left★原文・現代語訳★
【二】<扇の骨の自慢>
「隆家こそいみじき骨は得てはべれ。それをはらせて参らせむとするに、おぼろけの紙はえ張るまじければ、求めはべるなり。」と申したまふ。
=「この隆家は素晴らしい骨を手に入れております。
それに紙を張らせて中宮様に献上しようと思うので
すが、並一通りの紙を張ることはできないので、
相応しい紙を探し求めているのです。」と申し上げ
なさる。
「いかやうにかある。」と問ひ聞こえさせたまへば、
=「その骨はどのような物なのですか。」と中宮様が
お尋ね申し上げなさると、
「すべていみじうはべり。『さらにまだ見ぬ骨のさまなり。』となむ人々申す。まことにかばかりのは見えざりつ。」と、言高くのたまへば、
=すべてが素晴らしうございます。『全くまだ見たこ
とのない骨の様子です。』と人々が申します。本当
にこれほどの物は見たことがありません。」と中納
言は大きな声でおっしゃるので、
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right★補足・文法★
・隆家→中納言
・いみじ=(+−)甚だしい・たいそう。
(+)優れている、素晴らしい。(ー)ひどい。
・おぼろけなり=普通だ、並だ。
格別だ、並一通りではない。
・え(可能)+張る+まじけれ(打消意思)+
ば(確定条件)=出来ないので
・いかやうなり=どのようである(か)
・さらに〜打消=全く(決して)〜ない
・かばかり=これほど、この程度。これだけ
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