left★板書(+発問)★   
(現代文授業ノート……普通クラス)
   芥川龍之介  「羅生門」

〈作品〉
大正4年(1915)発表
『今昔物語集』の説話を典拠とする歴史小説
 (平安末期=1120年頃成立)
=古典を材に近代的な主題を盛り込んだ虚構の小説を
 書き、巧みな心理分析をする
 →人間の醜さ(内部の矛盾した感情)をえぐり出す

 < 古典 > → < 現代の小説(虚構) >
   に取材して    として再構成する
          ↓
   人間性・人物の心理(エゴイズム)を分析し、
   主題として追求
          ↓
○原作との違いが多い
 →自分のテーマ(主題)を生かすための舞台として
  歴史(古典)を用いる、という意図があった

〈作者〉
〇1892(明治25)〜1927(昭和2)年
(新現実主義)新思潮派(と呼ばれる)
 →現実や人間を理知的に捉える
厭世観と、人生より芸術に価値を置く芸術至上主義
 は、現実との対決と心身の衰弱をもたらす
    ↓
 「将来に対するぼんやりとした不安」という遺書を
 残し、服毒自殺する(35歳)

〈概要〉
極限状況に置かれた青年が、生きるために仕方なく
 する悪は許される
との生の哲学を老婆から知らされ
 て、悪を肯定し実践するという、人間のエゴイズム
 を問題にした近代小説

  →盗人になるのは悪か?
  →悪は許されないのか?
  →しなければ死ぬしかない状況での悪はどうか?

right★補足(+解説)★   
(小説)2014年6月(2023年6月改)




・他にも、『宇治拾遺物語』『十訓抄』などの古典に
 取材し、虚構の世界を作り上げて、人間性を追求
 ※虚構=作者が人間についての真実を語ろうとして
     現実の外に仮の別の世界を作り上げる事

 ・古典説話→驚くような事実が現実にあったのだと
   ↓↑  いう点に興味が置かれる
 ・近代小説→人間とはこうであるという<真実>を
       語る
ための手段として用いる







〈作者年譜〉
大正2年(1913)東大英文科入学(21歳)
大正4年(1915)『羅生門』発表(23歳)
大正5年(1916)『鼻』発表
    夏目漱石に激賞される→華やかな文壇登場
大正7年(1918)結婚
    『地獄変』『蜘蛛の糸』発表
大正9年(1920)長男出生
    『杜子春』発表
昭和2年(1927)自宅で服毒自殺(35歳)



全体の構成 【一】(起)羅生門の下 (下人が途方に暮れる)
                    (悪への迷い)
 @場面・人物の設定(序説的部分)
 A都の衰微の余波である下人の窮状と心理
【二】(承)楼上への梯子の上 (醜い老婆と出会う)
                     (悪の否定)
 @悪そのもののような老婆の醜い行為を見て
 A下人の心に激しく燃え上がる悪を憎む心
【三】(転)楼上 (新しい勇気を得る)
                  (悪の肯定と実践)
 @懲悪に燃える下人と、悪の相対性を説く老婆の葛藤
 A生きるためには悪も許容する新しい勇気と行動への転換
【四】(結)羅生門の外 (下人の行方は誰も知らない)
                     (悪の世界)
 ・あるのは闇に閉ざされた黒洞々たる夜ばかり
 ・読者の想像に委ねる、近代的自我の覚醒の行方
left★板書(+発問)★   
〈小説の舞台設定…5W1H〉 → 冒頭の一文
 (いつ)   ある日の暮れ方
 (どこで)  羅生門の下で
 (誰が)   一人の下人が
 (何を)   雨止みを
 (どうした) 待っていた
   ↑
 (なぜ)   職もなく、行き所もない
       (途方に暮れる=極限状況)
right★補足(+解説)★   
(小説の枠組→場面・人物の設定)
映画撮影におけるカメラのズームアップの視点
   →作品世界を漠然と示し、広がりを与える効果
                ↑
              <時代>
        ←←<場所>【人物】<場所>→→
              <時代>
                ↓

left★板書(+発問)★   
〈授業の展開〉

【一】(起)<羅生門の下>
                 (悪への迷い)

