(阿蘇)垂玉・地獄温泉 (熊本県)   (湯布院IC→やまなみハイウェイ)

垂玉温泉「滝の湯」

 14年ぶりの九州旅行、3日目は黒川から阿蘇に向かった。久住・瀬の本から、やまなみハイウェイを南下する。一面に、なだらかな平原が広がっている。牛や馬を放牧する牧場があちこちにある。近畿では見られない風景だ。しばらくすると、ギザギザした頂上が特徴的な山が見えてきた。阿蘇の根子岳である。大観峰では、眼下の平原から更に高く聳えていた。みんな春休みなのであろうか。草千里ヶ浜も中岳ロープウェイも、人でいっぱいであった。中国人の観光客の多かったのが、特に印象的である。

 阿蘇の温泉は、大分との県境に近い熊本県北東部の、言わば九州のヘソ(中央部)とも言うべき阿蘇山とその周辺にある温泉地である。内牧・高森・久木野・白水・垂玉・地獄・栃木といった温泉が点在している。阿蘇山は、「火の国」熊本のシンボルでもある有名な活火山で、誰も知らない人はいない。本体となる「阿蘇五岳」と、それを取り囲む雄大な「外輪山」から成り立っている。しかし、実はそのような名の山は存在しないらしい。高岳が1592(ヒゴクニ)mとその中で最も高いが、「阿蘇山」とは杵島岳・烏帽子岳・中岳・高岳・根子岳から成る「阿蘇五岳」の総称であるという。そのような阿蘇の外輪山の内側には、世界でも有数の大型カルデラ(凹地)が広がり、その広大な盆地は畑作や牧畜が営まれ、有数の観光スポットともなっている。


 垂玉温泉・地獄温泉は、そのような阿蘇五岳の一つである烏帽子岳の南西中腹(海抜710m)に湧く、比較的よく知られている秘湯である。各々数百bほど離れているが、経営は同系列らしい。以前は国民宿舎も近くにあったが、今はこの二つだけのようだ。あふれる大自然の中にあって、夏も涼しく、硫黄の匂いが漂う所である。江戸の昔から、滞在療養型の湯治湯として、長年親しまれてきたという。明治から昭和にかけて文人墨客の来訪が多く、若き日の北原白秋・与謝野晶子・吉井勇・野口雨情なども宿泊して、その足跡を物語る作品を残しているという。「秋の紅葉は山から山へ阿蘇の垂玉よいながめ」という、野口雨情の歌碑もある。現在も来館を重ねるリピーターは多いそうだ。

 泉質は、酸性泉・単純硫黄泉40〜60℃で、灰白濁色(青白濁色・鶯色)または無色・硫黄臭といった特徴がある。源泉掛け流しの、いかにも本当の温泉という感じの体に効く湯で、皮膚病・慢性婦人病・糖尿病・高血圧・動脈硬化・不眠症・ストレス解消などにも効能があるという。日帰り入浴はいずれもOKである。


 多彩な湯船があり、混浴の所もある。バスタオルも巻かない二十歳前後の女性と、立て続けに3人も擦れ違うことがあった。この時は少し驚いた。濁り湯・硫黄臭・鄙びた風情、すべてが温泉地という感じがした。到着後すぐ・夕食後・朝食後・日帰り入浴で……、いったい幾つの湯にどれくらい浸かったのだろう。他に、中岳火口・仙酔峡・ロープウェイ・南阿蘇鉄道トロッコ列車・乗馬・登山・高千穂峡なども楽しめるが、全部するには時間がなかった。

 4日目は、壮麗な根子岳や中岳を背にして、懐かしい別府に向かい、翌日未明(2時半頃)、関西に帰着した。

   
(阿蘇)垂玉・地獄温泉へのドライブ
▼ 大分道-湯布院IC-やまなみハイウェイ-瀬の本-大観峰-R212-
▼ 阿蘇駅-草千里ヶ浜-烏帽子岳-R325-長陽-垂玉-地獄温泉で
湯布院ICより所要2時間半
▼ (九州道)熊本ICからは、R57-阿蘇大橋-R325-重陽-山道を北に10分で1時間(阿蘇大橋からは20分)。(大分道)日田ICからは、R212-小国-大観峰-阿蘇駅-草千里ヶ浜-烏帽子岳-R325-(または阿蘇駅-R57を西-阿蘇大橋-R325を東)長陽-山道。鉄道ではJR熊本駅-豊肥線-南阿蘇鉄道-阿蘇下田駅からバス15分。 

