「現代文授業ノート13」(普通クラス)

『山月記』          中島 敦

 

〈作品〉

 

大正三年(一九一四)(四十七歳)

 「朝日新聞」に連載開始

 

 

 

〈作者〉慶応三〜大正五年

 

○近代文学を確立した文豪

 ・愛媛県松山中学教諭(明治二十八年)

 ・正岡子規と俳句に熱中

 ・イギリス留学(明治三十三〜三十六年)

 

○処女作『吾輩は猫である』(明治三十八年)

       (文明・社会批評)

    『坊っちゃん』(明治三十九年)

○前期三部作『三四郎

それから

○後期三部作『彼岸過迄

行人

こころ(大正三年)(四十七歳)

○最後の作品『明暗』(絶筆・未完)

      →晩年の境地「則天去私

(自然にのっとり、

自分のエゴを捨てて生きる

○評論で有名な作品

『日本文明の開化』

『私の個人主義』

(小説)2013年1月(2017年改)

 

・「漱石」=頑固者の意、本名は金之介

(←占いで名付ける)

 

 

・エゴイズムを追求

 

 

 

 

・一八六七〜一九一六年(四十九歳)

慶応で江戸が終わり、明治が始まる

・英文学者として出発

 

・森鴎外はドイツ留学

 

・一九〇五年(三十七歳)

雑誌「ホトトギス」に載り、文壇に登場

余裕ある態度社会を風刺

倫理観と反社会的な行為

=急激に変化する社会と、

流れについていけない人間

エゴイズム(利己主義)・個人主義を追求

 =人間の自己本位で身勝手な心

    ⇓

乗り越える道を追求

     ⇓

(自然の摂理)に従い、

自分()の小さな考えを捨てる

 

・講演内容のまとめ

 →自由には責任がついている

文学史的な位置づけ

 

自然主義(明治四〇年〜)→私小説

 

 ・人間のあるがままの姿を描写

    (醜い面)

 ・島崎藤村『破戒』

 ・田山花袋『蒲団』

    ⇑

    ⇓

反自然主義

 

余裕派高踏派

  ・自然主義に対し、広い視野を持つ

夏目漱石『こころ』

  ・森鴎外『高瀬舟』など

白樺派

  ・志賀直哉・有島武郎・武者小路実篤

耽美派

  ・谷崎潤一郎

 

 

 

小説全体の枠組み

 

○「上 先生と私」「中 両親と私」は、

「先生」亡き後の「私」の回想としての手記の形式、

「下 先生と遺書」は、

「先生」が「私」に宛てた遺書の形式をとる。

 

 

 

 

 

 

・二〇〇七年〜

 

・現実を描く→暗い

 

・『夜明け前』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・「上中下」の全容

 「私」……学生(二十三才位)

⇓  鎌倉の海水浴場で先生と出会う

⇓           「 先生と私」

⇓  卒業後、帰郷   「 両親と私」

先生(三十五才位)……郷里にいる「私」に遺書を送る

             ⇓

先生が自分の学生時代を回想した内容

    ⇓        「 先生と遺書」

   「私」(二十三才位)=先生

「上中下」三部 全体のあらすじ

○「上 先生と私」

  大学生の「」が、鎌倉の海水浴場で先生と知り合い、その人柄に惹かれて家に通う。

  先生は、大学を出ながら職も持たず、美しい奥さんを愛しながら、人間を信用できない。そして、毎月一人で友人の墓参りをする.

○「中 両親と私」は、

 「私」は大学を卒業して帰省する。病後の父が再び倒れた前後、明治天皇の崩御乃木大将の殉死が報じられ、先生から分厚い遺書が届き、「私」は直ちに上京する。

   ⇓

○「下 先生と遺書

  遺書の内容で、先生の過去(学生時代)と、

自殺を決行するに至る心境(罪悪感・孤独)

が綴られる。

 「私」とは、「上」「中」での「先生」のことである。

   ⇓

   ⇓

「下 先生と遺書」採録部分の舞台設定

時代設定(背景)

 明治三十年代(先生の学生時代…二十三才位)

  〜明治四十五年(先生の自殺…三十五才位)

     (明治天皇の崩御と乃木大将の殉死)

          (一八九七〜一九一二年)

○場所

 ・東京帝国大学・上野公園および周辺

 ・軍人未亡人の奥さんとお嬢さんがいる下宿

○主人公…「

東京帝国大学の学生

 ※他の登場人物

   ・下宿のさん・おさん

 

・先生(三十五才位)=「下」では「私」

(二十三才位、学生)

・鎌倉→漱石は『門』『彼岸過迄』『行人』で鎌倉を舞台として使い、また、別荘を借りて家族を避暑に行かせ、自分も海で泳いでいる。

・友人=「下」では(二十三才位、学生)

 

・当時の大学は、入学式は九月、卒業式は六月。

 →「私」=二十三歳(中5・高3・大3年)

・明治四十五年(一九一二)

・殉死=主君の死に寄り添って死ぬ

 →森鴎外は殉死を批判→『阿部一族』

・高等中学校が高等学校と称されるようになったのは明治二十七年(東京では一高だけ)。

従って「先生」の上京はそれ以後、学生時代は明治三十年代となる。

・恋(学生)〜Kの死〜「私」=先生の自殺

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人物の設定〉(人物像)