@<時・所・主人公の設定についての詳細>

〇時 平安時代の末期        (時代背景)
   雨が降る晩秋の夕暮れ
〇所 京都の羅生門
  <衰微・荒廃>の象徴
    ↓
   ・人は誰もいない
    ↓   ・丹塗りの剥げ…キリギリスが一匹
   <なぜか>      (…時代状況の説明)
     ・外面的状況…地震・辻風・火事・飢饉
                 (天災・人災)
     ・内面的状況…仏像・仏具の破壊→薪の材
        ↓    (信仰・モラルの放棄)
     ・狐狸や盗人が棲む
      死人の捨て場(引き取り手がない)
        ↓
     ・黒い鴉が、夕焼け空を何羽も舞い
      死人の肉をついばみに下りて来る……
     ・崩れかかった石段に長い草…鴉の糞が

〇主人公=下人            (人物像)
   ・容貌 頬に<大きなにきび>
       →15〜17歳の若い青年
   ・服装 洗いざらした紺の襖、腰に聖柄の太刀
   ・状況 <職もなく、行き所もない>
       途方に暮れる=極限状況  
right★補足(+解説)★   


・場面分け (←主人公がどこにいるか)



・1100年代→貴族階級が衰退、武士(源氏平家)が台頭

・大内裏に通じる朱雀大路に面した、京都の玄関口
       →本来は、立派で人通りが多く華やか
・衰微=勢いが衰えて弱くなること、衰退

☆荒廃した寂しさの中で、生命的なもののはかなさを  象徴的に表現し、下人の今後を暗示する
☆具体的な場面状況        (当時の様子)
 →「京都は…災い…洛中のさびれ…」
 →「旧記によると…」    →真実性を増す効果

・狐狸=キツネとタヌキ。人を騙し密かに悪を働く者


赤と黒の対照=不気味な美しさ
       →不吉な予兆を示す(効果)



・描写→生々しい現実感→自我に目覚め始める年齢

・洗い晒す=何度も洗って、染め色が薄くなる
☆庶民に近い下級侍で、職を失ったのは4・5日前
             (生活基盤を奪われる)

left★板書(+発問)★   
A<下人の窮状と心理の変化>

〇<都の衰微>⇒余波⇒<下人の個人的窮状>
    ・「作者」が突然姿を現わす
    ・空模様…下人のサンチマンタリスムに影響
     →雨の上がる気色がない
      ↓
      ↓
〇雨は…<重たく薄暗い雲を支えている>
         (情景描写が人物の心情を暗示
    ↓
 @明日の暮らしを(どうにかしよう)
  =どうにもならないことを、どうにかしよう
    ↓             
 A手段を選んでいる暇はない。
  選んでいれば<飢え死に>をするだけだ
    ↓
 B選ばないとすれば
    ↓          (との条件を設定)
   何度も同じ道を低回して…
   この局所に逢着
    ↓
 C生きるためには
  <盗人になる>より他に仕方がない
    ↓       (という結論に到達する)
 <しかし>
 D肯定できる勇気が出ず  → <悪への迷い>

<時の経過と下人の行動>       →(展開)
    ・下人はくさめを…
     大儀そうに立ち上がった
    ・夕冷えのする京都…
          (降りしきる雨・迫り来る夜)
          (…火桶の欲しい寒さ
    ・キリギリスも…どこかへ
        ↓
  ・一晩の寝場所を求めて    (迷うままに)
   楼上の梯子へ       →<行動>
   →(人がいたとしてても…)どうせ死人ばかり

