left★板書★
「現代文授業ノート」(普通クラス)
松原謙一「遺伝子とゲノム
/多種多彩な生きものの出現」
〈作者〉
・昭和9年(1934)〜
・ヒトゲノムの全文字配列を解読しようとする
日本の遺伝子研究の第一人者
〈作品=「遺伝子とゲノム」〉
〇人類の進化の歴史などを解説
〈概要〉
〇遺伝論
〇環境の変化の中で、生物はゲノムの働きにより生命
を連続させて、今日のような多種多彩な生きものの
世界を出現させた。(→要旨)
〈全体の構成〉 (→要約→要旨)
【一】不変ではない環境とゲノムの働き
(序論…導入・話題提示)
〇ゲノム=(細胞の中にある)遺伝情報の1セット
生物の環境への適応に
極めて重要な働き
↓しかし、
〇環境が絶対不変という保証はない
↓
最適でない環境で(適応という)問題に直面
【二】環境の多少の変化とゲノムによる適応
(本論@)
〇環境の多少の変化に対しては、
↓
適応するダイナミズム(が生き物には備わる)
=ゲノムに記してある指令を読み出して適応
→安定した性質
〇具体例(微生物の適応)
【三】新しい環境と適合する変化ゲノムによる適応
(本論A)
〇(変化する)新しい環境に対しては、
↓
(生物は適応するために、)
↓
元のゲノム集団の中にランダムに作られていた
様々なマイノリティの変わり者たちの中から
↓
新環境に適合できる
変わり者(変化ゲノム)が選ばれて増え、
↓
新たな集団の先祖となる(→生物の適応)
↓
〇その子孫の集団の中に、再び新しい変わり者が
生み出され……と、これが繰り返される
【四】ゲノムの性質と多種多彩な生きものの出現
(結論)
〇変わり者の変化ゲノムを絶えず作り出し選ぶことが
↓
太古から変化を続ける環境の中で、生命を連続させ
↓
今日のような多種多彩な生き物の世界を出現させた
〇ゲノムDNAの安定だが変化する性質による
〈150字要約〉
生き物は、環境の多少の変化に適応できる活力を持っている。しかし、新しい環境に対しては、元の集団の中で予め作られていた変化ゲノムが新環境に適合するものとして選ばれて、新たな集団の元祖ともなる。これが繰り返されて、変化を続ける環境に生命を連続させてきた。ゲノムの安定だが変化する性質が、今日の多種多彩な生き物たちの世界を出現させたのである。
〈用語解説1〉
・遺伝形質=親から子へと自動的に伝わる性質
・遺伝子=遺伝形質を親から子へと伝える物質
の単位。
細長い糸のような物質DNAが遺伝子
の本体をなす。
染色体中に一定の順序で配列されて、転写
と翻訳により各々一つずつのタンパク質の
構造を決定して、その働きにより遺伝形質
を発現し、両親から子孫へ、細胞から細胞
へと伝えられる遺伝因子。
本体は普通DNA(デオキシリボ核酸)
で、染色体上のある長さをもつ特定の区画
をいう。
・DNA=遺伝子の本体で、生物の細胞内で
遺伝情報となるデオキシリボ核酸の略称。
細胞核中に存在し、細胞分裂の際には
染色体となり、子孫細胞に分配される。
アデニン・グアニン・シトシン・チミンの
4 種の塩基を含み、
その配列順序に遺伝情報が含まれる
・染色体=細胞核中に存在し、細胞分裂の際に棒状の
構造体として観察される遺伝情報の担い手。塩基性
色素に濃く染まるところから染色体の名がある。
体細胞は、同じ形をした2つ1対の何組かの常染色
体をと1組の性染色体をもつが、その形と数は生物
の種類によって決まっている。
例えば、ヒトでは常染色体22組44本とXXまた
はXYという性染色体2本の計46本を持つ。
〈用語解説2〉
※遺伝情報と遺伝子の発現について(←進研ゼミ)
ヒトのからだは、1個の受精卵が「細胞分裂」を繰
り返してできた多数の細胞が、多種多様に「分化」
して形づくられている。それぞれの細胞では働いて
いる遺伝子が違っているが、細胞がもっている遺伝
情報は基本的に同じである。
ヒトの体細胞の核には父親由来の染色体「23本」
と母親由来の染色体「23本」、合計「46本」の
染色体がある。
遺伝情報は,染色体のDNAに含まれており、ヒト
では「23本」で1組の染色体のDNAが含む遺伝
情報を「ゲノム」と呼ぶ。
つまり、ヒトの体細胞は「ゲノム」を「2組」持っ
ていることになる。
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right★補足・発問★
(評論)2017年10月
※ゲノムとは
体の細胞の核には、DNA(デオキシリボ核酸)が
存在する。細長い糸のような物質だが、細胞分裂の
際には太い染色体に変化する。DNAを安定に保持
するために生じた構造体で、塩基性の色素に濃く染
まる所からこの名がある。
遺伝子という物質は、この染色体の中に一定の順序
で配列されたある長さを持つ特定の区画のことであ
