(先生の現代文授業ノート)橋本 治「敬語への自覚・他者への自覚」
left★板書(+補足)★
「現代文授業ノート」(普通クラス)
   橋本 治「敬語への自覚・他者への自覚」

〈出典〉
○『毎日新聞』(2000年9/4夕刊)

〈概要〉
〇言語論・社会論(他者論?)
〇大都会の若者言葉は、限られた範囲内でしか通用し
 ない方言の一種で他者に説明する言語の機能を欠い
 いており、修復するには他者との距離や敬語の自覚
 が必要である            (→要旨)


〈全体の構成〉         (→要約→要旨)

【一】他者との距離と言葉
                    (導入)
 @他者との距離と敬語
 A他者に対する共通語と方言

【二】都会の若者言葉
                   (展開@)
【三】家庭での共通語使用
                   (展開A)
【四】他者と敬語の自覚
                    (結論)

〈授業の展開〉

【一】他者との距離と言葉
                 (導入→結論)
@<他者との距離と敬語>

◎自己と<他者との間には親疎の距離>がある
      【自己】←→【他者】
         <距離>……親(密)or疎(遠)
           ↓
        ・相応しい接し方
        ・  〃 言葉遣い
    ↓   (距離の存在を再認識する為)
(1)相手との人間関係を尊重する
   <敬語の存在を自覚>すべき
    ↑           距離→敬語の発生
    ↓
(2)<敬語は距離を設定>する
      【自己】←→【他者】
         <距離>
      @発生↓  ↑A設定
         <敬語>
  ・必要以上に敬語を使用→相手と疎遠(水臭く)
     →相手と仲良くするには、同じ言葉を使用
    ↓
  ※パラドックス(逆説的表現=矛盾→真理)
   →異常な程に相手を尊重する日本の敬語が
    相手を遠ざけたい思いを表現する
    ↓
 他者との間には距離が存在する事と
 距離を表現する敬語が存在する事を自覚すべき

A<他者に対する共通語と方言>

○言葉は、自己と外側の間に存在
    (自分の側にも自分の外側にも存在しない)
      【自己】←→【外側】(周囲の人)
         <言葉>
           ↓
        ・自己と外側(の人)をつなぐ
        ・人とコミュニケーション
○言葉の種類
 ×モノローグ
  ・自己の内側に向けた独り言
 〇方言
  (@)地域の(内側に向けた)モノローグ
  (A)限られた範囲の内側に向けた言葉
    ↓    (友人など)
  ・(仲間内で)<自己を濃厚に語る>言葉
    ↓↑
 ◎共通語        (=標準語+丁寧語?)
  ・<距離が存在する他者と交流>する言葉
  ・<他者に重点>→自己は希薄になる言葉
    ↓
◎自己を濃厚にと他者に対し方言で語ろうとしても、
 (距離のある他者と交流する)共通語とは違うから
 矛盾がある
    ↓
   =距離が存在する<他者に対しては>
    他者に重点を置いた<共通語で語る>べきだ

▼〈段落まとめ〉
人との間には親疎の距離があるから、人間関係を尊重 して間の距離も設定する敬語が存在する事を自覚し、 距離が存在する他者に対しては方言ではなく、他者に 重点を置いた共通語で語るべきだ。

【二】都会の若者言葉
                (展開@…考察)
〇大都会の真ん中で語られる若者言葉
    ↓
 ・<方言の一種>
  =限られた範囲(の内側)で流通
  (親しい仲間同士)
    ↓
 ・安心感(仲間と同じ言葉を共有)
    ↓↑
<しかし>
言葉の罠(問題点)
 ・同質の人間ばかり
    ↓
  =他者が存在しない  (←他者=距離が存在)
    ↓
 ・他者に対して語るという
  <言葉の機能が欠落>
        ↓
        大都会の真ん中で特殊な言葉が流通
        ↑
<なぜか>
<自己を濃厚に語りたい>という欲求があるから
    →(なぜその欲求が生じたのか→次の段落)

▼〈段落まとめ〉
大都会で仲間内だけで流通する方言のような若者言葉 があり、距離のある他者が存在しない為に相手に重点 を置いて共通語で説明する言葉の機能が欠落している のは、彼等に自己を濃厚にという欲求があるからだ。

【三】家庭での共通語使用
                   (展開A)
〇戦後、<家庭で共通語>を使用
 ・親が子供に共通語 (丁寧語という敬語を使用)
           →教育を自覚→先生のように
    ↓
  距離を設定
    ↓
  親子の間に溝      (→他人行儀・疎遠)
    ↓
  溝を解消したい
    ↓
〇都会の真ん中に方言を求めて
 親しい仲間同士で若者言葉を用い
 自己を濃厚に語る
           →安心感(同じ言葉を語る)

▼〈段落まとめ〉
戦後、家庭で親が子に共通語を使用するようになって 親子の間に他人行儀な溝が生じてしまった為、寂しさ を解消しようと若者たちは都会の真ん中に仲間内だけ で流通する方言を求め、自己を濃厚に語ろうとした。

