left★板書(+発問)★   
(先生の授業ノート……普通クラス)
   梶井基次郎 「檸檬」

〈作品〉
大正14年(1925))(21歳)
 創刊した同人誌「青空」に発表

〈作者〉
〇明治34(1901)〜昭和7年(11932)
○第三高校時代から文学に傾倒
 鋭敏な感受性が捉えた世界を詩的に描いた短編小説
 作品を発表
〇新興芸術派(昭和初め)
○作品 「城のある町にて」「桜の樹の下には」     「闇の絵巻」など

〈概要〉(……参考資料「浜島 国語便覧」)
〇孤独感を描く鋭敏な感受性
自分を押さえつける現実から脱した喜びの感覚を
 描いた。

 「不吉な魂」に悩まされる「私」はレモンで元気に
 になるが、それを爆弾に見立て、爆発するその瞬間
 を想像する。

right★補足(+解説)★   
(小説)2024年1月





〈作者補足〉
・1919(大正8)年、三高理科に入学。
・夏目漱石・谷崎潤一郎・白樺派の文学を読み、文学  に目覚めた。
・翌年には、終生生活と文学を支配した肺結核の前兆
 が姿を現している。
・この時期、文学の他、音楽にも熱中、授業は欠席、  遊興にひたる退廃的な生活を送った。


全体の構成 【一】(起)えたいの知れない不吉な塊
【二】(承)街を歩きながら足を留めた果物屋
【三】(転)一つだけ買った檸檬との出会い
【四】(結)檸檬による丸善大爆発の想像
left★板書(+発問)★   
〈小説の舞台設定…場面・人物の設定5W1H〉
 (いつ)   (大正末期の)学生時代
 (どこで)  京都の街で
 (誰が)   (作者の分身である)一人の学生が
 (何を)   果物屋で一つの檸檬を買って
 (どうした) 想像して幸福な気持ちになっていた
   ↑
 (なぜ)   檸檬は憂鬱な現実を紛らすから
right★補足(+解説)★   
〈小説の枠組〉

                ↑
              <時代>
        ←←<場所>【人物】<場所>→→
              <時代>
                ↓

left★板書(+発問)★   
〈授業の展開〉

【一】(起)<えたいの知れない不吉な塊>
                    (導入)
(生活が荒れていた頃の事を回想)
▼「私」は<えたいの知れない不吉な塊>
 始終心をおさえつけられていた  (焦燥・嫌悪)
        ↑        (憂鬱な現実)
      ・肺尖(肺結核の初期症状)
      ・貧乏
    ↓ ・優越意識の喪失(?)
 ・何かがいたたたまらずさせ   (…不吉な塊)
 ・いつも<街から街を浮浪>し続けていた
    ↓
<みすぼらしくて美しいもの>に心惹かれ
 京都の街を歩く

〇ずっと離れた場所にいるという
 <錯覚>を起こそうと努め
 <想像>して           (その中に)
 <現実の私自身を見失うのを楽しんだ>
     (頭の中の遠くの街と、京都の裏通りとを       二重写しにした想像の中で、現実の自分       が存在しているという実感を失うこと)
           (自分を取り巻く焦燥・嫌悪
            =現実から逃れたいから)

無気力な私の触覚に寧ろ媚びてくるものに心が傾く
      =落魄れた私は無気力で、以前のように
       積極的に美しいもののありかを探して
       浸ることができず、現在の陰鬱な気分
       を慰めてくれるような事物へ心が傾く
 ・様々な花火
 ・ビイドロのおはじき・南京玉
  →幼児期の甘い記憶
 ・少しの贅沢(…金がない)
  →慰め

<丸善>は(その頃は)気の重い場所
 →借金取りの亡霊
    ↓↑
 以前は心を惹かれる
 →洒落た雑貨

▼〈まとめ〉
不吉な塊が心をおさえつけ、いたたまれず街から街を 浮浪して、みすぼらしくて美しいものにひきつけられ ながら、錯覚を起こして想像し、現実の自分を見失う のを楽しんだ。

right★補足(+解説)★   




・作者の分身である京都第三高等学校の一人の学生が  退廃的な日々を回想























みすぼらしくて美しいものに心惹かれる








・丸善=明治になり新しい知識を得ようと知的好奇心     の旺盛な知識人に、洋書・文化雑貨を紹介・     提供した店









left★板書(+発問)★   
【二】(承)<街を歩きながら足を留めた果物屋>
                   (展開@)
〇友達の下宿を転々として暮らす
 ・借金取りの存在

〇ある朝、街から街へと歩きながら、
 ある果物屋で足を留めた
 ・色彩やボリュームに凝り固まったように並ぶ
  果物屋特有の美しさの眺めが興がらせた
 ・暗い店
        →視覚的な表現を多用し、          光の効果を巧みに描いている
         (暗いながらも生命感がある?)
 ・外の喫茶店からも眺める