る。アデニン・グアニン・シトシン・チミンの4種
の塩基を含み、その配列順序に遺伝情報が含まれ、
これに基づいて遺伝形質は先祖から子孫へと自動的
に伝わるのである。
このような遺伝情報の担い手である染色体は、体の
細胞には、2つ1対の何組かの相同染色体と1組の
性染色体があり、その形と数は生物の種類によって
決まっている。人間では相同染色体22組44本と
XXまたはXYという性染色体1組2本、計23組
46本がある。
ゲノムとは、その23本(で1組)の染色体に存在
する全遺伝子(遺伝情報)の1セットを言う。
従って、23本各々が対で46本であれば、人間の
体細胞はゲノムを2セット持っていることになる。
→細胞核の中の染色体(23本が対=46本の半分)
に存在する全遺伝子の1セット
★ゲノムは細胞の中にある遺伝情報の1セットで、
生物の環境への適応に極めて重要な働きをするが、
環境が絶対不変という保証はないので、
最適でない環境でいかに適応するか
という問題に直面する。
・ダイナミズム=活力
★環境の多少の変化にに対しては、
ゲノムに記してある指令を読み出すという
安定した性質により適応する、
ダイナミズムが生き物には備わっている。
・ランダム=無作為に、任意に
→予め、色々な変わり者(変化ゲノム)が
いつも作り出されている
→変わり者は、新しい環境に適応するために
わざわざ作られるのではない
・環境条件の変化要因の違いによって
異なる変わり者(変化ゲノム)が選ばれる
→環境条件の変化要因=光・温度・塩分・乾燥・
食物・捕食者
★新しい環境に対しては、
予めランダムに作られ存在していた
少数派(変わり者)の変化ゲノムの中から、
新環境に適合したものが選ばれて増え、
新たな集団の元祖となって、生物は適応してきた。
これが次々と繰り返されてきたのである。
・DNA=デオキシリボ核酸。遺伝情報源となり、
タンパク質合成に関わる
→ゲノムDNA=細胞核の中のデオキシリボ核酸が
細胞分裂の際に変化した染色体に存在する遺伝
情報の1セット
・安定(性質)=多少の環境の変化には、生き物自身
の活力により適応すること
変化(性質)=(新しい環境には、)変化ゲノムが
集団内で絶えず作られ選ばれること
(で適応し、生命が連続すること)
★ゲノムは生物を環境に適応させる安定性があるが、
変化ゲノムが絶えず作り出されては選ばれるという
変化する性質もあるので、
環境の変化の中で、太古からの生命を連続させて、
今日のような多種多彩な生き物の世界を出現させた
→ゲノムの性質が、変化を続ける環境に生命を連続
させ、多種多彩な生物の世界を出現させた。
〈用語解説2”〉
→生物の体細胞は、通常、相同染色体を2本ずつ持っ
ている。ヒトの場合、父親と母親それぞれから生殖
細胞を介して23本の染色体を受けとるので合計46
本の染色体が核内に存在する。この生殖細胞が持つ
1組(ヒトでは23本)の染色体のDNAに含まれる
すべての遺伝情報がゲノムである。つまり、ヒトは
父親由来のゲノムと母親由来のゲノムの2組のゲノ
ムを持つことになる。
体細胞分裂では、細胞がもつゲノムは変化しないの
で、1個の受精卵からつくられる一人のヒトの体細
胞は、基本的に同一のゲノムをもつ。
一方、多細胞生物のからだは多種多様な細胞で構成
されているが、細胞は同じゲノムを持っていても、
どの遺伝子が働くかを変えることで多種多様に分化
するのである。
→DNAは二重らせん構造を持つ細長い分子である。
大腸菌などの原核生物では細胞質基質中に通常1個
の環状のDNA分子が細く折りたたまれて局在して
いる。原核生物ではこの状態のDNAを染色体と呼
ぶ。
また、ヒトなどの真核生物ではDNA分子は通常ヒ
ストンと呼ばれるタンパク質に巻きつき、繊維状の
構造体で核内に分散している。分裂期になると、更
に何重にも折りたたまれて凝縮され、太い染色体に
なる。
このように細胞内でDNAを安定に保持するために
生じた構造が染色体であり、細胞内に存在する染色
体の数とDNA分子の数は等しくなる。
DNAが遺伝子の本体であることは、現在では誰も
が知っている事実である。最近では「ゲノム」とい
う言葉を新聞やニュースなどでもよく見かけるが、
ゲノムの意味を聞かれたら、たいていの人は答えに
くいと思ってしまうことだろう。
「ゲノム」とは、生物種にとって必要な遺伝子の1
セットのことをいう。
有性生殖においては、各生物種の配偶子に含まれる
染色体に存在する全DNA(遺伝情報)の1セット
がゲノムである。
※染色体の中に配列された遺伝子という物質にある
遺伝情報に基づいて遺伝形質は先祖から子孫へと
自動的に伝わる
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