【四】他者と敬語の自覚
                    (結論)
〇戦後、子供の頃に共通語
    成長してから方言を使用
    ↓         (かつての日本と逆)
 語るべき   自己が肥大化
 重点を置くべき他者が希薄化
    ↓
 =言葉の機能・日本社会が劣化
    ↓
◎修復する為には
 距離がある<他者が存在する>事を自覚し
 その為に <敬語が存在する>事を自覚すべきだ

▼〈段落まとめ〉
自己を濃厚に語りたい欲求ばかりが大きくなり、距離 が存在する他者に重点を置き共通語で説明できない、 今日の日本の言葉と社会の劣化を修復するには、他者 の存在とその為の敬語が存在する事を自覚すべきだ。

〈要約360字=24×16〉
人の間には親疎の距離が存在し、人間関係を尊重する 敬語が存在する事を自覚して、距離が存在する他者に 対しては方言ではなく、他者に重点を置いた共通語で 語るべきだ。
しかし、都会には方言のように他者が存在せず仲間内 だけで流通する、相手に重点を置いて共通語で説明す るという言葉の機能が欠落した若者言葉がある。
戦後、家庭で共通語を使用するようになって親子の間 に溝が生じてしまい、寂しさを解消しようと若者たち が都会の真ん中に仲間内だけで流通する方言を求めて 自己を濃厚に語ろうとしたからだ。
このような自己を濃厚に語りたい欲求ばかりが大きく 他者に重点を置いて共通語で説明できない若者が増え つつあるが、このような今日の日本の言葉と社会の劣 化を修復するには、他者の存在とその為の敬語が存在 する事を自覚すべきだ。
right★発問☆解説ノート★
(評論)2016年5月(2018年11月改)


〈筆者〉1948(昭和23)〜
・小説家・イラストレーター
・著書→『桃尻娘』『窯変源氏物語』など




























☆「壁ドン」「教会の結婚式での指輪交換」等の場合
 相手との間の距離はどういうものか


☆面接試験・駅で道を尋ねられた時・校長との話では
 方言or敬語のどちらで語るか


距離がある他者に対しては敬語で語るべきだ


・敬語・共通語の使用→人間関係=距離を表現




・他人行儀


・パラドックス=一見真理に反し矛盾しているようで
(よく考えると)実は一種の真理を表している表現
 →「急がば回れ」など

距離のない相手(友人など)とは同じ言葉で話し、
 距離のある他者に対しては敬語で語るべきだ



★言葉は、会話を通して人と交流するためのもの








←→ダイアローグ=対話・対談・会話
        (人物の言葉のやりとり)

★限られた範囲で流通→<親しい仲間同士の言葉>
 →距離がある他者に対して使用する言葉ではない
 →面接試験などでは、方言で語らない
・自己の存在を主張・確認して、相手と親密になる

「他者」=「距離がある人」←→ ×「親密な人」
☆友達同士などでは、他人行儀な共通語ではなく、
 方言で話す
・全て東京に一極集中するのに対し、「方言の時代」
 「方言の復権」等と良さがアピールされたりするが
☆面接試験・校長との話・駅で道を尋ねられた時は、
 親しくなりたくても、方言で語るべきではない
       (親しい間柄)   (距離の存在)
【自己】→→→→【友人など】→→→→【他者】
          方言〇      方言×
        共通語・敬語×  共通語・敬語〇

※人との間には距離が存在し、それを表現する敬語が 存在する事を自覚し、他者に対しては距離を意識して 他者に重点を置いた共通語で語るべきだ。



・渋谷界隈(カイワイ)
 →界隈=その辺り一帯・付近

・地方での方言も、同じ地域で同じ言葉を語る仲間
 という親近感・安心感がある

・仲間同士で自己を濃厚に語り、相手と親密になる


言葉の機能親しい交流・意思の伝達・正確な説明
 →友との会話・教科書・新聞の記述、ニュース解説


同質の仲間内で方言で自己ばかり語っているから、
 第三者(距離がある他者)に対しては、相手に重点
 を置いた(理解し易い)共通語での説明ができず、
 言葉の機能を欠いている
☆大都会であれば、全ての人に通じる言葉が語られて
 いる筈なのに、限られた若者の仲間内だけで流通
















・敬語は、距離から発生し、距離を設定

・親子の間に溝は本来ない
















・子供の頃は方言を、成長してから共通語を使用した
 かつての日本とは逆

★仲間同士で自己を濃厚に語りたいとの欲求ばかりが
 大きくなり、              第三者
 (距離が存在する他者)に対しては、相手に重点を
 置いて共通語で説明する事ができなくなっている

☆人との間には親疎の距離が存在し、距離から敬語が
 発生
し、逆に敬語が距離を設定する事、  つまり
 距離がある他者が存在する事と距離を表現する敬語
 が存在する事を自覚し、他者に対しては相手に重点
 を置いて共通語(敬語を含む)で語るべきだ。





〈要旨50字=24×2〉

貴方は人目の訪問者です。