 

○「私」

  思いやりのある優しい心を持つ性格

・お嬢さんへの恋心を抱く

→嫉妬

         ← ← ← 信頼

          ⇑⇓妬 ➘ ➘恋➘  ⇑

         頼⇑⇓嫉 好意← 

         信⇑⇓  ➚ ➚恋➚

           

○K

  道のために生きることを第一信条(信念)として生きる強固な性格

    ・寺に生まれた

→「恋」「愛」は信条を妨げるもの

→意志強固で勉強家。頑なに孤独に生きようとする

 

「下 先生と遺書」主題

 

○教材前半→恋愛と友情との相克

 教材後半→エゴイズムと良心との葛藤

      (世間体)(自然)

    ⇓

良心を忘れて友人を裏切ってしまった

 エゴイズムと良心との相克(葛藤)

    ⇓

〈主題→一〇〇字〉

「私」はエゴイズムから友人のKを裏切ってしまう。事情を知ったKの超然とした態度に、「私」は良心の痛みを感じてKに謝罪しようと思うが、ついに世間体を忘れることができないで悩むうちに、Kは自殺してしまった。

 

・両親が病死、叔父が遺産の管理でごまかし、

 人間不信で厭世的

・上京し、下宿から大学に通う

 →奥さん(軍人の未亡人)・お嬢さん

 →家族同様の世話のおかげで、心がほぐれ、

  お嬢さんを愛し始める。

・養家・実家と離縁し窮乏していた同郷の学生 Kを下宿に同居させる。

・お嬢さんがKに親しそうにするように見え、

Kに嫉妬の念を覚える。

 

・同郷の幼馴染で、真宗の寺の次男

・医者の家に養子にやられるが、勝手に別の科

に進み、養家から離縁・実家から勘当される

→夜学の教師などをして、過労・神経衰弱

・「私」の援助で同居(「私」が下宿代を負担)

 

 

・『こころ』教科書の採録部分

 

・相克=対立するものが相手に勝とうと争う

・良心を持った人間も免れることのできない?

→裏切り・世間体→挿入句での批判

  復活した「私」の良心

 

☆作者はこの小説で何を描こうとしたのか

(→話し合い)

誰の心にも潜んでいるエゴイズムを問題としている。

しかも、その罪を断罪(罪を裁く)しているのではない。エゴイズムを抱きながら生きるとはどのようなことかも追究しているのである。

 

全体の構成〉→下段は参考

 

【一@】(起@)嫉妬を自覚する「私」

 ▼十一月の寒い雨の降る日(散歩中)

 

 

【一A】(起A)Kの告白と「私」の悔恨

▼正月、かるたと「私」の嫉妬

 

▼二・三日後、Kの告白と「私」の衝撃

 

▼昼食後の部屋〜往来で、「私」の悔恨

 ▼夕飯〜夜、そっけないK

 ▼「私」の内心の動揺

 

▼学校が始まったある日、往来で、Kに肉薄

 

【二】(承)Kの迷いにつけ込む「私」

 ▼ある日、図書館〜上野公園で、苦悩するK

 ▼打ち倒そうとする「私」

 ▼「私」のKに対する認識と覚悟

  (Kの覚悟に対する「私」の認識)

 

 

 

【三@】(転@)Kを出し抜く「私」

 ▼(覚悟…)安心から不審へ(…黒い影

 ▼「私」の最後の決断

 

 

 

 

 

 

・『こころ』教科書の採録部分

 →「私」とKは大学三年(翌年、Kは自殺)

【一】

X十一月の寒い雨の降る日(散歩中)

 →Kがお嬢さんと連れ立って帰宅するのに

遭遇→嫉妬を自覚する「私」

【二】

X翌年の春のある日(下宿)

 →かるたでお嬢さんがKに加勢→苛立つ「私」

X二・三日後(下宿)

→Kがお嬢さんへの恋を「私」に告白→一瞬固くなった後、先を越されたと思う「私」

(後悔と焦燥)

 

 

 

 

【三】

Xある日(上野公園)

→散歩中、批評を求めるKに「精神的に向上心のない者はばかだ」と指摘し、Kに「覚悟」を求めると、Kは「覚悟ならないこともない」とつぶやく→「私」はKの恋の行く手を塞ごうとした

 

【四】

Xその夜(下宿)

 →真夜中に襖が開いてKの黒い影が立つ→「私」は翌朝、Kの「覚悟」の意味を解釈し直す

X一週間後(下宿)

 →Kの不在時に、奥さんにお嬢さんとの結婚 の承諾を得る→「私」は未来の運命が定め

られたと思う

【三A】(転A)Kへの謝罪にためらう「私」

 ▼「私」の良心の復活

 

 

▼立ちすくむ「私」と奥さんの爆弾発言

 

 

 

【四】(結)Kの自殺と「私」の運命

 ▼Kの自殺

 ▼Kの自殺を発見した(際の状況と)

「私」の反応・心理(運命)

 

 

補足…その後)

 

