left★板書(+補足)★
「現代文授業ノート」(普通クラス)
   佐々木健一『美学への招待』
            (青山学院大2007年)
〈概要〉
〇芸術(美学)論
〇作品の背後にある作者の精神世界を重視するため、
 全集・伝記や全芸術史への教養も要求する西洋近代
 の芸術概念は、過去の芸術伝統を重視する日本では
 親しみが持たれて、普遍的でなく特殊性があること
 は気づかれなかった。        (→要旨)

right★発問☆解説ノート★
(評論)2020年5月
(※出題校…お茶の水女子大・成蹊大・成城大…)
             <現代>
               ↑
       <  >←【西洋・近代】→<東洋>
               ↓
             <近代以前>
作者の精神的世界を重視→全芸術史への教養を要求
    ↑背後にある
   <作品>

left★板書(+補足)★
〈全体の構成〉 (→要約→要旨)

【一】作者の精神世界を重視する近代芸術の概念
            (序論…導入・話題提示)
<芸術の概念>
 西洋近代に成立した         (19世紀)
    ・近代以前・他の文化圏の制作物は
     芸術とは見なさなかった
     →百済観音や、職人仕事である家具や銭湯
      のタイル絵は芸術とは見なさなかった
    ↓      (この近代芸術の概念では)
<作者の精神的意味の深み>が込められた作品を
 芸術と認めた

▼〈まとめ〉
西洋近代に成立した芸術の概念は、作者の精神的意味
の深みがある作品を芸術と認めた

right★発問☆解説ノート★




・概念=ある物事に対する一般的な印象。イメージ。
    物事の意味内容についての大体の考え。
・端的=明白、手っ取り早く要点だけを捉える様
・レパートリー=準備している演目。領域・種目。
・ニュートラル=いずれにも片寄らないな様、中間的


・鬼気迫る、精神のあり方を覗かせる作品
★作品の背後にある作者の精神世界を重視した





left★板書(+補足)★
【二】作品から作者へと主役が移った近代芸術
                   (本論@)
〇(前段と同一内容の繰り返し)芸術とは
    ・実用的な目的を持たず
    ・現実世界の姿を再現し
    ・背後に精神的な次元を隠し持ち
               開示するものである
    ↓(作者・読者の)
〇意識の焦点が<作品から作者へ>と移った
    ↓      (作者の精神的次元)
 芸術家は  (その時代での理論と一体となった)
 創造力を体現するスターとなった

▼〈まとめ〉
作品の背後にある作者の精神世界を重視するために、
作品から作者へと主役が移って、作者は新しい美学を
創造する時代のスターとなった

right★発問☆解説ノート★




・現実世界の再現(表層)→精神的な次元(深層)
・次元=物事を考え行う時の立場、程度

☆作者も鑑賞者も、作品の深層にある作者の精神的な
 次元に焦点を充てる→作品から作者へと主役が移る
・体現=思想などを具体的な形で現すこと
★(近代芸術の概念の下で)芸術家は、理論に基づき
 新しい美を創造するスターとなった
      (19世紀は自然科学が発達した時代?)





left★板書(+補足)★
【三の@】古典作品群への関心も重視する近代芸術
                   (本論A)
〇(前段と同一内容の繰り返し)
 近代芸術は、創造性(新しさ)を追求してきた
    ↓↑<同時に>
<古典作品群への関心>も重視した
    ↓<即ち>
        (個々の作品を理解するために
         作者の精神世界を知ろうとして)
 <全集や伝記を読んだ>

▼〈まとめ〉
作者の精神世界を重視する近代芸術は、創造性を追求
してきたが、作品を理解するための全集や伝記という
古典作品群への関心も重視した

right★発問☆解説ノート★


☆近代芸術は、スターである作者を通して
 新しい美(美学)の創造を追求してきた

★古典作品群=@全集・伝記とA全美術史
・由来=物事がそれを起源とする所、辿ってきた経過
過去の作品を含めて全てが収録された「全集」や、
 過去の生き方などが記された「伝記」が刊行され、
 作者の精神世界の統一性を理解する手がかりとなる






left★板書(+補足)★
【三のA】全芸術史への教養も重視する近代芸術
                   (本論B)
    ↑(前段のような)
〇(作者の証言・人生に従った作品理解の方法は)
 今日の美学では正当だとは考えられない
<しかし>     ↓↑
〇(前段と同一内容の繰り返し)
      作品には背後があり、その背後こそが
      作品を芸術作品たらしめている、という
      近代的な芸術概念が、全集を生み
      「背後の思想」を解釈しようとした
 現存の作家の全集への関心にとどまらず
 <全芸術史への教養も要求>した
          (古典作品群への関心を重視)

