left★原文・現代語訳★
「古文現代語訳ノート」(普通クラス)
   清少納言「枕草子/
          102段 中納言参り給ひて」


〈作品=『枕草子』〉
〇平安中期1001年頃成立
 →日本最古の随筆(文学)
 →三大随筆の一つ
  ・清少納言『枕草子』(11C)
  ・鴨 長明『方丈記』(13C)
  ・兼好法師『徒然草』(14C)
〇一条天皇の中宮定子を中心とする後宮に出仕
 していた頃の見聞・体験・感想などを記す
 →政治的な事には触れず、天皇・中宮への賛嘆と
  後宮文化の華やかさを表現することに終始
〇約300段
 ・類聚的章段(ものづくし)
 ・随想的的章段
 ・回想(日記)的章段
〇書名の由来→最終段「枕にこそ侍らめ」が参考
 →「枕」=身辺座右に置いていた冊子
     (草子・草紙・双紙=綴じ本)
 →「備忘録」「身辺の随想」

〈概要〉
〇回想(日記)的章段→自慢話(+言い訳)
〇海月に骨はないから、見たことがない骨とは海月の
 骨では、という頓智についての自慢話とその言い訳
                   (→要旨)

right★補足・文法★
(随筆)2017年9月



〈作者〉
・965〜1025年頃
・曾祖父清原深養父と父元輔は著名な学者・歌人








→自然・人事を項目によりまとめた「すさまじき物」
 「うつくしき物」「にくき物」「鳥は」「虫は」等
→「春は曙」「月のいとあかきに」等
→宮廷生活での体験











left★原文・現代語訳★
〈全体の構成〉 (→要約→要旨)

【一】<中納言の参上>
中納言参りたまひて、御扇奉らせたまふに、
=中納言が中宮定子様の所に参上なさって、御扇を献
 上なさる時に、

right★補足・文法★


・中納言=中宮定子の弟、藤原隆家
・参り(謙譲→中宮)+たまひ(尊敬→中納言)
 →謙譲+尊敬=二方面敬語(二重敬語)
・奉ら(謙譲→中宮)+せ+たまふ(尊敬→中納言)

left★原文・現代語訳★
【二】<扇の骨の自慢>
「隆家こそいみじき骨は得てはべれ。それをはらせて参らせむとするに、おぼろけの紙はえ張るまじければ、求めはべるなり。」と申したまふ。
=「この隆家は素晴らしい骨を手に入れております。
 それに紙を張らせて中宮様に献上しようと思うので
 すが、並一通りの紙を張ることはできないので、
 相応しい紙を探し求めているのです。」と申し上げ
 なさる。

「いかやうにかある。」と問ひ聞こえさせたまへば、
=「その骨はどのような物なのですか。」と中宮様が
 お尋ね申し上げなさると、

「すべていみじうはべり。『さらにまだ見ぬ骨のさまなり。』となむ人々申す。まことにかばかりのは見えざりつ。」と、言高くのたまへば、
=すべてが素晴らしうございます。『全くまだ見たこ
 とのない骨の様子です。』と人々が申します。本当
 にこれほどの物は見たことがありません。」と中納
 言は大きな声でおっしゃるので、

right★補足・文法★

・隆家→中納言
・いみじ=(+−)甚だしい・たいそう。
 (+)優れている、素晴らしい。(ー)ひどい。
・おぼろけなり=普通だ、並だ。
 格別だ、並一通りではない。
・え(可能)+張る+まじけれ(打消意思)+
 ば(確定条件)=出来ないので


・いかやうなり=どのようである(か)



・さらに〜打消=全く(決して)〜ない
・かばかり=これほど、この程度。これだけ






left★原文・現代語訳★
【三】<作者の頓智話の自慢>
「さては、扇のにはあらで、海月のななり。」と聞こゆれば、
=「それでは、扇の骨ではなくて、海月(くらげ)の
 骨のようです。」と私(作者)が申し上げると、

「これは隆家が言にしてむ。」とて笑ひたまふ。
=「これは隆家が言った言葉にしてしまおう。」と中
 納言は言ってお笑いになる。


right★補足・文法★

・さては=(副)そのままでは。(接)それでは、
 それから、その他に
・海月+の(〜のもの=準体言)+な(断定なる→
 なん→「ん」無表記)+なり(推定)






left★原文・現代語訳★
【四】<作者の言い訳>
かやうのことこそは、かたはらいたきことのうちに入れつべけれど、
=このような自慢は、記すのが決まりが悪いことの中
 に入れておくのがよいのだけれど、

「一つな落としそ。」と言へば、いかがはせむ。
=「一つも書き漏らしてはいけない。」と仲間の女房
 たちが言うので、どうするのがよいだろうか(どう
 しようもないので書き記しておこう)。

right★補足・文法★
・傍ら痛し=(傍で見ていて)気の毒だ、見苦しい、
 はらはらする、きまりが悪い
・な(副)〜そ(終助)=禁止








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