライブに出かけた。先月行った八ヶ岳北西麓の蓼科あたりである。10年以上前にもビーナスラインを通って白樺湖に行ったことがあり、景色が懐かしい。中央アルプスを見ながら、5時間位で着くことができた。

 奥蓼科温泉郷は、山梨との県境に近い長野県東部の八ヶ岳中信高原国定公園にあり、北八ヶ岳から流れる渋川の渓谷に沿って点在する、明治・澁川・澁・澁の湯の温泉の総称で、これに蓼科中央高原の横谷温泉も含めてもよいだろうか。蓼科温泉郷は北西にある。澁の湯だけが2軒で、他はすべて1軒宿である。標高1,700-1,800mの高地にあり、5月頃でも氷点下になることがあるという。

 茅野市街から奥蓼科へは、その名も「湯みち街道」と称される県道で向かうことが多いが、このへアピンカーブが続く山道の脇には三十三体の石仏がひっそりと建てられている。これは湯治に訪れた人々が湯の効能に感謝し、里からここまでの山道の安全を祈る道しるべとして寄進したものだという。この観音様のお加護であるのか、「湯みち街道」では大きな事故はほとんどないという。いずれも自然豊かで自家源泉を有している。


諏訪湖ハイウェイ温泉(\525)

 泉質は、単純酸性-硫黄泉・単純酸性-ナトリウム-硫酸塩泉・ナトリウム-硫酸塩-炭酸水素塩-塩化物泉・(単純)炭酸鉄泉(含鉄炭酸泉)など、19-41℃位、低温泉が多い。湯の色は、渋の湯・渋は白濁色、明治・渋川・横谷は褐濁色か無色などで、前者は硫黄臭、後者は金気臭がする。リウマチ・胆石・糖尿・胃腸・皮膚病・婦人病などに効能がある。いずれも日帰り入浴ができるが、観光協会加盟の食事処などにある割引券で、入浴料\1,500でも\600になるそうだ。

 いずれも個性的な秘湯ばかりだが、京阪神から日帰りでは遠く、3湯ほどを楽しんだだけで、急いで帰ることにした。しかし、飯田・中津川・恵那あたりでそれぞれ5〜10km位渋滞していて、帰宅は11時過ぎとなってしまった。

奥蓼科温泉郷へのドライブ
▼ 吹田JCT-名神高速2:15-小牧JCT-中央道2:15-諏訪IC-
▼ R152(ビーナスライン)-R299(メルヘン街道)-湯みち街道-
▼ 明治-渋(辰野)-渋の湯または-渋川(保科)-横谷で
諏訪ICより30-50分、京阪神より所要5時間。
▼東京からでは、高井戸IC-中央道2:30-諏訪IC、または練馬IC-関越・上信越道2:30-佐久ICより-R141-R152-白樺湖-ビーナスライン-ピラタス蓼科ロープウェイ-蓼科湖-R299で1時間強。鉄道では、新大阪-新幹線1:00-名古屋-中央線2:30-茅野駅-タクシー30分(特別割引などあり)、東京からでは新宿-中央線2:15-茅野駅。
温泉施設 澁の湯ホテル 澁御殿湯 澁・辰野館 渋川温泉保科館 明治温泉旅館
横谷温泉旅館 蓼科パークホテル 乙女滝温泉
澁の湯温泉 澁の湯ホテル
【所在】 茅野市奥蓼科温泉
【電話】 0266-67-2732
【時間】 9:00-16:00。冬休業。
【料金】 【入浴】\800。【宿泊】\7,000-。
【泉質】 単純酸性硫黄泉(硫化水素型)27℃,pH2.7。湯量豊富・掛け流し。白濁色・酸味・硫黄臭・白い湯の花。杖つく湯治客が2日で歩けるようになり、「杖忘れの湯」と呼ばれる。
【施設】 八ヶ岳西麓・渋川最上流に2軒ある旅館の、奥に位置する山小屋風の宿(17室)。硫黄臭が宿の前でもする。天狗岳の登山客が多いが、いつも人気がしない。鄙びた建物で、廊下を歩くとギシギシ音がする。泉質は良いが、外観は綺麗ではなく女性好みではないだろう。小浴室に簡素なコンクリート浴槽2(加熱湯・源泉湯)がある。露天なし。食事は、山菜・川魚・鍋料理など。P17台。駅よりバスあり。
【評価】 ★☆☆☆☆奥蓼科では最もマイナーな山の宿である。
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(天下の霊湯)澁の湯温泉 澁御殿湯
【所在】 茅野市奥蓼科温泉
【電話】 0266-67-2733
【時間】 10:00-15:00。
【料金】 【入浴】\800。【宿泊】\8,400-。
【泉質】 単純酸性硫黄泉26-31℃,pH2.7。「信玄の湯」と称され、湯口析出・白濁色(湯の花が沈殿)・レモン風酸味・硫黄臭。
【施設】 標高1,880mの奥蓼科最深部にある、旅館風の3階建て国民宿舎(35室)。「渋の湯」の隣で、「渋・辰野館」の2km上流にあり、八ヶ岳・天狗岳の登山口となっている。主の趣味も登山のようだ。上がり湯(温湯)・源泉の上に造られた足元湧出の長寿湯(底から気泡と源泉が自噴)31℃・御殿湯(源泉)26℃と、温度が違う総檜造り四角浴槽が3つあり、冷温交代浴が楽しめる。露天なし。但し日帰り入浴客は、別のガラス張り木造浴室にある小さな長方形浴槽しか入れない。食事は、山菜・鯉の洗い・ボリュームある肉鍋・川魚塩焼き・鱒・馬刺しなど。P15台位。
【評価】 ★☆☆☆☆登山者向けで一般受けしない。泉質は良し。
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澁温泉 (信玄の薬湯) 澁・辰野館