▼〈まとめ〉
羅生門の下で、一人の下人が、盗人になるか飢え死に
をするか、選択しかねて途方に暮れる

right★補足(+解説)★   
・窮状=見通しが立たず、絶望的、極限的状況
 →降りしきる雨・迫り来る夜    (暗い世界)
・作者の視点を通して全てが語られる物語的な作品
 であることが分かる
・サンチマンタリスム=若者特有の感傷的な気分
☆フランス語の使用は、現代の心理に通じる小説で、  作者が教養ある人物でもあることを示す
・気色(けしき)=様子
★下人の不安で重苦しい心象と、かろうじて
 人間としての心を保とうとする様を表現

 <生きる=盗人になるか?><飢え死にするか?>
    ↓          (悪への迷い??)
    ↓

・低回=思案にふけりつつ、行ったり戻ったりする
・局所=全体の中の限られた一部分
・逢着=出くわす
★「選んでいれば…」「選ばないとすれば…」という
 二つの同じことを何度も繰り返し考える
★「選ばないとすれば…盗人になるしかない」という
 考えに出くわす
  (→結論として落ち着くが…)
    ↓
    ↓
 出くわす→結論となる→肯定する勇気がない
           =悪への迷い
★論理的には分かるが、容認したくない気持ちが残る



・大儀そうに=面倒臭そうに
じっと考え込んでいたが、くしゃみを契機として、
 決断はつかないまま<行動し始める> (静→動)



・時の経過→新しい動きが始まる下人を暗示
・寒さ・雨風の憂え・人目にかかる恐れ
 →生きるか、死ぬかという切羽詰まった状態
  =明日の行先も予定もなく、飢え死にしかない身
・現実の生活に敗れ、生の極限状況にある下人には、
 死人より、生きている人間の方が恐ろしく思われた


left★板書(+発問)★   
【二】(承)<楼上への梯子の上>
                  (悪の否定)

〇それから何分か後…
 <一人の男>が…梯子に
          →呼び方を客観的に表現し直し
    ↓      改めて焦点を当てる
 ・(赤くうみを持った)にきび…
 ・猫のように…
  →<動物を使った比喩>

<主人公の心理(行動)の変化>

〇やもりのように…(一番上まで…)
 ・死人ばかりだと、たかをくくる
    ↓
 ・(それが)誰かいる…どうせただ者ではない     ↓      (見ると、楼の内には)
            幾つかの死骸が無造作に…
            死骸の腐乱した臭気が…
 ・猿のような老婆との出会い
    ↓      →嗅覚を奪ってしまう
ある強い感情
 =<六分の恐怖と四分の好奇心>
           →「頭身の毛も太る」思い
           →暫時は息をするのも忘れる
    ↓
 ・恐怖が少し消える
    ↓
老婆への激しい憎悪       (→悪の象徴)
 ・あらゆる<悪への反感>
 ・悪を憎む心       (→燃え上がり出す)
    ↓
 ・合理的には、善悪のいずれか知らず
  しかし、許すべからざる悪

▼〈まとめ〉
楼の上へ出る梯子の上で、下人が醜い老婆と出会い
あらゆる悪に対する反感を抱く

right★補足(+解説)★        


・現代小説における時間の表示→「なんぷん」
・場面が転換して、
 <新しく物語が展開>することを印象づける
 →映画撮影でのカメラのズームアップの視点
・自我の象徴→生きて行く選択に迷い息詰まっている
☆直喩・明喩         (←→隠喩・暗喩)
★人間らしくない、<本能のまま生きる動物的存在>



・直喩→不気味で執念深い?
・たかをくくる=大したことはないと、みくびる


・無造作=手数がかからず、手軽で簡単
 →死が充満する世界→楼上で老婆の行為を覗き見る


・死骸の中にうずくまり、死骸の顔を覗き込む



・恐ろしさのあまり身の毛も逆立つ(よだつ)
・暫時(ざんじ=しばらくの間←→漸次(ぜんじ)
・死骸の首に両手をかけ、髪の毛を抜き始める
☆恐怖を覚える不可解な行動をしていたが、
 理解できるような事実が明らかになったから
死者への冒とく
 →感情的・主観的な正義感で、
  倫理的・論理的なものではない