▼〈まとめ〉
背後の思想を重視する近代芸術は、全集や伝記という
古典作品群にとどまらずに、更に全芸術史への教養も
要求した

right★発問☆解説ノート★



☆作品を理解するために、全集や伝記を読んで作者の
 精神世界を知ることを重視するという
 西洋近代の芸術概念は、今日では正当とされない



☆当時は、近代的な芸術概念が支配的であった

・全芸術史へと広がっていった
★作者や作品の全てを理解しようとする方法が
 芸術の全歴史を知ろうとすることにつながっていく
 →作者を知らなければ作品は分からないように
  芸術史を知らなければ芸術は分からないと考えた
 →芸術の全歴史の中で、作者やその作品の位置付け
  はどうであるのか、どういう影響を受けたのか


left★板書★
【四】近代芸術の特殊性に気づかない日本人
                    (結論)
〇日本には
 過去の芸術を重んずる文化的伝統がある
    ↓<そのため>
 西洋近代の芸術のあり方に親しみを感じた
    ↓
 (作者の精神性を重視するのを普遍的と見なし)
<西洋の近代芸術の特殊性>に気づきにくい
 という所が日本人にはあった     (→結論)

▼〈まとめ〉
(しかし)過去の芸術を重んずる文化的な伝統がある
日本では、背後の思想を重視する近代芸術は、親しみ
を持たれて、特殊性があることが気づかれなかった

right★補足・発問★



・素養=普段から身につけた技能・知識・たしなみ
・ステイタス=社会的地位(を表すもの)



☆日本の文化的伝統と、西洋近代の芸術のあり方とが
 類似した所があったから






left★板書(+補足)★
〈論旨の展開〉
【一】作者の精神世界を重視する近代芸術の概念
西洋近代に成立した芸術の概念は、作者の精神的意味
の深みがある作品を芸術と認めた
【二】作品から作者へと主役が移った近代芸術
作品の背後にある作者の精神世界を重視するために、
作品から作者へと主役が移って、作者は新しい美学を
創造する時代のスターとなった
【三】@古典作品群への関心も重視する近代芸術
作者の精神世界を重視する近代芸術は、創造性を追求
してきたが、作品を理解するための全集や伝記という
古典作品群への関心も重視した
   A全芸術史への教養も重視する近代芸術
背後の思想を重視する近代芸術は、全集や伝記という
古典作品群にとどまらずに、更に全芸術史への教養も
要求した
【四】近代芸術の特殊性に気づかない日本人
(しかし)過去の芸術を重んずる文化的な伝統がある
日本では、背後の思想を重視する近代芸術は、親しみ
を持たれて、特殊性があることが気づかれなかった

right★発問☆解説ノート★











芸術概念の特殊性→日本では認識されず
   ↑
【全芸術史】→素養
   ↑
【作者の全集・伝記】→関心(精神世界の統一性)
   ↑
【作者の精神性】→重視→美を創造するスター
   ↑背後
【個々の作品】

left★板書(+補足)★
〈要約150字=24×6〉
〇作品の背後にある作者の精神世界を重視する、西洋
 近代の芸術の概念は、作者の全集や伝記を研究して
 更に全芸術史を知ることも要求するものであった。
 これは、過去の芸術伝統を重視する日本では親しみ
 を持たれて普遍的なものとされてしまい、特殊性が
 あることは気づかれなかった。    (→要旨)



right★発問☆解説ノート★
〈要約〉(192字…参考資料)
芸術とは、西洋近代に成立した、作者の精神性を重視
したものである。それゆえ、作者の全精神を理解しよ
うとして全集や伝記が出版されるようになる。そして
、そうした関心は、過去の全芸術をも知ろうというも
のとなる。こうした過去の芸術に関する素養を重んじ
るという一面は日本の伝統と通じるものであり、皮肉
にも、そのことが近代芸術が特殊なものだということ
に気づかない原因となってしまったとも考えられる。

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