【所在】 茅野市奥蓼科温泉
【電話】 0266-67-2128
【時間】 11:00-16:00。
【料金】 【入浴】\1,500。【宿泊】\15,000-。
【泉質】 単純酸性-ナトリウム-硫酸塩泉21℃,pH2.9。日本神話では大国主の神と一緒に国作りした少名毘古那神が発見したという。薬効が非常に強く、戦国時代には武田信玄が戦で傷ついた重臣や軍馬を湯治させたと言われ、「信玄の薬湯」と称される。主成分は、Na 58・K 16・Ca 13・Cl 95・SO4 156・HSO4 6・H2SIO2 72・CO2 686 mg/kg。濃厚源泉(冷泉)常時掛け流し・飲泉可(1日コップ1杯)で、白濁色・硫黄臭・酸っぱい炭酸味・細かく白い湯の花。疲れて眠くなるので、長湯15分以上は禁物。
【施設】 樹海のような広大な白樺林の中に、赤い屋根の建物がポツンと建っているような木造4階建の宿(30室)。創業100年。吹き抜けのロビーは、洒落た明治大正のロッジ風で、鹿や鳥獣の剥製が多数陳列されている。ロンドンタクシーのビックベンのような車が2・3台、旅館の前に止まっている写真も館内に掲げられている。大正の頃は皇族や華族も訪れる由緒ある宿であったのだろうか。強清水の湯(タイル内湯・天然の湧き水を加熱)・森の湯(四角い木造の冷源泉の露天と加熱の半露天)・信玄の薬湯(ガラス張りの四角い板張り内湯の湯治の薬湯で、加熱浴槽・打たせ湯のある冷源泉浴槽・飲泉用の冷源泉浴槽)と、浴室は3つがある。加熱湯で体を十分温めてから、冷源泉に交互に入浴すれば、新陳代謝を高める。浴槽は90cmと深く、3・4人も入ればいっぱいの小さなものばかりだが、木の香りがするようで、大規模ホテルとは違う良さがある。眼前に白樺林が広がる開放的な露天風呂は、蓼科山も望め、森林浴も楽しめる。食事は山女魚・岩魚・鴨・山菜・茸料理。P30台。周辺には、20万坪の敷地内にトレッキングコースが4つある。
【評価】 ★★★★☆(2009.08)奥蓼科では最もメジャーだが、昔からの落ち着いた風情が感じられる。
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乙女滝
明治温泉旅館

【所在】 茅野市奥蓼科温泉
【電話】 0266-67-2660
【時間】 11:00-17:00。
【料金】 【入浴】\800(要予約)。【宿泊】\11,000-。
【泉質】 含鉄炭酸泉25℃。自然湧出(140g/分)。茶褐色・無臭で、加熱泉と冷源泉を交互に入浴するのが効果的。タオルが鉄のオレンジ色が付くのも風情がある。
【施設】 標高1,500mの渋川渓谷沿いにある、明治21年営業の古い湯治湯の一軒宿(20室)。古く縄文からの湯治湯で、「明らかに治る温かき泉」というのが名の由来。赤い屋根と白壁が印象的な建物が、美しさに写真だけを撮りに訪れる人もいる「おしどり隠しの滝」の傍らに、深い緑に囲まれて静かに佇んでいる。渓谷のすぐ上にあり外の景色が絵のように美しく見える、ガラス張り石造り内湯(無色)・打たせ湯(冷泉)・開放的な半露天石造り風呂(茶褐色・抜群の眺望)がある。食事は、岩魚塩焼き・山菜(タラの芽・コシアブラ・コゴミ・ワラビ・フキ)・凍み大根(アツアツおやき・煮物)・信州蒸し・揚げ豆腐・自然食材を利用した会席など。
【評価】 ★★★★☆(2009.07)素朴で懐かしく静かないで湯が、今もなおあるのが嬉しい。
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渋川温泉 保科館
【所在】 茅野市奥蓼科温泉渋川峡
【電話】 0266-67-2319
【時間】 9:00-21:00。無休。
【料金】 【入浴】\800。【宿泊】\12,750-。
【泉質】 ナトリウム-硫酸塩-炭酸水素塩-塩化物泉41℃。湧出200g/分・成分総計1,291mg・勢いある源泉掛け流し。茶緑濁色・強い金気臭・細かい茶色の湯の花・スベスベ感。
【施設】 茅野駅よりバス50分、八ヶ岳山麓樹林帯の渋川渓谷にある一軒宿。R299を麦草峠へ登る道を、途中から右に折れて渋川まで降りる途中にある。開湯は大正の頃だが、一時寂れていた。昭和20年代に保科氏により再開され、家族的な経営がなされている。巨岩が幾つか置かれた浴室内のガラス張りの狭い内湯岩風呂(山の眺め)・開放的であまり大きくない露天岩風呂(渓谷を見下ろす)・温水プール(湯が温い)がある。食事は山菜膳など。P30台位。
【評価】 ★★★☆☆
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横谷温泉旅館

