left★原文・現代語訳(板書)★  
「古典現代語訳ノート」(普通クラス)
   (漢詩) 王 維

〈出典=『唐詩選』〉
・明の李攀竜(1514〜1570)の編
・唐代の詩465首を詩体別に集めた書物

〈作者〉
・699?〜761?年 盛唐の詩人、字は摩詰
 →熱心な仏教徒。釈迦の弟子 維摩詰(ユイマキツ)に因む
・詩仙(李白)・詩聖(杜甫)に対し
 詩仏と称せられる
・孟浩然・柳宗元と並び、自然詩人をして知られる
 →南画の祖でもあり、
 「画中に詩あり、詩中に画あり」と評される

right★補足・文法(発問)★        
(漢詩)2019年5月(2022年1月改)



・『唐詩選』は李白・杜甫を初め
 初唐・盛唐の詩を重んずる

〈作者…補足〉
・字=成人した男子に本名以外に付ける(呼び)名
  (本名を呼ぶのは、親や先生など限られた人で、
   友人などは字で呼んでいた)
・李白や杜甫の二人とは違って、若くして科挙に合格  し、官僚として順調な日々を送る。また、絵・書・  音楽にも才能を発揮し、宮廷詩人として活躍する


left★原文・現代語訳★  
〈漢詩の基礎〉
〇漢詩(近体詩)の形式
 ・絶句(四句) 五言絶句 (五字の句×四句)
         七言絶句 (七字の句×四句)
 ・律詩(八句) 五言律詩 (五字の句×八句)
         七言律詩 (七字の句×八句)
〇漢詩の構成
 ・絶句(四句) 起・承・転・結
 ・律詩(八句) 首聯・頷聯・頸聯・尾聯

押印(韻を踏む)
 =句末に同じ響きの語を置き、リズム音楽性を出す
 ・五言詩→偶数句末
 ・七言詩→偶数句末と第一句末(但し、例外あり)

対句(表現)
 2つの句・文などで
 ・文法構造・字数が同じ ・内容・語感が対応
 ※律詩では頷聯(第三・四句)と頸聯(第五・六句)

right★補足・文法★        
〈参考〉…唐詩の歴史区分
初唐 唐成立 (618年)〜    (7世紀)
盛唐 玄宗皇帝〜安史の乱    (8世紀前半)
中唐 安史の乱〜  (8世紀後半〜9世紀初頭)
晩唐 〜唐滅亡 (907年)    (9世紀)


全体の構成 @(起句) A(承句)
B(転句) C(結句)
left★原文・現代語訳★
  竹里館    王維
   竹里館
   =(竹林の中の)竹里館(という建物)にて

(起句)
  独坐 幽篁裏
   独り坐す幽篁(ユウコウ)の裏(ウチ)
   =独りで世間から離れて
    ひっそりとした竹林の中に座り、

(承句)

  弾琴 復長嘯
   琴(キン)を弾じて復(マタ)長嘯(チョウショウす
   =琴を弾いたり(そして)
    声を長く伸ばして詩を歌ったりする。

(転句)

  深林 人不知
   深林人知らず
   =深い竹林の中なので
    誰も(私がここにいることを)知らない。

(結句)

  明月 来相照
   明月来たりて相照らす
   =明月の光が訪れて降り注ぎ
    私を照らしている。

right★補足・文法★        
・竹里館=竹林の中の建物の名
     王維が長安の東南に位置する山脈の懐の地
     に所有していた広大な別荘の一つ


・幽=暗くて見えない、奥深く(静かだ)
   世間から離れてひっそりしている
・篁=(たかむら)竹藪、竹林



・復=ならびに、それに、その上(並列、添加)
・嘯=口をすぼめて声を出す
   声を長くのばして詩歌をうたう









・月は孤独の人を慰めるものとしてしばしば歌われる
・相=(対象→「私を」or「互いに」?)



