(先生の現代文授業ノート)三好達治「雪」
left★板書(+補足)★
「現代文授業ノート」(普通クラス)
   三好達治「雪」

〈出典〉
 ・初出 昭和5年(1930)12月処女詩集「測量船」
     所収(作者30歳)

〈作者〉
 ・明治33年(1900)〜昭和39年(1964)
 ・大阪府出身の詩人
 ・格調高い叙情で、日本的伝統の美を受け継ぎつつ
  西欧的近代意識による清新さも追求して、昭和の
  代表的叙情詩人
とされるが、後に戦争詩に変貌と
  批判される
 ・詩集 「測量船」「艸千里」
     「駱駝の瘤にまたがって」(芸術文学賞)

〈表現〉
 ・口語自由詩
 ・語句の繰り返し(リフレイン)
    →耳に快いリズムを生み出す
 ・僅か2行から成る詩

〈概要→主題〉
 ・民話の世界のような雪深い地方の村で、夜更け、
  雪がしんしんと降り積もり、子供たちが包まれる
  かのように安心して眠っている、懐かしい情景

right★発問☆解説ノート★
(詩)2012年10月(2020年10月改)








・萩原朔太郎の妹と結婚…のはずだったが…
・「詩と詩論」に参加の後、昭和9年(1934)堀辰雄・
 丸山薫らと「四季」を創刊
・出発期は、青春のみずみずしい感性と、青春ゆえの
 叙情が込められる




・文語詩・定型詩ではない









left★板書(+補足)★
〈全体の構成〉    (←時系列・場面・心情)
〈枠組み〉(…設定)
 (いつ)   夜が更ける頃
 (どこで)  雪深い地方の村で
 (誰が)   太郎や次郎が
 (何を)   優しい眠りに
 (どうした) ついていた
   ↑
 (なぜ)   しんしんと雪が降りつもっていた

right★発問☆解説ノート★
〈教材〉

    雪               三好達治

太郎を眠らせ 太郎の屋根に雪ふりつむ。

次郎を眠らせ 次郎の屋根に雪ふりつむ。



left★板書(+補足)★
〈授業の展開〉
<雪深い村に雪が降り積もる情景>

太郎を眠らせ 太郎の屋根に雪ふりつむ。
  ・(雪深い地方の村で、夜更け)太郎の家に雪が
   しんしんと降り積もって、屋根の下では太郎が
   包まれるように安心して眠っている。
  <雪が広い平野一面に降っている情景>

次郎を眠らせ 次郎の屋根に雪ふりつむ。
  ・(広い村の中でぽつんと離れた)次郎の家も、
   雪がしんしんと降り積もって、同じように屋根
   の下では次郎も包まれるように安心して眠って
   いる

  <安らかに眠る子供たちを包み込んで、>
  <無限にしんしんと雪が降り積もっている情景>

▼〈まとめ〉
夜更けの雪深い地方の村で、子供を安らかに包み込む
ように雪がしんしんと降り積もっている情景を詠む。

right★発問☆解説ノート★



・太郎・次郎=男の子の一般的な名称
 →子供たちの空間的な広がりを感じさせ、その次も
  連想させて、イメージを限定しない表記
・屋根・雪→子供たちを安心させて包み込む存在


・主語→「雪が」  ・リフレイン→無限の時間
☆雪の降り積もっている情景を俯瞰することによって
 子供たちの安穏な眠りを、語り手は想っている
 →作者の三好達治は幼い頃養子に出され、安らかに
  眠る子供たちのようになりたかった。
 「雪」は、そんな作者の心理を表している。
(民話的に、自分の理想の平和・安心を素朴に描く)





left★板書(+補足)★
〈主題〉
民話の世界のような雪深い地方の村で、夜が更ける頃
あちこちの家で安らかな眠りについている子供たちを
優しく包み込むように、雪がしんしんと降り積もって
いる、作者の希求する懐かしい情景を詠んだ詩

right★発問☆解説ノート★






left★板書(+補足)★
〈補足1…鑑賞〉
雪深い地方の村で、夜が更けてから、雪がしんしんと
降り続けている。東北・北陸・信州あたりの豪雪地帯
だろうか。
ポツンポツンと疎らに家が散在する村は、厚い雪雲の
下で、降り積もる雪に囲まれて、何の音もなく人の声
も聞こえない。シーンと静かな夜、家々はひっそりと
静かで、人々はすることもなく眠っている。ポツンと
離れた各々の家で、太郎も次郎も静かに眠っている。
こんもりと積もった雪は、寒くはなく温かい。そんな
雪に包み込まれるように、安らかに眠っている
のだ。
二人に限らず、村の子供たち全てが、積もる雪や屋根
に温かく包まれるように安心して眠っている。
雪女など数々の物語が昔から伝わる雪深い地方を舞台
とした、紙芝居や民話などを思い起こさせる温かさ
ある。誰にでも想像できそうな、何となく懐かしくて
心が落ち着くような世界である。
幼少の頃に、養子に出された作者は、温かく包まれて
安心できるような世界を希求する思い
があって、この
詩を作ったのだろうか。

right★発問☆解説ノート★
〈補足2…モチーフ〉
家計が常に逼迫(差し迫る、余裕がない)
    ↓
両親から引き離され、養子に出されたことによる影響
が深く心に残る、不遇な幼少時代の反照(照り返し)
    ↓
母体回帰願望的な側面が「雪」のモチーフ
    ↓
子供の頃のくるまれるような<安心感>を表現
=民話的な自己の安息の世界

〈補足3…参考〉
・「乳母車」→母への憧憬の念・慕情がこもった
       幻想の世界(情景)
・「甃のうへ」→春の古寺ののどかな世界の中、
        ひとり春愁に沈む「わが身」の有様

XX〈補足4…粗筋〉(参考資料)



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