left★板書(+補足)★    
「現代文授業ノート」(普通クラス)
   丸山圭三郎「言語と記号」

〈筆者〉
・昭和8年(1933)〜平成5年(1993)
・言語哲学者
・ソシュールの研究をして、言語と文化を思索し、
 現代日本の思想に影響を与える
・主な著書 『ソシュールの思想』『文化のフェティ
 シズム』『言葉と無意識』『生命と過剰』など
・出典 雑誌『書斎の窓』(1985)

〈概要〉
・言語論
・モノがあって、後でそれに名前が付けられたのでは  なく、名前が付けられて初めてモノは存在するので  ある。
 言語は、世界を分節して認識・命名し、事物を存在  させるだけではなく、思考を可能にして道具を制作  し、世界像・世界観をも変えるものだ、という記号  である言語について考えを述べる。
                (→要約→要旨)

right★発問☆解説ノート★      
(評論)2024年5月


※随筆=自己の感想・意見・見聞・体験などを
    筆に任せて自由な形式で書いた文章(随想)
    ↓↑
 評論=物事の善悪・価値・優劣などを
    批評し論じた文章

【一】事実(一般論・常識)
【二】意見(一般論の否定→問題提起=筆者の意見)
【三】理由(具体例・考察=分析による説明)
【四】結論(双括型or意見の確認と補足)
 という構成


全体の構成 【一】(序)本物の代用品である記号(序論)
  (事物と記号・言葉について)
  (本物の存在を前提…一般論・常識の紹介)

【二】(破)事物の本質である名前(言語記号)(本論)
  @多様なものを一つの概念として指す言語(問題提起
  A事物を命名・認識して存在させる言語
  B事物を名と共に分節して存在させる言語
【三】(急)道具を制作して世界を変える言語(結論)
  (命名によって文化を形成…意見を確認)
  (道具を制作して世界を作り出す…補足)

    
    
left★板書(+補足)★    
〈授業の展開〉

【一】(序)本物の代用品である記号
          (序論…一般論・常識の紹介)
<記号>とは
    ・何事かを伝えてくれるもの
     →演算記号・交通信号・モールス信号・地       図の標識・表情・ジェスチャー・衣服…
    ・自分とは別の現象を告知したり指示したり      するもの        (広義の記号)
     →儀礼・音楽・絵画・彫刻・演劇・建築…
        ↓
 ・一定の<思想内容を示す>ための手段としての   文字・符号などの総称
 ・言語も記号の一つ

〇記号学の歴史は古く、記号観の根底にあるのは
 オリジナルを指差す<コピーとしての記号>である
        ||
 ・記号=<本物を指差す代用品>と考える
        ↓
 (例)「停止せよ」という命令←赤信号
     愛という普遍的観念 ←アイ・love・amour
    「本物」       「代用品」
 ・本物の存在を前提とする
  =言語以前の、事物や普遍的カテゴリーの存在は    は疑われなかった

▼〈段落まとめ〉
記号とは、一定の思想内容を示すための手段である。 本物の存在を前提としていて、言語より以前の事物の 存在は疑われることはなく、本物のコピー・代用品が 記号であると考えられた。



right★発問☆解説ノート★        




・記号=ある内容を別のもので表すために用いられる     文字・符号など
・符号=事物の指示・伝達のためにつけておく
    簡単な文字・図形・しるし








・淵源=物事の起こり基づく所、根源、源
・オリジナル=原本・原作・原画・原曲など
       最初のもの・独創的なもの


・観念=物事に対する考え(意識)
    頭の中に持っている意識の内容

・カテゴリー=部門・種類・分類・ジャンル。
       共通した特性を持つとみなされるもの        の区分を表した単語
★「もの」が先ず存在し、その後で「名前」を付けた
 というのが一般的な考えだった。
 しかし、言語学では、名付けることによって他の物  から区別・認識でき、初めてものが存在するように  なる、と考えられた。
 我々は、混沌とした秩序のないものに言葉によって  区切りを与え(分節化し)世界を認識しているので  ある。

left★板書(+補足)★      
【二】(破@)事物の本質である名前(言語記号)
    多様なものを一つの概念として指す言語
              (本論@…問題提起)
〇記号が指差す先にある事物・概念(指向対象)を
 <対象物>と呼ぶ
 <しかしながら>
 ・言語と他の記号とは<本質的な違い>がある
    ・赤信号→いつも同一の意味内容を送り返す
        ↓↑
    ・愛→それぞれに意味内容がずれ合い
       <微妙な差異>が生じる
        ↓
 ・異なる心情的態度の<多様な在り方>を
  集めて一つの<概念とする>のは
  「愛」という<言葉があって初めて可能>になる
  =言語は、できあがっている事物・観念の上に
   <貼り付ける>名前だけではない

   (言葉はものに貼り付ける名前だけではない)

