left★板書(+補足)★
「現代文授業ノート」(普通クラス)
   (近代俳句) 村上亀城

〈作者〉
・慶応元年(1865)〜昭和13(1938)
大正時代(に活躍)
  正岡子規・高浜虚子に学び
  「ホトトギス」に属す(客観写生の句を詠む)
  弱者に深い愛情を寄せ、境涯俳句と称される
    独自の人生的句境を展開した点では
    芭蕉・一茶と並ぶ俳人とされる
・句集 『』など


right★発問☆解説ノート★
(俳句)2016年3月〜8月
              (2020年4月改)


・〜73歳



・耳疾(肉体的劣等感)と生活苦
 →若くして耳疾のため、司法官への道を断念して、
  裁判所の代書業に従事。28歳で妻死亡、再婚、
  10人の子女を抱えて、生活は窮乏を極める
  →心打たれる境涯句を生む

left★板書(+補足)★
痩(やせ)馬の  あはれ機嫌や  秋高し
=(「天高く馬肥ゆる秋」と言われるが、酷使されて
 肥えることができないのか)
 (一頭の)痩せた馬が、ああ上機嫌(にいなないて
 飛び跳ねたりしている。それを見ると、しみじみと
 哀れを感じること)だなあ。(空気が澄んで)秋の
 空が高い(と思われる、その空の下で)

〈出典〉
大正3年(1914)作(作者49歳

〈主題〉(感動の中心)
日々酷使されても<上機嫌な痩馬への同情・哀れみ>

〈鑑賞〉(感想・補足)
・「痩馬は」、貧しい生活の中で多くの子女を養った
 作者自身であり、弱い者の諦観・自己憐憫・自嘲・
 ペーソスが窺える
・強者への反抗的な負けじ魂を詠んだ、小林一茶の句
「痩蛙まけるな一茶是に有」とは対照的

right★発問☆解説ノート★
・痩馬=農耕や馬車など、人間に使役され続けて太れ
 ない痩せた馬→作者の共感・同情・哀れみの気持ち
☆あはれ(感動詞)…や(感動の間投助詞・切れ字)
・秋高し=「天高く馬肥ゆる秋」を連想させる
 →空気が澄み空も高く感じられ、馬も肥えるような
  収穫の季節(秋の素晴らしさ)をいう句(季語)






・秋の痩馬←同情・憐憫


・ペーソス=何となくもの悲しい感じ・哀愁





left★板書(+補足)★
冬蜂の  死にどころなく  歩きけり
=冬(の寒空の下を)(一匹の)蜂が
 (もう飛ぶ力もなく自分の)死に場所を探し求めて
 (いるかのように、よろよろと)歩いている(。そ
 の姿は何とも無惨で哀れである)ことだ


〈出典〉(…初出)
大正4年(1915)『ホトトギス』1月号初出(50歳)
『亀城句集』(大6)所収

〈主題〉(感動の中心)
死期の迫った<冬蜂への憐憫と自身の悲哀>

〈鑑賞〉(感想・補足)
・亀城の句の一大特色は、
 小動物などに憐憫の感情移入をして、それを捉え、
 そこに自己を投影させるということである。
 対象への同情と同時に、自己憐憫がある。
・深い写生の句(叙景的な句)

right★発問☆解説ノート★
・冬蜂=本来ならばもう死んでいる時期なのに、冬に
 なっても生き残っている雄の蜂。役割を終え、死を
 待つばかりの状態(→感情移入)→季語
 →蜂は夏から秋に交尾して、雄は死に、雌だけが冬
  ごもりし、春になって巣を作り卵を産む
・死にどころなく→蜂への憐れみ、自己への憐憫の情
・…けり(詠嘆・切れ字)





・冬蜂への同情と、自身の悲哀(老残の身への感慨)

・蜂に重ね合わせて、十分な収入を得られる職に就く
 こともできず貧窮のうちに多くの家族を養うという
 自身の苦しい境遇・姿を詠む
 →深い同情・悲哀の思い→人生の悩み・憤り・諦め
 →貧しい境涯が、弱者や小動物に対する愛隣の句
  なって表現

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