left★板書★
「現代文授業ノート」(普通クラス)
加茂直樹「環境と人間/環境保護の意味」
〈作品=「環境と人間」〉
〇環境論(「環境思想を学ぶ人のために」所収)
○社会科学の観点から、環境と人間の関係
及び現代の文明や社会などについて論述
〈概要〉
〇自然と生態系の概念を述べ、
生態系は守るべき価値があるという倫理的な義務が
人間にあるとは断定できない、と述べる(→要旨)
〈全体の構成〉 (→要約→要旨)
【一】それ自体は価値がない自然
(序論…導入)
〇自然の概念
・それ自体は【価値がない】
・因果的・機械論的に把握される世界
・人間も自然の一部→人為と自然の対立はない
(人為は自然に反するものではない)
↓
・人為による自然破壊はありえないはず
〈段落まとめ〉
自然は、それ自体は因果的・機械論的に把握されるべき価値を含まない世界であって、人間も自然の一部だから人為と自然の対立はなく、人為による自然破壊というようなことはありえないはずだ。
【二】人間との関連で価値が生じる自然
(本論@)
〇「自然を守れ」というスローガン
↓ (意味がない→意味を与えるには)
人為による改変→自然の価値評価の必要
↓
・極端な立場=人為の改変ゼロ→最善(?)
(人跡未踏の原野・原生林)
↓↑しかし
・自然に【ある程度の人為による改変】
↓
生存を可能
↓
文明の歴史を築く
↓
人間の守るべき自然は、手つかずの自然ではなく
人為により生存しやすい自然
↓
〇人間との関連づけによって
【自然は守るべき価値】を付与される
〈段落まとめ〉
人間は、その自然にある程度の人為による改変を加えることで生存を可能にし、文明の歴史を築いてきた。即ち、自然は人間との関連づけによって守るべき価値を付与されるのだ。
【三】自然界における生態系の価値と倫理
(本論A…問題提起)
<では>自然界における
生態系に守るべき価値はあるのか
↓
〇生態系の概念(定義)
・平衡状態と生物種の多様性を保つことが重要
↑ (生態系の安定)
・人為による過度の干渉は安定を乱す
↓
<ある考え方>
生態系の概念には【守るべき価値】が含まれ
【倫理規範を根拠づける】(という考え方がある)
↓↑しかし
<筆者の考え方>
★【これは妥当か】(→妥当ではない)
〈段落まとめ〉
一方、自然界における生態系は、平衡状態と生物種の多様性を保つことが重要で、人為による過度の干渉があれば安定が乱されるとの定義に対し、生態系の維持自体に守るべき価値が含まれており倫理規範を根拠づけるという考え方もあるが、これは妥当か。
【四】根拠がない人間の倫理的義務
(結論)
<この点に関して→根拠>
@生態系→人間の道徳共同体と異なる
↓
他の生物には、【責任を問えず】
(生態系の安定を乱しても)
A守られるべきは種、個体ではない
↓
種の存続のため、【個の犠牲】が要求される
↓↑
人間社会の倫理を適用できず
↓
<以上の考察より>
生態系そのものに価値があると言えず
(生態系の概念に豊かな内容が含まれていても)
↓従って
生態系は価値があるので守るべきだという
【倫理規範を人間に義務づける根拠】がある
とは【断定できない】
〈段落まとめ〉
生態系では、人間の道徳共同体と異なり、他の生物に責任を問うことはできず、守られるべきは種であり個体ではないのだから、人間がどう生きるべきかを指示する人間社会の倫理を適用することはできない。従って生態系は価値があるので守るべきだという倫理規範を人間に義務づける根拠があるとは断定できない。
〈二百字要約〉
自然はそれ自体は価値を含まない世界であり、人間も自然の一部だから、人為による自然破壊というようなことはありえないはずだ。
人間がある程度の人為による改変を加え、生存を可能にし文明を築いてきたのであり、自然は人間との関連づけによって守るべき価値を付与されると言える。
一方、自然界の生態系は、平衡状態と生物種の多様性を保つことが重要で、人為による過度の干渉は安定を乱すとの定義に対し、生態系の維持には守るべき価値が含まれ倫理規範を根拠づけるという考え方がある。これは妥当か。
生態系は人間の道徳共同体と異なり他の生物に責任を問えず、守られるべきは種であり個体ではないのだから、人間社会の倫理を適用することはできない。従って、生態系は価値があり守るべき倫理的義務が人間にあるとの根拠があるとは断定できない。
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right★補足・発問(答)★
(評論)2018年1月
〈作者〉
・社会科学者
・個人の権利や自由・統御する社会規範について
法と道徳を通して追及・問題提起
・概念=共通する要素を取り出して作られた考え
ある物事に対する一般的な印象・イメージ
→…の概念→…ということ・もの・言葉
・近代の自然科学的な見方
・因果的=全てが原因と結果の必然的な関係で成立
・機械論的=感情や意思を持たず
機械のように一定の法則で動作
☆因果的・機械論的=何事も必ず原因があり、それに
応じて機械的に一定の結果が出る、という考え方
→原因と結果の必然的な関係で、機械のように
関連付けられた、様々な単なるものの集合体
・スローガン=主義・主張を簡潔に表現した言葉
☆自然は、それ自体は価値がない
☆人間(自分)との関係で、価値が評価される
☆人為の改変ゼロを最善とするのは
人類の文明の歴史を否定することになる
・筆者は、ある程度の人為による改変を肯定
・人間との関連づけ=ある程度の人為による改変
・自然は、元来は没価値的な概念だが
・前半(一段〜二段)は自然の概念と価値について
後半は生態系の概念と価値・倫理について述べる
・系=ある関係をもってつながりをなすもの
・生態=自然界で生物が生活している状態
→生態系=自然界で様々な生物があるつながりを
もって生息している状態=エコシステム
・システム=秩序だった方法・組織
・食物連鎖の平衡状態
・生物種の絶滅・生存に不適切な環境
☆生物共同体の構成員としての人間には
生態系の安定を維持するよう努める義務がある
→生態系を守るべき倫理的義務が人間にはある
・妥当=扱い・判断が正当であること
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|☆生態系の概念から、倫理規範の導出は妥当か|
| →以下に筆者の主張?? |
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☆生物共同体を構成する
・他の生物→権利・義務の意識はない
・人間は特異→生態系の安定を大きく乱す可能性
反省して責任を感ずる能力
→人間だけが倫理的義務??
☆生態系の安定と平衡は
種のレベルでは巨視的には共存関係に見えても
個のレベルでは弱肉強食の食物連鎖によって成立
・巨視的=全体的に物事を見て判断
☆人間がどう生きるべきかを指示・個人の生命の尊重
☆豊か←生態系の安定と平衡の維持
☆生態系を守るべき
倫理的義務が人間にはあるとは言えず
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