▼〈段落まとめ〉
言語は他の記号と本質的な違いがある。例えば、心情 の多様な在り方を一つの概念とするのは「愛」という 言葉があって初めて可能なように、ものに貼り付ける 名前だけが言葉ではない。言葉があって初めて、事物 は概念として表されることが可能なのだ。

right★発問☆解説ノート★      
※事物を命名・認識(分節)して存在させる言語
    <事物・概念>=<指向対象・物>
           ↑指差す
          <記号>
・概念=物事の概括的な(大まかに把握して簡単にま     とめた)意味内容






 <人類><親子><兄弟><友達><恋人>の心情
   ↑   ↑   ↑   ↑   ↑指差す
 <博愛><情愛><友愛><友情><恋愛>
           ↑指差す
          <愛>
★言葉があって初めて事物・概念が表され、存在する  ことになるのだ。







left★板書(+補足)★      
【二】(破A)事物の本質である名前(言語記号)
    事物を命名・認識して存在させる言語
                   (本論A)
〇<常識>では
 「名付ける」=<既に存在>する人間や事物に
        <ラベルを貼り付ける>こと
である
<しかし>
    ・「赤子」と「子供」や、「犬」と「狸」が      それぞれ<区別>されず、一語に括られる
     言語がある
    =日本語でのような<存在>の仕方を
     していない
        ↓
 ・「<存在>が<名前>に先立つ」という
  結論を軽々に下すわけにはいかない

        ||
〇「事物の<命名>は
  認識の後にもたらされるのではなく
  <認識そのもの>である」(メルロ・ポンティ)
    ・言語以前に、ものを認識して
     その後で対象に名前を付けると
     思いがちであるが
    <しかし>
        ↓
 ・<物>は、<名前>を持った時に
  初めて<認識>され、<存在>する
のである

〇具体例(事物…命名=認識→存在)
    ・古代の名称にまつわる神話・信仰
     →エジプト…隠していた本名を知られた
      太陽神の力を、女神が奪って全能となる
     →オーストラリア…入団儀礼の際に息子に       だけ自分の名を打ち明けるが、他の人々       には隠し続ける
    ・名を口にすると危険な動物が出て来て害を      なすのを恐れるあまり、仮の名で呼ぶ慣習
     →スラブ語…「熊」を「蜂蜜」
     →古代ドイツ語… 〃 「褐色のもの」
    ↓
 <これは><名>が対象と同じ<力を持つ>
       〃 対象を出現させる

              という<言霊思想>
              雨乞い儀式もその一つ
    ・アッカド語…「存在」=「命名」
             シノニム(同義語)

▼〈段落まとめ〉
常識では、「名付ける」行為は既に存在する「もの」 にラベルを貼り付けることと考えられたが、そうでは ない。「もの」の命名は認識そのものなのであって、 「もの」は名前を持った時に初めて認識されて、存在 するのである。

right★発問☆解説ノート★      




・ラベル=名札。商品の内容などが書かれたもの

(例1)
 (日本語) 水  ・  湯  → 二語で区別
 (英語)冷たい水 ・ 熱い水 → 「水」一語
(例2)
 (日本語)稲,米,めし,御飯,ライス→ 五語で区別
 (英語)    ライス    → 区別なく一語
(例2)
 (日本語)    牛     → 「牛」一語
 (英語)  OX  ・  COW  → 二語で区別

★「もの」が先ず存在し、その後で「名前」を付けた
 のではなく、
<名付ける>ことによって他の物から区別・<認識>
 でき、初めてものが<存在>する
のである。







★もの…命名=認識→存在











・言霊信仰=言葉に霊力が宿っていて、ある言葉を口       出すとその内容が実現するという信仰。
      言葉に霊(不思議な力)が宿っており、       その霊の持つ力が働いて、言葉に表すこ       とを現実に実現すると考えていた。


left★板書(+補足)★      
【二】(破B)事物の本質である名前(言語記号)
    事物を名と共に分節して存在させる言語
                   (本論B)
<そうしてみると>
〇名は事物の本質であり、
 <事物>が<名>と共に初めて<分節>され
 <存在>を開始する

 =<名付け>とは、言葉による
  言語外現実の<解釈>であり、<差異化>である
 =世界が差異化されると同時に
  主体も差異化される、相互作用がある

         【混沌とした世界】
         << 空 山 >>
        << 海 川 池 湖>>
         <<草 木 家 学校>>
         区切り ↑↓ 分類(分節)
      思考(解釈) ↑↓ 名付け・認識
          見る ↑↓ 存在
            【言葉】
          <<<人間>>>
        ↑      (右に見たような)
〇「名付ける」という行為は
 二つの全く次元を異にする作用を持つ
 ・一次的には
  <分節>されていない混沌としたマグマのような   世界に命名して区切れを入れて、事物を<存在>   させる根源的作用
  →(例)「犬」と「狸」は別の動物である意識を       生み出させる元となった<命名>行為
 ・二次的には
  分節して<認識>された存在にラベルを貼る作用   →(例)貰って来た犬に「ポチ」と名付けた
      <命名>行為
▼〈段落まとめ〉
名は事物の本質である。混沌とした世界の事物は言葉 で解釈して分節し、命名=認識することで初めて存在 を開始するのである。