▼〈まとめ〉
友達の下宿を転々として暮らしていたある朝、街から 街へと歩きながら、ある果物屋で足を留めた。色彩や ボリュームに凝り固まったように並んでいる果物屋特 有の美しさの眺めが興がらせたからだ。

right★補足(+解説)★        





















left★板書(+発問)★   
【三】(転)<一つだけ買った檸檬との出会い>
                   (展開A)
〇その店で檸檬を一つだけ買った
 ・心を抑えつけていた不吉な塊・しつこい憂鬱
  たった<一個の果物が紛らす>  (取り去る)
     =憂鬱が緩んで非常に幸福になり、檸檬の       新鮮な感覚(冷覚・触覚・嗅覚・視覚)       が自分の中の元気を目覚めさせてくれた
    ↓       (逆説的な本当であった)
幸福に包まれた「私」は
 誇らしい気持ちを感じながら
 美的装束をして闊歩した詩人に
 自分を重ねて往来を歩いた
    ↑
〇檸檬は全ての善いものや美しいもの
 重量に換算した重さであると考えた
 ・思いあがった諧謔心からそんなばかげたことを考   えてみたりする




▼〈まとめ〉
その店で檸檬を一つ買った「私」は。始終心を押さえ つけていた不吉な塊や憂鬱を、たった一個の果物で紛 らすことができ、非常に幸福であった。そして檸檬は 全ての善いものや美しいものを重量に換算した重さで あると考えた。

right★補足(+解説)★   














・諧謔=戯れ、冗談、おどけた滑稽なこと
・檸檬こそ自分の求める全ての尊いものと美しいもの  を具現しているという感覚に浸っている












left★板書(+発問)★   
【四】(結)<檸檬による丸善大爆発の想像>
                    (結び)
〇いつも避けていた丸善も、
 易々と入れるように思えた(檸檬のおかげで)
 ・檸檬のお蔭で、憂鬱が紛らされ、軽やかな昂奮と
  誇りかな気持ちに包まれていた

<しかし>
<幸福>な感情はだんだん逃げて行き
 <憂鬱>になってしまう  (気の重い場所)
    ・以前は画本を晒し終わり、あまりの尋常な      周囲を見回すときの気持ちを好んでいたが
     =画本の世界に浸った後で、現実の風景を       見た落差を奇妙に感じられる気持ち
        ↑↓
  、 ・画本を本棚から抜き出しパラパラめくると
     、元の位置に戻すこともできない
    ・本棚から抜き出しては積み重ねた
     本の群れを眺めていた。
    ↓
〇その時、檸檬を憶い出し、
 積み上げた本の頂きにその檸檬を据え付けて
 この檸檬で試してみたら
   =檸檬が自分の憂鬱を取り去ってくれたように     色彩をゴチャゴチャに積み上げた本に対して     どのような力を発揮するかを試してみたい
 <幻想>すると、軽やかな<昂奮>が帰ってきた
   =本の色彩を積み上げて、奇怪な幻想的な
    <城>を築き、頂に檸檬を置いた
    ↓
〇更に黄金色に輝く爆弾を仕掛け
 十分後には<丸善が大爆発>する
 と想像すると<幸福な気分>になる
     =そして檸檬を黄金色に輝く恐ろしい
      <爆弾>に見立てて、丸善を破壊する
      想像をめぐらせた
 ・この想像を熱心に追求した
   =それまでの自分の価値基準であった丸善を、     爆弾に見立てた檸檬で破壊する想像によって     憂鬱を解消したいと思っている

〇映画の看板が並ぶ京極通りを歩いた

▼〈まとめ〉
いつも避けていた丸善も、易々と入れる気がしたが、
幸福な感情はだんだん逃げて行って憂鬱になってしま
い、本棚から抜き出しては積み重ねた本の群れを眺め ていた。その時、檸檬を憶い出し、積み上げた本の頂 きにその檸檬を据え付けて幻想すると、軽やかな昂奮 が帰ってきた。そして丸善の棚へ黄金色に輝く爆弾を 仕掛けて来て、十分後に丸善が大爆発するという想像 を巡らせた。

right★補足(+解説)★   





















































left★板書(+発問)★   
〈要約〉
不吉な塊が心をおさえつけ、いたたまれず街から街を 浮浪して、みすぼらしくて美しいものにひきつけられ ながら、錯覚を起こして想像し、現実の自分を見失う のを楽しんだ。
友達の下宿を転々として暮らしていたある朝、街から 街へと歩きながら、ある果物屋で足を留めた。色彩や ボリュームに凝り固まったように並んでいる果物屋特 有の美しさの眺めが興がらせたからだ。
その店で檸檬を一つ買った「私」は。始終心を押さえ つけていた不吉な塊や憂鬱を、たった一個の果物で紛 らすことができ、非常に幸福であった。そして檸檬は 全ての善いものや美しいものを重量に換算した重さで あると考えた。
いつも避けていた丸善も、易々と入れる気がしたが、
幸福な感情はだんだん逃げて行って憂鬱になってしま
い、本棚から抜き出しては積み重ねた本の群れを眺め ていた。その時、檸檬を憶い出し、積み上げた本の頂 きにその檸檬を据え付けて幻想すると、軽やかな昂奮 が帰ってきた。そして丸善の棚へ黄金色に輝く爆弾を 仕掛けて来て、十分後に丸善が大爆発するという想像 を巡らせた。


right★補足(+解説)★   


〈補足…参考資料〉

梶井基次郎『檸檬』(YouTube解説)
梶井基次郎『檸檬』(YouTubeアニメ)
         ヘンデル「協奏曲ト短調」
         バッハ「平均律1−24ロ短調」

写真は、ネット上のものを無断で借用しているものも あります。どうぞ宜しくお願い致します。

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