left★原文・現代語訳★
〈要約〉
▼山中の優雅で風流な隠居生活を歌った詩である。

〈概要・表現〉
五言絶句(五字の句×四句)
押韻→嘯・照

王維「竹里館」(朗読)
コレルリ「ソナタト短調」
ヘンデル「協奏曲ト短調」

right★補足・文法★    


全体の構成 @(起句) A(承句)
B(転句) C(結句)
left★原文・現代語訳★
  送元二使安西    王維
   元二(ゲンジ)の安西(アンセイ)に使ひするを送る
   =元二が安西都護府に
    使者として旅立つのを見送る

(起句)
  渭 城 朝 雨  ?(潤) 軽 塵
   渭城(イジョウ)の朝雨 軽塵(ケイジン)を潤(ウルホ)し
   =(送別の地、この)渭城に降った朝の雨が、     軽く舞い上がる(通りの)土埃を(しっとりと)     潤し(てくれ)、

(承句)

  客 舎 青 青  柳 色 新
   客舎青青柳色新たなり
   =旅館の(周囲に見える)青々とした柳の色は     (雨に洗われ)一際みずみずしい(鮮やかだ)。

(転句)

  勧 君 更 尽  一 杯 酒
   君に勧む 更に尽くせ一杯の酒
   =(さあ)君に勧めよう、もう一杯(この)酒を     (酌み交わし)飲み干してくれ。

(結句)

  西 出 陽 関  無 故 人
   西のかた 陽関を出づれば 故人無からん
   =(ここから旅立ち)西の果ての(関所である)     陽関を出てしまえば、(もう共に飲み交わす     ような)知る友もいなくなる(だろう)から。

right★補足・文法★        
・元二=誰かは未詳。姓は元。
    二は排行(一族の同世代の男子の出生順序)
・安西=安西都護府(新疆ウィグル自治区クチャ)。
    西域を管理する政府機関。砂漠の中にある


・渭城=長安と渭水を挟んで北側にある咸陽のこと。     西域に旅立つ見送る際ここで別れるのが常。
・?(潤)=潤す、湿らせる
 (西域に通じる道は馬車が行き交い埃を立てていた   が、雨はそれを清々しく洗い流してくれる)


・客舎=旅館、宿屋、旅行客の宿泊所
・新=新鮮である、生き生きとしている




★惜別の杯を何度酌み交わしても、名残は尽きない。
 一度別れれば、いつまた会えるか分からない時代で
 あり、少しでも後に別れを延ばしたい辛さが、表現
 されている。


・陽関=甘粛省敦煌の西南で、西域に通じる関所。
    この先は砂漠が果てしなく続く荒野であった
・故人=古くからの友人、旧友



left★原文・現代語訳★
〈要約〉
▼長安の北西にある渭城の宿で、青々とした柳の色が  みずみずしい朝、西の果てにある安西に親友の元二  が使者として旅立つのを見送る、王維の惜別の情を  詠んだ詩

〈概要・表現〉
七言絶句(五字の句×四句)
押韻→塵・新・人

〈鑑賞〉
親友の元二との別れを読んだ詩である。元二が公用で 最果ての地である安西に旅立つ前日に、渭城の旅館で 酒を酌み交わすが、いざ出発の朝ともなると、別れが 限りなく名残惜しく「最後にもう一杯酌み交わそう」 と元二に杯を勧めているのだ。当時、唐は絶頂であり 西域との交流も盛んで、送別の場面は多くあったが、 友人との別れと言えば、必ずこの詩が吟詠されたそう である。


right★補足・文法★    
〈参考〉
柳は、枝が長く伸びて地面に垂れ下がるから,「再び 無事に戻って来る」という意味を持ち、柳の枝を一本 折って枝を丸く輪にして、旅人に贈り無事を祈る習慣 があったと言われている。
王維「送元二使安西」(YouTube 解説)
王維「送元二使安西」(YouTube 解説)


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