left★板書(+発問)★
〈授業の展開〉
【一】(起)(夫)兼家の浮気の疑惑
さて、九月ばかりになりて、出でにたるほどに、箱の
あるを手まさぐりに開けて見れば、人のもと遣(や)ら
むとしける文あり。
=そうして、九月頃になって、(夫の兼家が家から)
出て(自宅に帰って)しまっていた時に、文箱があ
るのを何気なく開けて見ると、他の人(=女)の所
に書き送ろうとした手紙がある。
あさましさに、見てけりとだに知られむと思ひて、書
きつく。
=驚きあきれて、(せめて私がその手紙を)見てしま
ったと(いうこと)だけでも(兼家に)知られたい
と思って、(紙の余白に歌を)書きつける。
うたがはし ほかに渡せる ふみ見れば
ここやとだえに ならむとすらむ
=疑わしいこと。他(の女の方)に送ろうとする手紙
を見ると、こちら(の私の所に貴方が通って来るの)
は、もう途絶える事になるのでしょうか。
など思ふほどに、むべなう、十月つごもりがたに、
三夜(みよ)しきりて見えぬ時あり。
つれなうて、「しばしこころみるほどに」など、気色
あり。
=などと思っているうちに、案の定、十月の末頃に、
三晩繰り返して姿を見せない時がある。
(兼家は)平然として、「暫く(貴方の気持ちを)
試しているうちに(三日も経ってしまった)。」など
と、思わせぶりな言い訳をする。
▼〈段落まとめ〉
九月頃、(夫)兼家が出て行った時、箱の中に他の女
宛ての手紙を見つけた。疑わしく思っていると、十月
末に三晩続けて姿を見せないことがあった。そして、
私の邸に来ると、貴方の気持ちを試していたなどと、
言い訳をする。
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right★補足(+解説)★
・手弄り=(手先で)何気なく(もてあそぶこと)
・…だに=せめて…だけでも(副助詞)
☆夫の兼家に訴えようとする強い心情が表れている
・うたがはし→シク活用形容詞の語幹用法=詠嘆?
・渡せ(サ四、已)る(存続)
・むべ(うべ)=本当にそうだ、 もっともだ
→むべなし=案の定、思った通り、はたして、予想
していた通りである、(形容詞)
☆夫の気持ちが他の女に移ったらしいことを感づいて
いたが、思った通りそうだった
・頻りて=繰り返して、しきりに
・三夜しきりて見えぬ時あり=当時は結婚する際に、
三晩続けて通う風習があった
・つれなし=素知らぬふうだ、平然としている、
さりげない
・気色有り=趣がある、怪しい、不気味だ
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