京都「嵐山」、これを知らない人は誰もいないだろう。山峡から流れる清流・大堰川に架かる「渡月橋」付近の天下の名勝である。上流は保津川で、下流は桂川・淀川となって流れて行く絶景の所だ。位置的には、京都市南西部の桂や洛西よりも北に当たる。古来、貴族たちが舟を浮かべて雅楽を奏で、秋には紅葉を愛でた所である。 「小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ」 「をぐらやま あらしの風の さむければ もみぢの錦 きぬ人ぞなき」 1つ目は、『百人一首』の中にある歌で、誰もが学校で習ったいるだろう。 2つ目は、藤原道長が大堰川で舟遊びを催した際、漢詩・和歌・音楽の道に長じていた藤原公任が詠んで、人々に絶賛されたものである。『大鏡』巻二にあり、この逸話を「三船の誉れ」という。 このように、嵐山は多くの歌人や文人に愛され、歌にも詠まれてきた。
付近には、格式ある寺院や旅館が幾つもあり、有名な芸能人の店や土産物屋などもたくさんある。多くの人で賑わい、堤防で昼からビールを飲む者や、川面でボート遊びを楽しむカップルがいたりして、いつもがまるで祭りのような所だ。小生も、若い頃はよくここでデートをしたものだ。 そんなこの地に、北の大原と同じように、何と天然温泉が湧き出したのである。そう古いことではなく、平成16(2004)年の開湯である。驚きではあるが、更に魅力が増したように思われる。 嵐山温泉は、大堰川に架かる「渡月橋」の北詰や南詰付近に湯宿がある温泉地だ。上品な京料理と食事処からの絶景に加え、温泉入浴も楽しめる所が数軒ある。食事をすれば、いずれも日帰り入浴が可能だというような所である。
泉質は、(低張性)弱アルカリ性単純温泉35℃、無色透明・無味・無臭で、湯は加温・循環濾過・消毒をしている。露天風呂で良いのは、やはり「花筏」だろう。屋上にある芳しい檜風呂からは、高尾の山々と麓を流れる清流や街並みを一望することができる。湯豆腐を肴にしたほろ酔い加減の体には、川面を撫でて吹く微風がちょうど快い。 後で散策したい所は、幾つもある。天竜寺・常寂光寺・落柿舎・保津川下り下船場・ボート乗場などだ。また、(京福)嵐電嵐山駅の北には、JR嵯峨嵐山駅に併設されて「トロッコ嵯峨駅」がある。ここからは保津駅までトロッコ電車が運行されていて、美しい景色が楽しめる。毎時50分に嵯峨駅を出て20数分かかって保津駅に着き、5分停車して毎時18分に折り返し戻ってくるような、運行である。 飽きることのない嵐山、学生時代から今までに、何度訪れたことだろう。