☆「先生」が「私」に手紙を書いたのは

 →「ただあなただけに、私の過去を物語りた

いのです。…あなたは真面目に人生そのも

のから生きた教訓を得たいと言ったから」

 「私の鼓動が停まった時、あなたの胸に新し

い命が宿る事が出来るなあら満足です」

 

 

 

(お嬢さん→活け花・琴・高等女学校←奥さん

の唯一の誇りとも見られるお嬢さんの卒業)

 

 

 

 

 

 

 

【五】

Xその晩(下宿)

 →夕食時、事情を知らない三人の中で苦しむ →Kへの謝罪の思いが募る「私」

X五・六日後(下宿)

 →奥さんからKに事情を話したことと、その時のKの様子を知る→超然としたKに人間として負けたと思う「私」

Xその晩(下宿)

 →Kの自殺を発見し、Kの遺書の内容を確か

める→再び一瞬固まり、黒い光が全生涯を

を照らし出したが、遺書を読み助かった

思う「私」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈授業の展開〉         (上段…板書)

 

【一@】〈嫉妬を自覚する「私」

 

▼〈十一月の寒い雨の降る日

 

 

 

○下宿に帰宅

Kの部屋は火鉢に火

「私」のはそうでない。

    ⇓

・急に不愉快

・不思議

 

    ⇓

往来に出る(散歩)

・初冬の寒さと侘しさ

空は冷たい鉛のように重く

 

    ⇓

○往来のぬかるみで、

お嬢さんと連れ立って帰宅するKに遭遇

 ・不意に自分の前が塞がった

→恋の前途を塞ぎ、嫉妬の対象となる伏線

 

・いつもの通りふんという調子

Kの性格がわかる描写

(感情を表さず不愛想

 

 

 

 

 

(下段…解説ノート)

 

嫉妬を自覚する「私」

 

十一月の寒い雨の降る日

・明治三〇年代で、「私」とKは東京帝大三年二十三歳、この冬Kは自殺

・当時の大学は、入学九月、卒業六月

○帰宅すると、誰もいないKの部屋は火鉢に火があり温かいが、「私」のはそうでない。

    ⇓

・「私」は急に不愉快になった

  →Kよりもないがしろにされたと感じた

 ・その日もKは遅れて帰る時間割だった

→火鉢に火があるので不思議に思う。

    ⇓

往来に出る(散歩)

・初冬の寒さと侘しさが体に食い込む感じが

し…空は冷たい鉛のように重く見えた

・泥…後生大事に=一所懸命つとめ、大事に

    ⇓

○往来のぬかるみで、

お嬢さんと連れ立って帰宅するKに遭遇

 ・不意に自分の前が塞がった

→Kが恋の前途を塞ぎ、嫉妬の対象となる伏線

・「ちょっとそこまで」と、いつもの通り

ふんという調子だった

Kの性格がわかる描写(感情をあまり表

に表さず不愛想。しかし、今回は同じよ

うなKの態度に嫉妬を覚える)

 ・少なからず驚きました

→不愛想なKがお嬢さんと連れ立って帰宅したので、理由がわからず困惑

 

 

 

     ⇓

○どこに行っても面白くないような心持

ぬかるみの中をやけにどしどし歩いた

 

 

 

 

○帰宅しKに尋ねると、

偶然出会ったからと言う。

 

 

 

・お嬢さんにも同じ問いを…

→お嬢さんは嫌いな例の笑い方をする

   (若い女に共通な嫌いな所もある)

 

 

 

 

 

 

    ⇓

・Kがうちへ来てから

…目に付きだした

 

 

 

 

    ⇓

嫉妬を自覚する「私」

 

・その時分の束髪は今と違って

→髪を束ねて結う西洋風の女性の髪形だが、お嬢さんは額の上で廂を出していない。

     ⇓

○どこに行っても面白くないような心持

ぬかるみの中をやけにどしどし歩いた。

Kに対する嫉妬から、二人のことが気になって仕方なくて落ち着かず、やり場のない自暴自棄な気持ち。

 

○帰宅しKに尋ねると、偶然出会ったから

お嬢さんと連れ立って帰って来たと言う。

・真砂町で…

→距離からすると、Kとお嬢さんが偶然

連れ立ったのは十五分程度?

・お嬢さんに同じ問いを…

お嬢さんは嫌いな例の笑い方をする

※他にも、「Kとお嬢さんしか家にいない

所に帰宅した「私」が、奥さん不在の理由を「何か急用でもできたのか」と聞くと、お嬢さんはただ笑っているのです。…若い女に共通な点と云えばそれ迄かもしれませんが、お嬢さんも下らない事によく笑いひたがる女でした」とある。

    ⇓(若い女に共通な嫌いな所もある)

・その嫌いな所はKがうちへ来てから…Kに

対する私の嫉妬帰していいものか

→お嬢さんの嫌いな所が目に付きだした原

因を、Kに対する「私」の嫉妬に当ては

める。 (帰す=罪や責任をあるものに

当てはめてそのせいにする)

    ⇓

嫉妬を自覚する「私」

 

    ⇓

嫉 妬

 

 

 ・取るに足りない些事

  この感情(嫉妬)が…

 

 

 

自分の心を相手の胸へたたきつけようか

 →奥さんにお嬢さんとの結婚を申し込もうか

 

