left★原文・現代語訳★
【二】<男をもてなせず嘆く女>
時々来る男来たりけるに、雨に降りこめられて居たるに、「いかにして物を食はせむ」と思ひ歎けど、すべき方もなし。日も暮れ方になりぬ。
=偶に通って来る男が来た時に、雨が降って外に出ら
れず男が家に居たので、「どのようにして男に食事
させようか」と女は心で歎くが、どうすることもで
きない。日も暮れてきた。
いとほしくいみじくて、「わが頼み奉りたる観音、助け給へ」と思ふ程に、わが親のありし世に使はれし女従者、いときよげなる食物を持て来たり。
=女はそんな自分が気の毒に思われてたまらず、「私
が頼みにし申し上げている観音様、お助け下さい」
と思っていると、自分の親が生きていた頃に使われ
ていた侍女が、たいそう美味しそうな食べ物を持っ
て来た。
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right★補足・文法★
・雨に降りこめられる=雨が降って外に出られない
・いとほし=気の毒だ
・程(名詞)+に(格助詞)=…すると・するうちに
・清げなり=きちんと整って美しい様子だ
(食べ物が)美味しそうだ
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