中岳ロープウェイ

(雄大な阿蘇を一望する)大観峰

(阿蘇)草千里ヶ浜

噴火を続ける中岳火口
温泉施設 垂玉温泉 山口旅館 (奥阿蘇)地獄温泉 清風荘 (高森温泉)休暇村南阿蘇
垂玉温泉 山口旅館
【所在】 南阿蘇村河陽2331
【電話】 0967-67-0006
【時間】 11:00-15:00。
【料金】 【入浴】\600。【宿泊】\12,600-。
【施設】 阿蘇五岳の一つ烏帽子岳の南西中腹に湧く大自然の中の秘湯で、地獄温泉の北西すぐにある素朴な伝統的和風老舗の一軒宿(35室・P30台)。堅固な要害となっている高い石垣の上に黒い山門がある、昔の豪族の本陣のような所である。以前は九州に2軒しかなかった「日本秘湯を守る会」会員の一つで、烏帽子岳・杵島岳への登山も可能である。二百数十年前に、この地にあったと伝えられる「金龍山垂玉寺」の修行者によって発見されたと言われ、創業は江戸時代の末で現在は七代目だという。明治から昭和にかけて文人墨客の来訪も多く、「秋の紅葉は山から山へ阿蘇の垂玉よいながめ」という野口雨情の歌碑もある。現在も来館を重ねるリピーターが多いそうだ。大きな窓から山々が見える木造大浴場・渓谷美が間近に見える野趣満点の自然岩のままの混浴露天岩風呂「滝の湯」(湯浴み着可・日帰りは入浴不可)・茅葺き半露天岩風呂または桶風呂・家族湯2・サウナ・打たせ湯などがある。食事は、山女魚・鱒・肥後牛・馬肉・豆乳味噌仕立て猪鍋・山菜・薬膳・会席料理などを、夕食は部屋で、朝食は個室囲炉裏端で。暖房は強力ではなかったが、源泉を利用したエアコンで、感心した。
【泉質】 (含鉄?)単純硫黄泉51℃。源泉は、旅館背後にそそり立つ金龍山より流れ落ちる「金龍の滝」の滝壺にあり、湯量も豊富。阿蘇五岳の一つ烏帽子岳山系の地下水が地熱によって温められ、岩盤の割れ目から沸き出しているという。湯は、源泉掛け流しで、鶯色(薄緑白濁色)と無色・微硫黄臭(金物臭)・湯の花の浮遊という特徴がある。慢性婦人病・不眠症・ストレス解消にも効能があるそうだ。
【評価】 ★★★★★(2010.03)やはり秘湯という感じだ。

(1996年は地獄温泉に宿泊)
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(奥阿蘇) 地獄温泉 清風荘

混浴露天風呂
【所在】 南阿蘇村河陽2327
【電話】 0967-67-0005
【時間】 8:00-22:00。
【料金】 【入浴】\400。【宿泊】\7,500-。
【泉質】 単純硫黄泉(酸性泉・硫化水素型泉)41〜61℃p・H2.6。湯は湧出数100g/分・源泉掛け流しで、灰白濁色(乳白濁・青白濁)・換気の悪い浴室では中毒の恐れがあるほどの強硫黄臭という特徴がある。体に効くいかにも本物という感じで、皮膚病・糖尿・高血圧・動脈硬化にも効能がある。
【施設】 海抜710mの阿蘇南西麓にあって夏も涼しく、江戸期から湯治湯として九州随一の利用客を誇る滞在療養型の宿(40室)。同系列で入浴無料にもなる垂玉温泉のすぐ南にある。源泉は裏山にあり、白煙がもうもうと上がり、硫黄の匂いも漂っている。ガラス張り木造り内湯・底がドロドロの足元から湯が湧く泥湯の混浴露天木造り風呂・男湯を上から見下ろす女性露天風呂「仇討ちの湯」など13も浴槽が点在してあり、一日では回りきれないほど温泉のハシゴができる。食事は、野鳥・山女魚・猪・地獄鍋・炭火囲炉裏焼きなどの野趣豊かな味を、「曲水庵」で昔の貴族のように水に浮かんで次々と流れて来る器で手に取って食べるのも面白い。アクセスは、阿蘇駅-阿蘇パノラマライン-草千里ヶ浜-中岳(ロープウェイ)-烏帽子岳-白水が、景色も良く楽しめる。阿蘇大橋からは20分。鉄道では、(南阿蘇鉄道)阿蘇下田駅からバスで15分。
【評価】 ★★★★★(1996・2010)身体に付着した快い硫黄臭は、いつまでも消えず車内に漂っていた。
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高森温泉
 山腹にある垂玉・地獄温泉とは違い、環状の大型カルデラの南東にある温泉地で、更に東は天孫降臨の地である高千穂に通じている。温泉館・旅館・キャンプ場などもある。
(高森温泉)休暇村南阿蘇

イメージ(地獄温泉)
【所在】 阿蘇郡高森町高森3219
【電話】 0967-62-2111
【料金】 【入浴】日帰り不可。【宿泊】\8,500-。
【泉質】 アルカリ性単純泉38℃。
【施設】 阿蘇山の南東の白水温泉の東7kmに位置する公共の宿(70室)。ガラス張り洋風内湯・サウナ・雄大な阿蘇五岳が目の前に広がる露天風呂がある。日帰り入浴は現在は不可。食事は、郷土料理などのバイキング。テニスコート8面あり・ゴルフも可。南の高森峠に至る、麓から頂上まで4kmのヘアピンカーブが多い「九十九曲がり」はドライブに最適で、頂上からの阿蘇五岳のパノラマも素晴らしい。春は沿道の6000本の桜がまた良い。アクセス:垂玉・地獄温泉-R325を東-白水温泉(阿蘇白川駅)-高森町役場-R265を北東。
【評価】 ★★★☆☆拠点にして付近を行楽するのに便利そうだ。
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やまなみハイウェイ(阿蘇付近)

(阿蘇)根子岳と高岳(北の大観峰より)
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