 

    ⇓

〈しかし〉断行の日を延ばす

 1(奥さんは)財産目当てではないか

 2お嬢さんがKの方に意が(という疑念)

 

 

 

 

 

    ⇑

・「私」の恋愛観

極めて高尚な愛の理想家

相思相愛を理想

最も迂遠(遠回り)な愛の実際家

→一度もらえばどうにか落ち着くでは

承知できないくらい熱していた

情熱があるのに行動を起こせない

 

 

 

 

 

 

 

    ⇓

 ・ほとんど取るに足りない些事にこの感情が

→「私」の質問に、お嬢さんが嫌いな笑い

をして正面から取り合わないこと。

・愛の裏面にこの感情が…嫉妬は愛の半面…

 

○躊躇していた自分の心を一思いに相手の胸へ

たたきつけようかと考え出した。

奥さんにお嬢さんとの結婚で談判を開こう(結婚を申し込もう)か。

    ⇓

〈しかし〉断行の日を延ばした

 1他の手に乗るのが嫌だという我慢が、抑え

つけて動けなくした。

財産目当てで、奥さんが娘と結婚させようと考ているのではないかという疑いも抱いていた。

 2お嬢さんがKの方に意があるのではなかろ

うかという疑念が「私」を制した。

    ⇑

・「私」の恋愛観

極めて高尚な愛の理想家

→自分がいくら思っても相手が他の人に愛の眼を注いでいたら、一緒になるのは嫌=相思相愛を理想とする。

→信仰に近い愛を持っていた→お嬢さんの事を考えると気高い気分が自分に乗り移ってくるように思った。)

最も迂遠(遠回り)な愛の実際家

→一度もらってしまえばどうにか落ち着くくらいの哲理(本質にかかわる深い道理)では承知できないくらい熱していた=情熱があるのに行動を起こせない。

 

お嬢さんに直接「私」を打ち明ける機会も

    ⇓

〈しかし〉

日本の習慣として…許されていない

明治三〇年代の一般的な習慣

両親の倫理観

日本人の若い女…勇気に乏しい

 

 

 

 

 

    ⇓

 

【一A】〈Kの告白と「私」の悔恨

 

どちらの方面へも進めず

→(お嬢さんとの結婚を望みながら)

奥さんにもお嬢さんにも打ち明けることが

できず

 

 

 

 

 

▼〈正月、かるたと「私」の嫉妬

 

○翌年、春のある日かるた

お嬢さんがKの加勢

→「私」は(苛立ち)嫉妬

→Kの態度は変わらず

 

 

 

お嬢さんに直接「私」を打ち明ける機会も

    ⇓

〈しかし〉

日本の習慣として…許されていないのだと

いう自覚があった(恋愛という問題の提示)

→「私は倫理的に生まれた男です」と遺書   の冒頭にあり、明治三〇年代の一般的な

習慣を踏まえる。

二十歳前に両親を亡くし一人きりになっ

た「私」は、両親の倫理観を胸にして生

きる支えとしていた。

日本人の若い女は…勇気に乏しいものだ

    ⇓

 

Kの告白と「私」の悔恨

 

○こんな訳で

どちらの方面へも進めず立ちすくんでいた

→お嬢さんとの結婚を望みながら、

奥さんにも承諾を申し入れることができず、

お嬢さんにも直接打ち明けることができず

    (←財産目当て・恋愛観・日本の習慣)

※Kにもお嬢さんへの愛(結婚意思)を明言

できずにいる。

 

正月、かるたと「私」の嫉妬

 

○年が暮れて春になり、ある日かるたをする。

・Kは来て一年近く経ち下宿で初めて新春を

迎えるが、自殺。「私」は二年前から住ん

でいて、この年に大学を卒業。

お嬢さんがKの加勢をし、喧嘩を始めたか

もしれなかった(嫉妬)。

→Kの態度は変わらず(無関心?)。

▼〈二・三日後、Kの告白と「私」の衝撃

 

○Kが仕切りの襖を開けて、

いつもに似合わない話

    ⇓

○なかなか奥さんとお嬢さんの話を止めず

・「私」は不思議に思う

  →他人には無関心

→調子が変わっている(☆奥と嬢の話)

・なぜ今日に限ってそんな事ばかりと尋ねる

と、Kは突然黙る。   (☆奥と嬢の話)

 

 

 

 

 

    ⇓

Kがお嬢さんへの恋を「私」に告白

    ⇓⇓⇓

驚いた「私」は、

彼の魔法棒のために一度に化石された

  ☆驚きのあまり全く身動きできず、何も言い出せないほど固まってしまった

    ⇓

    ⇓

=「私」は恐ろしさ・苦しさの塊

    ⇓     (驚き・恐ろしさ・苦しさ

一瞬の後、しまった、先を越されたと思う

  ☆「私」もお嬢さんへの恋を告白すべきだ。

    ⇓

    ⇓

    ⇓

    ⇓

    ⇓

〈二・三日後、Kの告白と「私」の衝撃

 