【所在】 茅野市北山5513
【電話】 0266-67-2080
【時間】 12:00-15:00・19:00-21:00。無休。
【料金】 【入浴】\1,500。【宿泊】\12,300-。
【泉質】 単純炭酸鉄泉19℃,pH5.3。単純二酸化炭素泉と含鉄泉を混合した湯治湯。鉄分が沈殿する黄金色の効能豊かな自家源泉で、日本では珍しく炭酸ガスが溶けている温泉である。血管の拡張が強まって血圧が下がり、低張性のため浸透圧が低いので泉質物質が体内に入り易く、効果が出やすい。それは、手がふやける時間が早いことで実感できる。湧出1,080g/分。主成分はNa 105・Ca 38・K 27・Mg 28・Fe(U) 19・Cl 133・SO4 260・HCO3 72 mg/kgで、計692mg/kg。更に、遊離CO2 710mgも含有している。加温・循環濾過で、湯は濃厚な黄金色・鉄物臭・温め。高血圧・動脈硬化・貧血・婦人病・皮膚病・不眠症(確かに効いたようだ)などにも効能。
【施設】 横谷峡にたたずむ1923年創業の一軒宿(80室)。玄関は和風の風情の特に何もない空間で、2階がロビー・フロントとなっている。ガラス張り石造り内湯(横谷峡の眺め)・渓流すぐ横にある開放的な巨石露天風呂2(一つは5-6人可・もう一つは掛け流しで何十人も入れる・横谷渓谷の流れと滝の美を一望・ザアーザアーというちょっとやかましいほどの滝の音)がある。蕎麦打ち体験可。近くには、乙女滝・霜降りの滝・王滝・御射鹿池などを巡る4kmのトレッキングコースがある。アクセスは、明治温泉・渋の湯がある「湯みち街道」ではなく、北側のR299(メルヘン街道)を東に進み、「蓼科パークホテル」がある「横谷峡」入口から細い道を東に行けば30分ほどで着く。
【評価】 ★★★★★(2009.08)奥蓼科を代表する温泉で、泉質・眺望・雰囲気などすべてが最高である。
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蓼科パークホテル
【所在】 茅野市蓼科中央高原横谷峡(北山5522)
【電話】 0266-67-2600
【時間】 10:00-19:00。不定休。
【料金】 【入浴】\800(乙女滝と別料金)。【宿泊】\11,000-。
【泉質】 鉄泉と単純炭酸泉23℃,pH4.1。加水・循環。
【施設】 R299から横谷峡への入口にある、35,000坪の広大な高原リゾートホテル(66室)。諏訪ICからは25分。中央アルプスの雄大な山並みが眺められ、夕暮れ時が見事だから、温泉は「夕映えの湯」と名付けられている。天井までガラス張りの洋風石造り内湯(40名可・正面に絶景)・開放的で野趣ある露天檜風呂(渓谷美)・貸切風呂(\1,575/60分)・プール・ホテル前グランドゴルフ場・ダンスホール・大会議室などがある。食事は、地元の旬の野菜や山菜や地鶏などを用いた囲炉裏料理。P200台。周辺には乙女滝・横谷峡に行くトレッキングコースなどがある。
【評価】 ★★★☆☆併設の乙女滝温泉が営業していず、ホテルの温泉も貸切で利用不可と、極めて適当な印象を持った。
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(蓼科グリーンバレー) 乙女滝温泉
【所在】 茅野市蓼科中央高原横谷峡
【電話】 0266-67-2600
【時間】 10:00-19:00。不定休。冬休業。
【料金】 【入浴】\800。【宿泊】\9,000-。
【泉質】 単純炭酸鉄泉23℃,pH4.1。湯は、酸性度が高く低温なので、加水加温、無色(薄褐濁色)・炭酸味・消毒臭。
【施設】 横谷峡への入口にあるレジャー施設「蓼科グリーンバレー」・「蓼科パークホテル」の敷地内にある日帰り施設。乙女滝が眺められる渓谷沿いの、ガラス張り洋風六角形大理石内湯(源泉湯と自家製ハーブ湯の2つ)・和風露天木製風呂(含鉄湯+漢方薬草・緑が眩しい)・サウナ。パークホテル内の綺麗な内湯も別料金で入浴できる。P30台。
【評価】 ★☆☆☆☆温泉というよりは、ハーブ湯・薬草湯である。
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