right★発問☆解説ノート★      




・分節=一つながりのものに区切りを付ける(差異を     認識する)こと
・言語外現実=人間が言葉で作った小説などのフィク  ション(虚構)である「言語の内側の現実」に対し  て、言語とは全く無縁の現実の世界そのもの(?)
★世界の事物が名前と共に<分節されて存在>して、  主体である人間も様々な事物を<名付けて認識>
 する(?)
・主体=(主体である精神)自分の意志に基づいて、     他に行動を及ぼすもの、その主。








・次元=座標(x軸y軸z軸……)によって数学的に     示される空間の広がり
    考え方や立場の質的な違いや隔たり
・マグマ= 地下に存在する高温で溶融状態の物質













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【三】(急)道具を制作して世界を変える言語
            (結論…意見の確認補足)

〇言語は
        ・二つの命名行為を行う
            ↓
        ・既に知っている事物や概念の名前          リストに過ぎないように思われる
 <しかし>
 ・「名付ける」ことにより
  <文化を形成>する力を持つ
      ことは、往々にして見逃されがちである
 ・「言葉によって世界が分節され事物が存在する」   というテーゼには
      「言語が指向対象を生み出す」という
       認識・存在論的な働きに加えて
  <言葉が可能にした思考>によって
  <道具一般が制作>され、
  <世界を作り出す>
        という実践的レベルも含まれている
    ↓
〇道具類の使用による外界の変貌
    ・宇宙の秩序が、人間の介入を許さずに
     決められているのでない→驚き
 ・区分けされていた外界を変化させ
  自分たちの<世界像や世界観を変える>
  ことができる→驚き(想像を絶するもの)
    ・いわんや近代、現代においてをや
      →風・水・空間…
        ↑        (言語による)
     世界の差異化・主体の意識の差異化
     という相互差異化がもたらす結果
      ↓↓↓
〇言語記号とは
 平素は他の一般記号と同じように振る舞い、
 その<仮面>の下に
 <本性>を隠している
不思議な記号である

▼〈段落まとめ〉
言語は、人間の思考を可能にさせて、道具一般を制作 して文化を形成し、自分たちの世界像や世界観などを 変えることができるようにした。

right★発問☆解説ノート★      




☆世界の差異化(モノの命名・分節・存在)と
 主体の意識の差異化(存在するモノの命名・認識)





・往々にして=物事がよく起こる
・テーゼ(命題)=判断を言語で表したもの

☆言語がモノを存在させる

☆人間は言語によってモノを考えることができ、
 それによってモノを作り、
 文化・文明を作り出して、世界を変えて、
 他の動物とは違う存在となった


☆例えば、人類は道具を用いて火を起こし、他の獣を  寄せ付けたりせず、加熱して食事したりした。
 また、自然のままの洞窟から抜け出し、家を建てて  暮らしたりするようになった。
 そして、文化・文明を生み出し、発展させて来た。
まして近代・現代においては言うまでもない






☆何らかの思想内容を示す為の簡単な印として、
 既に存在する人間や事物にラベルを貼り付ける
☆混沌とした世界を分節して、事物を存在させ、
 それらを人間の意識の中で認識させる事を通して、
 道具類を制作して文化を形成し、世界を変えるのだ
 (分節されていないマグマのようなモノに区切りを   入れて、それらを存在させる、根源的な作用)


left★板書(+補足)★    
〈要約〉
記号とは、一定の思想内容を示すための手段である。 本物の存在を前提としていて、言語より以前の事物の 存在は疑われることはなく、本物のコピー・代用品が 記号であると考えられた。
言語は他の記号と本質的な違いがある。例えば、心情 の多様な在り方を一つの概念とするのは「愛」という 言葉があって初めて可能なように、ものに貼り付ける 名前だけが言葉ではない。言葉があって初めて、事物 は概念として表されることが可能なのだ 常識では、「名付ける」行為は既に存在する「もの」 にラベルを貼り付けることと考えられたが、そうでは ない。「もの」の命名は認識そのものなのであって、 「もの」は名前を持った時に初めて認識されて、存在 するのである。 名は事物の本質である。混沌とした世界の事物は言葉 で解釈して分節し、命名=認識することで初めて存在 を開始するのである。 言語は、人間の思考を可能にさせて、道具一般を制作 して文化を形成し、自分たちの世界像や世界観などを 変えることをできるようにした。 未完成!!

right★発問☆解説ノート★      
〈要旨100字〉(…参考資料)














〈要旨200字=24×8〉(…参考資料)





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