○Kが仕切りの襖を開けて、

いつもに似合わない話を始めた

仕切りの襖二人の心や関係を仕切るもの

    ⇓

○Kはなかなか奥さんとお嬢さんの話を止めず。

・「私」は不思議に思う。

  →Kは他人には無関心

→調子が変わっている

・なぜ今日に限ってそんな事ばかりと尋ねる

と、Kは突然黙る。   (☆奥と嬢の話)

 ・元来無口なKは、いったん口を開くと普通

の人よりも倍の強い力がある。

(※「私」の心情を表す箇所をチェック←小説の読解では、場面ごとの心理描写に注意)

    ⇓

◎Kの重々しい口から、お嬢さんへの切ない恋

を打ち明けられ、  驚いた「私」は、

彼の魔法棒のために一度に化石された

  ☆驚きのあまり全く身動きできず、何も言い出せないほど固まってしまったのを強調

  →口をもぐもぐさせる働きさえなくなって

しまった

    ⇓ (驚き・苦しさ・恐ろしさ

〇その時の「私」は恐ろしさ・苦しさの塊にな

ったが、一瞬間の後に人間らしさを回復し、しまった、先を越されたと思った。

   ・頭から足の先まで急に固くなり、

呼吸さえできないほどだった。

☆「私」もお嬢さんへの恋を告白すべきだ。→後れをとって、不利な立場に置かれる

ことになった

    ⇓

〇どうしようという分別がまるでない「私」に、

 Kは重い口調でぽつりぽつりと打ち明ける

    ⇓

    ⇓

    ⇓

    ⇓

    ⇓

    ⇓

    ⇓

「私」は苦しくてたまらず、

相手は自分より強いという恐怖の念が兆す

☆一種の恐ろしさ=性格的な強さに気おされする畏敬の念を抱き、Kには勝てないというコンプレックスを持つようになる。

    ⇑

・Kは、自分のことに一切を集中しているから、

「私」の苦しさには気づいていない

=「その苦しさは…大きな広告塔のように…」

(比喩)

 

 

 

○Kの話が済んだ時、

 「私」は何事も言えず

 

 

 

 

○昼飯のとき、

 (いつにない)まずい飯

 

 

 

 

〇どうしようという分別がまるで起こらない

私」に、

  Kは重い口を切ってはぽつりぽつりと自分  の心を打ち明けていく(その言葉の調子が  強く胸に響くので…)

・同じ調子で考えて話す

・重くて鈍い代わり、とても容易には

動かせない感じを与え強く胸に響く

⇓⇓⇓

「私」は苦しくてたまらず、相手は自分より強いのだという恐怖の念が兆し始めた。  

☆一種の恐ろしさ=性格的な強さに気おされする畏敬の念を抱き、Kには勝てないというコンプレックスを持つようになる。

    ⇑     

・Kは、自分のことに一切を集中しているから、

「私」の苦しさには気づいていない

=「その苦しさは…大きな広告塔のように…

  (顔面にははっきりと分かるような苦しさ)

(→漱石の比喩の面白さ)

 

 

○Kの話が済んだ時、

 「私」はただ何事も言えなかった

・何かを言い返しておけばいいのだが、

  →あの時こうしておけばこうなのに…

 

 

○昼飯のとき、Kと向かい合わせに座り、

 いつにないまずい飯を済ませた。

 ・食事も咽喉を通らない状況

 

 

 

▼〈昼食後の部屋〜往来で、「私」の悔恨

 

○昼食後、めいめいの部屋で

二人は静か

 

 

「私」は心をKに打ち明けるべきだが、

    ⇓

時機が遅れ悔恨

 

 

 

 

 

○(Kが仕切りの襖を開けて現れるのを待ち、)

午前に失ったものを今度は取り戻そう

  ☆お嬢さんへの恋の告白でKに先を越されたが、自分もKにお嬢さんへの愛(結婚意思)を明言しておくこと

 

 

 

 

Kの静かさに頭はかき乱されるが、

    ⇓

(働きかけられる)時機を待つほかない

 

 

 

○じっとしておられず、町を歩き回るが、

    ⇓

Kのことで頭がいっぱいで、彼の姿を咀嚼

 

    ⇓

昼食後の部屋〜往来で、「私」の悔恨

(Kの告白に動揺する「私」)

○昼食後、二人はめいめいの部屋に引き取り、

静かだった。

 ・「私」もじっと考えていた。

 

○「私」は自分の心をKに打ち明けるべきはずだと思ったが、もう時機が遅れてしまい、頭は

悔恨に揺られてぐらぐらした。

・なぜさっきにKの言葉を遮って、こっちから逆襲しなかったのか→手抜かり

  →Kの自白に一段落がついた今となっては

不自然

 

○「私」はKが再び仕切りの襖を開けて

現れるのを待ち、午前に失ったものを今度は

取り戻そうという下心を持っていた。

  ☆お嬢さんへの恋の告白でKに先を越されたが、自分もKにお嬢さんへの愛(結婚意思)を明言しておくこと

 ・さっきはまるで不意打ちに合ったのも同じ

 ・Kは永久に静か(→考えている)

 

○「私」の頭はKの静かさにかき乱されるよう

になったが、彼から働きかけられる

時機を待つほかなかった

・言いそびれて、自分からは何もできず

 

 

