left★板書(+補足)★
「現代文授業ノート」(普通クラス)
   (近代俳句) 飯田蛇笏

〈作者〉
・明治18年(1885)〜昭和37(1962)
大正(〜昭和初)期
  高浜虚子に師事、伝統性に立脚して
  村上亀城らと「ホトトギス」の黄金時代を築く
  →甲斐(山梨)の地を句作基盤に
   主観を交えた自然観照性のある
   気骨に満ちた句境を詠む
・句集 『山廬集』など

right★発問☆解説ノート★
(俳句)2016年3月〜8月
              (2021年4月改)


・〜77歳








left★板書(+補足)★
芋の露|   連山影を   正しうす
=(眼前に広がる里芋畑に露が降りた秋の朝、)芋の
 (大きな葉の上の大粒の)露(が輝いていたこと)
 だよ。(そして晴れて澄み渡った大空の彼方には、
 ずっと)連(なる)山(々)
が(くっきりと輪郭を
 保ってどっしりとした)姿を(現わしており、威儀
 を)正して(居並んで)いる(かのようだった)。
 (自分も姿勢を正して頑張ろう)
(別解)
=眼前の里芋畑に露が降りた爽やかな秋の朝、その中
 の一枚の葉の上には、一粒の澄んだ大きな露が白く
 輝いて見えた。小さく透明な中には、広大な天地が
 映し出され、くっきりと稜線を連ねる遠くの連山の
 影も投影されていて、驚いた。威儀を正ししている
 ようで、自分も姿勢を正さねばならないと誓った。

〈出典〉(…初出)
大正3年(1914)『ホトトギス』11月号(作者29歳)
自注には、「隣村のY医院へ毎日薬壜を提げて通って
ゐた。南アルプス連峰が、爽涼たる大気の中に厳しく
礼容をととのへてゐた」とある。
『山廬集』(昭7)所収

〈主題〉(感動の中心)
<露が輝く芋畑の彼方にどっしり連なる南アルプス>
の山々への思い(決意も新たな引き締まった心)

〈鑑賞〉(感想・補足)
・明治41年、師事する高浜虚子が俳句から遠ざかると  投句を止め、家庭の事情もあって故郷の山梨へ帰り
 家業の農業をするようになった。だが、大正2年、
 河東碧梧桐らが新傾向俳句を提唱するのに反論する
 形で虚子が俳壇に復帰すると、投句を再開した。
 右の句はその頃の句で、その後は次々と名句を発表
 して、「ホトトギス」を代表する俳人となった。
・「連山影を正しうす」とは、整然と威儀を正す連山
 の姿に、決意新たに俳句に精進しようとする自分
 姿を投影しているのだろう
・上五で切って一気に詠み下し、終止形で言い止める
 所に格調の高さが出ている、初期の代表作
・故郷の農山村の自然・風土や人々の生活と向き合い
 ながら、切れ字・切れ・調べを重視して主観も投入
 した、重厚で張りのある作風を確立した

right★発問☆解説ノート★
・芋の露=里芋の広葉の上に置く大粒の露。秋の季節
 の爽涼を感じ取ったか→季語(秋)・句切れ・詠嘆
・連山→(山梨県)南アルプス山脈
・影=日・月などの光。(光が反射して水や鏡の表面
   に映った)(目に見える)物の姿や形や色。
   光によって翳った部分。
・正しうす=(「正しくす」のウ音便)威儀を正す、
      姿勢を正す、居ずまいを正す→擬人法
 →眺める作者の、決意も新たに俳句に精進しようと
  する引き締まった心の姿を示す













 <<芋の露>>
   ↓↑
 <<連山の影>>









・芋畑の中の一枚の葉の上に置く一粒の大きな露と、
 青黒くくっきりと稜線を連ねる山々とを描く、
 近景と遠景の取り合わせという構図となっている






left★板書(+補足)★
くろがねの   秋の風鈴   鳴りにけり
=黒い鉄で作られた(風鈴が夏を過ぎて秋になっても
 軒端に吊されている。その季節外れの)秋の風鈴が
 (不意に澄んだ響きを立てて)鳴ったのだ(なあ)

〈出典〉(…初出)
昭和8年(1933)作(作者48歳
『?』(昭?)所収

〈主題〉(感動の中心)
<季節外れに鳴った存在感のある風鈴>への思い

〈鑑賞〉(感想・補足)
・季節外れに鳴って、かえって静かさを深める風鈴の
 存在に驚く
・『枕草子』の「すさまじきもの。昼ほゆる犬。春の
 網代。三四月の紅梅の衣。牛死にたる牛飼。」は、
 季節外れの興ざめを指摘しているが、それと対照的

right★発問☆解説ノート★
・くろがね=鉄の古称、固く黒々とした存在感
・秋の風鈴→季語(秋)。夏を過ぎても、軒端に放置
      されて取り残された、季節外れのもの
・…に(完了)けり(詠嘆→切れ字)






・軒端に吊り忘れた鉄の風鈴が不意に鳴った響きに、
 秋の深まりを感じた句

 <<風鈴>>
   ↓↑
 <<秋の深まり>>



left★板書(+補足)★
雪山(セツザン)を  はひまはりゐる  こだまかな
=(あまねく雪景色の山々の中で、一発の銃声が突然
 轟いた。その音響は木霊となって)雪山(のあちら
 こちらに当たって跳ね返り、いつまでも止まない。
 まるで生き物が山肌)を這い回っている(ような)
 木霊だよ(なあ)

〈出典〉(…初出)
昭和11年(1936)作(作者51歳
自注に「あまねく雪景色の山々で、共に獲物を求めた
漁師が放った一発の銃声が、木霊となっていつまでも
反響し続けることがあった」とある。
『?』(昭?)所収

〈主題〉(感動の中心)
<木霊が反響する静寂な雪山>への思い

〈鑑賞〉(感想・補足)
・一切の描写を捨象して、音のみを提示
・自然の神秘への畏敬の念、激しい孤独感が窺える
 (蛇笏は何かにつけて山に入り、山歩きでは人後に
  落ちなかった)

right★発問☆解説ノート★
・雪山→「セツザン」と読んで音調を高める。季語(冬)
・はひまはりゐる=銃声が木霊となって、山肌を巡る
 状態を擬人化
・…ゐる(反復継続の補助動詞)
・こだま=やまびこ→真冬の寒気と静寂を印象づける
・かな(詠嘆→切れ字)












 <<雪山・木霊>>
   ↓↑
 <<静寂・畏敬>>


left★板書(+補足)★
〈参考…作者について〉
(略)

right★発問☆解説ノート★
〈参考…作者について〉(続き)


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