○「私」はじっとしておられなくなり、正月の

町を歩き回ったが、Kのことで頭がいっぱい

で、彼の姿を咀嚼していたのだった。

 

    ⇓

Kが解しがたい男に見え、

 一首の魔物のように思えた。

  ☆相手にするのが変に気味が悪く、

   彼を動かすことはとうていできない。

    ⇓

 永久に彼に祟られたのでは

 

 

 

 

 

 

 

 

○帰宅すると、Kは依然として静か

 

 

▼〈夕飯〜夜、そっけないK

 

○間もなく、がらがらと嫌な俥の音が門前で…

 

〇夕飯の時、寡言だったが、

Kはお嬢さんに声を掛けられて顔が薄赤く

 

〇その晩十時ごろ、…Kはまだ起きていた

(Kが告白した日の晩)

    ⇓

〇深夜暗い中で、Kが何をしているかと、

おいと声を掛けると、

    ⇓

向こうからも返事が

 

    ⇓

 

○「私」にはKが解しがたい男のように見え、

 一首の魔物のように思えた。

  ☆相手にするのが変に気味が悪い。

   彼を動かすことはとうていできない。

→⑴どうして突然「私」に告白したのか

  ⑵ 〃  恋が募ったのか

  ⑶平生の彼はどこに吹き飛ばされたのか

   →Kは強い(←知っている)

  ※後の伏線→こうと信じたら一人で進んで

いく度胸勇気もある。

恋愛など道の妨げと軽蔑している。

  ⇓

「私」は永久彼に祟られたのではなかろうか

という気さえした。

○「私」は疲れて帰った時、Kは依然として静かだった。

 

夕飯〜夜、そっけないK

 

○うちへ入ると間もなく、がらがらという嫌な 俥の音が聞こえ門前で止まった。

〇夕飯に呼び出された時、二人とも寡言だったが、Kはお嬢さんに声を掛けられると顔が心持ち薄赤くなった。

〇その晩十時ごろ、奥さんが蕎麦湯を持ってきてくれたが、Kはまだ起きていた。

 →ランプの光が部屋に差し込んだ。

〇「私」は遅くまで暗い中で考えていて、(Kが隣で何をしているかと思い)半ば無意識においと声を掛けると、向こうからも返事が返ってきた。

 ・隣のKがひどく気になる

 ・一時二十分、ランプを吹き消す音がして、真っ暗でしんと静まった。

〇また「今朝のことで話を」と言うと、

    ⇓

 Kは「そうだなあ」と低い声で渋るので、

    ⇓

「私」はまたはっと思わせられた

  ☆Kはお嬢さんへの恋を成就しようとして

いるのではないかと思った。

 

 

 

▼〈「私」の内心の動揺

 

〇翌々日も、(例の問題について)Kの生返事

    ⇓

 「私」は変にいらいら

    ⇓

折があれば自分から口を切ろうと決心

 

〇しかし、

(奥さんもお嬢さんも変わった点がなく、)

Kの自白は「私」だけに限られたものと考え

    ⇓

少し安心

 

〇Kの動かない様子・奥さんとお嬢さんの言語

動作を観察

    ⇓

ようやくここに落ち着いた

例の問題にはしばらく手をつけずにそっ

とおくことにした。

・人間の胸の…指し得るものだろうか

  →人間の複雑な心の中が、様子や言語動作

に偽りなく現れるものだろうか(?)

 

〇「私」は(また襖越しに)「(今朝聞いたことについて)もっと詳しい話をしたいが」と声をかけたが、

 Kは「そうだなあ」と(低い声で)渋るので、

「私」はまたはっと思わせられた

  ☆Kはお嬢さんへの恋を成就しようとして

いるのではないかと思った。

 →Kは応じない。

 

 

「私」の内心の動揺

 

〇例の問題についてKの生返事は翌々日も態度に現れていて、

 「私」は変にいらいらしだし、折があれば自分から口を切ろうと決心するようになった。

 ・この三〜数日間、懐疑・安心・不安の交錯

 

〇しかし、同時にうちの者の様子を観察した所、

 奥さんもお嬢さんも変わった点がなく、

Kの自白は「私」だけに限られたものだと考

えて少し安心し、例の問題にはしばらく手を

つけずにおくことにした。

 

〇「私」は、Kの動かない様子や奥さんとお嬢

さんの言語動作を観察して、ようやくここに

落ち着いた

☆例の問題にはしばらく手をつけずにそっ

とおくことにした。

 

 ・同じ事をこうも取り、ああも取り、Kの告

白事件について、K・奥さん・お嬢さんの

様子を観察して、心の中であれこれ考えた。

 

▼〈学校が始まったある日、往来で、Kに肉薄

 

〇学校がまた始まったある日、

往来でKに肉薄し、

自白が「私」だけに限られているか聞いた

    ⇓

彼は誰にも打ち明けていないと明言

    ⇓

内心嬉しがった

 

    ⇓

 

⑵恋をどう取り扱うつもりか、

実際的の効果も収める気なのかと尋ねた

☆お嬢さんとの恋を成就させるのか

    ⇓

Kは何も答えず、黙って下を向く

    ⇓

 すべて思った通りを話してくれと頼む

 ☆Kの答え次第で「私」の取るべき態度を

決めなければならないと思った。

    ⇓

 彼は何も隠す必要はないと断言

    ⇓

それなりにしてしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校が始まったある日、往来で、Kに肉薄

 

〇学校がまた始まったある日、

「私」は往来でKに肉薄(相手に迫る、厳しく

問い詰める)し、⑴この間の自白が「私」だ

けに限られているか聞いた所、

彼はまだ誰にも打ち明けていないと明言した

のだ、内心嬉しがった。

 ・Kが横着で、その度胸にもかなわないとい

う自覚があったが、一方では妙に彼を信じていた。(←疑い深い「私」でも)

 

〇「私」はまた⑵彼の恋をどう取り扱うつもり

か、実際的の効果も収める気なのかと尋ねた

所、Kは何も答えず、黙って下を向く。

  ☆お嬢さんとの恋を成就させるのか

 →奥さんやお嬢さんにも告白する気か

    ⇓

 すべて思った通りを話してくれと頼むと、

 彼は何も「私」に隠す必要はないと断言した

ので、ついそれなりにしてしまった。

 ☆Kの答え次第で「私」の取るべき態度を

決めなければならないと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【二】〈Kの迷いにつけ込む「私」

(Kの苦悩と「私」の逆襲)

 

 

▼〈ある日、図書館〜上野公園で、苦悩するK

 

〇学校の図書館で調べ物

    ⇓

 突然Kに名を呼ばれ、

彼の所作に一種変な心持ちがした。

          ⇓

          ⇓

          ⇓

=前で「私」を待つKの胸に一物あり

(談判でもしに来られたように思われる)

 

恋に関する計略がある

  ☆Kを恋敵として見るようになってしまっ

たために、

Kの一挙一動に疑心暗鬼になっていた

 

 

    ⇓

 

 

 

 

〇(二人で)図書館を出て、上野公園にて散歩

☆「私」を散歩に連れ出したKの意図

  →例の事件について「私」に相談するため

    ☆Kがお嬢さんへの恋を自白した事

 

 

    ⇓

Kの迷いにつけ込む「私」

→ぼぼ直接話法・Kの行動や心情について「私」が詳細に解説・当時を振り返っての解説

 

ある日、図書館〜上野公園で、苦悩するK

 

〇「私」は学校の図書館で

課題である外国雑誌の調べ物をしていた。

 突然Kに名を呼ばれた「私」は、彼の所作に

一種変な心持ちがした。

・上半身を机の前に折り曲げるようにして、

顔を「私」に近づけた。

            ⇓

〇前に座り「私」を待つKの胸に一物あり(心に何か謀り事・企みを抱く)、

談判でもしに来られたように思われる。

恋に関する計略がある(→Kの出方が心配)。

  ☆Kを恋敵として見るようになってしまっ

たために、

Kの一挙一動に疑心暗鬼になっていたから。

「私」が不安だから、

Kがいつもと様子が違うように感じ、

普通なら何も思わない。

    ⇓

 

 

〇二人で図書館を出て、上野公園にて散歩した

 ・課題よりもお嬢さんとの事が気になり、

  気が散って急に雑誌が読めなくなる。

  ☆「私」を散歩に連れ出したKの意図

  →例の事件について「私」に相談するため。

☆Kがお嬢さんへの恋を自白した事

    ⇓

    ⇓

Kはまだ

実際的の方面へ向かってちっとも進んでいず

「私」の批判を求めたいよう…

 ☆(恋を成就するために)お嬢さんに対して具体的な言動を示すこと。

    ⇓

    ⇓

    ⇓

    ⇓

 Kの平生と異なる

 

 

 

 

〇Kは「私」に公平な批判を求めるよりほかに仕方がないと言った。

    ⇓

 しかし、

その時の「私」は違っていた

 

 

 

 

    ⇓

    ⇓

    ⇓

 

 

 

 

 

 

 

   ⇓

Kはまだ

実際的の方面へ向かってちっとも進んでいず

「私」の批判を求めたいようであった。

 ☆(恋を成就するために)お嬢さんに対して具体的な言動を示すこと。

    ⇓

・「どう思う」と聞く→恋愛の淵に陥った

  彼を、どんな目で眺めるか

    ⇓

Kの平生と異なる

 ・Kの天性は人の思わくをはばかるほど弱く

はなく、こうと信じたら一人でどんどん進

んでゆくだけの度胸と勇気のある男。

 

〇Kは「私」に公平な批判を求めるよりほかに仕方がないと言った。

    ⇓

 しかし、

その時の「私」は違っていた

 →K=いつも(度胸・勇気ともにある)に似

ない悄然(元気がなくしょんぼりして

いる)とした口調で、 「自分が弱い    人間であるのが恥ずかしい」

     ⇓

迷っている」(自分を見失っている)

←「進んでいいか退いていいか

     ⇓         (恋か断念か)

  私=「退こうと思えば退けるのか

(Kに諦めさせたい)

    ⇓

 

 

 

▼〈打ち倒そうとする「私」

 

〇「私」は他流試合でもする人のように

  ☆Kを敵対視利己主義(エゴ)

 

 

    ⇓

 

 

 「私」=用意

  K =無用心

 

    ⇓

 

要塞の地図をゆっくり眺められた(←暗喩)

  ☆敵として打ち倒そうという思いがある、

相手の心の中を自分の手中にしていた

    ⇓

    ⇓

    ⇓

〇Kは理想と現実の間に彷徨

  ☆理想→道のためにはすべてを犠牲にすべ

きという第一信条に従って

求道一筋に生きること。

   現実→道の妨げとなるお嬢さんへの恋慕の情にとらわれてしまっていること。

    ⇓

欲を離れた恋そのものも道の妨げ

 

 

    ⇓

    ⇓

    ⇓

▼〈打ち倒そうとする「私」

 

〇「私」は他流試合でもする人のようにKを

注意して見ていた。

  ☆Kを敵対視し打ち倒そうとばかり考える「私」の心中の比喩。

   ←利己主義の心(エゴ)→いつもは優し

いが、お嬢さんがらみだと。

    ⇓

 「私」=五分の隙間もないように用意

  K =穴だらけ・開け放し・無用心

(友人を信用しての相談)

    ⇓

 

要塞(敵から身を守る砦)の地図をゆっくり

眺めることができた。(←暗喩)

  ☆敵として打ち倒そうという思いがある、

相手の心の中を自分の手中にしていた事を示す。

    ⇓

〇Kは理想と現実の間に彷徨(目的もなくさま

よう)していた。

  ☆理想→道のためにはすべてを犠牲にすべきという第一信条に従って

求道一筋に生きること。

   現実→道の妨げとなる

お嬢さんへの恋慕の情にとらわれてしまっていること。

    ⇓

 ・精進→摂欲や禁欲はむろん欲を離れた恋そ

のものでも道の妨げになる。

(道を究めるという第一信条)

    ⇓

    

〇「私」は彼の虚につけ込んだ

    ⇓

    ⇓

 ⑴急に厳粛な改まった態度

⑵「精神的に向上心のない者はばかだ

⑶復讐以上に残酷な意味

  ☆⑴策略後ろめたさを隠し

信憑性を高める)

  ☆⑵⑶第一信条を貫かせ

恋の行く手を塞ぐ

    ⇓(理想に反する恋に陥る矛盾の指摘)

矛盾を指摘窮地に追い込む最も辛い言葉

 

 

 

 

 

 

 

    ⇓

〇「私」の利己心の発現(→エゴから出た言葉)

    ⇓

 ⑴せっかく積み上げた過去を蹴散らしたので

なく、⑵「私」の利害と衝突するのを恐れた

  ☆⑴第一信条を守り、精神的に向上することを求めてきた過去

  ☆⑵お嬢さんへの恋の成就(実現)

 

 

 

 

 

 

 

〇「私」は彼の虚無防備な状態につけ込ん

。→ただ一打ちで倒すことができるだろう。

    ⇓         (←劣等感・敵意)

 「私」は彼に向かって急に⑴厳粛な改まった

態度を示し、(→策略)⑵「精神的に向上心のない者はばかだ」と言い放った。 これは…復讐以上に⑶残酷な意味を持っていた。

  ☆⑴後ろめたさを隠して、信憑性を高める。

   →真剣すぎて自分に滑稽・羞恥を感ずる余裕はない。

  ☆⑵⑶この言葉を「私」の発した意図

   →Kの前に横たわる恋の行く手を塞ごう

とした。

   →Kの積み上げてきた過去を、今まで通り積み重ねてゆかせようとした。

   (Kに第一信条を貫かせることによって、お嬢さんとの恋を諦めさせる意図

   ⇓(道を究める本来の生き方に戻らせる)

矛盾を指摘窮地に追い込む最も辛い言葉

    ⇓

〇「私」の利己心の発現(→エゴから出た言葉)

    ⇓

 ⑴せっかく積み上げた過去を蹴散らしたので

なく、⑵「私」の利害と衝突するのを恐れた

  ☆⑴第一信条を守り、精神的に向上することを求めてきた過去

   →今までの生き方に誇りを持ち、厳しく自己を律してきた。

  ☆⑵お嬢さんへの恋の成就(実現)

    ⇑

 遺書を書いている「現在」の視点からの考察

 

 

 

〇「私」は同じ言葉を繰り返した。

 

    ⇓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼(Kの覚悟に対する「私」の認識

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇「私」は同じ言葉を繰り返し、その言葉がK にどう影響するかを見つめた。

    ⇓

〇Kが⑴「僕はばかだ」と繰り返し、立ち止まったままであるのを見て、Kが⑵居直り強盗のごとく感ぜられた。(←直喩)

  ☆⑴第一信条に基づいて生きるべきだった

  ☆⑵どうせ恋に落ちた馬鹿者なら、いっそのこと落ちる所まで落ちようと開き直り、(精神的に向上する心を捨てて、否定していたはずの)お嬢さんへの恋に進むのではないかと感じられた。

    ⇓

=「私」は思わずぎょっとする。

    ⇓

 しかし、Kの声がいかにも力に乏しい

   (→疑心暗鬼から来る言葉の捉え間違い

 

 

Kの覚悟に対する「私」の認識

(「私」のKに対する認識と覚悟)