行為の意味が分からず


☆悪への迷い→否定→肯定と実践→悪の世界


left★板書(+発問)★   
【三】(転)<楼上>
               (悪の肯定と実践)

@<下人と老婆との葛藤>

<心理の推移>
 1.悪を懲らしめたい
 2.行為の意味を知りたい (なぜ髪を抜くのか)
    ↓  (楼上に上がり、老婆をねじ伏せる)
    ↓  (老婆の生死を支配、と意識)
 〇憎悪の念を冷ます
    ↓
 ◎(ある仕事を成就した)
  <安らかな得意と満足>
    ↓ (行為の意味を詰問→「旅の者」と嘘)
 〇(老婆の答えが)
  存外<平凡なのに失望>
  →前の憎悪と冷ややかな侮蔑(ブベツ)
             (あなどり、さげすむ)
    ↓
<<老婆の自己を正当化する論理>>(=生の哲学
 1.確かに悪い
 <しかし>
 2.<悪に対する悪>
 3.<生きるために仕方なくする悪>
   は許される
 →悪の相対性=必要悪の是認(肯定)
              (エゴイズムの論理)
    ↓
A<新しい勇気を得た下人>

 〇下人への影響
  ・にきびを気にしながら聞く
    ↓<しかし>
  ・<ある勇気>(が生まれる)
         (悪の肯定と実践)
    ↓
  ・「きっと、そうか」…嘲るような声で念を押す
              (俺もそうしなければ
    ↓          飢え死にするのだ)
  ・<手をにきびから離し>
   着物を剥ぎとった
    ↓(生の哲学そのものを象徴)
    ↓
 〇わずかに五歩ばかりで…
  <夜の底へ>駆け下りた
  (悪に満ちた闇の世界)

▼〈まとめ〉
楼の上で老婆を捕らえた下人は、老婆の話す生の哲学 を聞いて新しい勇気を得、自我に目覚めて盗人になる という行動に踏み切る

right★補足(+解説)★   





・動物の比喩→鶏の足のような…腕・肉食鳥のような
      …目・鴉の…ような声・蟇の…ような声


・悪そのものと見なしていた老婆が無力な人間である
 と分かり、その生死は優位に立つ自分の決断次第で
 ある              (→悪を支配)
悪を懲らしめた
・老婆に安心させて答えさせる
異常で現実を超えたものだと思っていたが、
 髪を抜いてかつらにするという答えは、
 思いのほか、あまりにも平凡で日常的である
・正義感からではなく、感情的で衝動的に憎む気持ち

絶対的な悪の否定
(例)・死刑制度
   ・戦場の殺人
   ・正当防衛による殺人
   ・飢餓で人肉を食らう事など…
・極限状況における必要悪の是認(肯定)は、
 最小限に限定するべきである=人間らしさ(?)




・老婆の説く生の哲学
今まで生きて来た自分について自己確認し、考える

・迷うことなく、盗人になる勇気
 →生きるために、悪も敢えて行う

自分を正当化する論理によって、老婆自身が被害者
 になるのを認める、皮肉な展開がおかしい

<それまでの自己との訣別>を意味する
 →自我の覚醒・悪の実践
・たたみかけるような簡潔な描写

 →何のためらいもなかった心理
「悪の否定」から「悪の実践」までの人生の距離は
 「わずかに五歩」
でしかない
 →実人生に対する深い絶望を象徴





left★板書(+発問)★   
【四】(結)<羅生門の外>
                  (悪の世界)

〇外には
 ただ<黒洞々たる夜>があるばかり…
   (どうしようもない、悪に満ちた
    底知れぬ真っ暗闇の世界)
    ↓
    ↓
    ↓
    ↓
<下人の行方は誰も知らない>   (大正7年)
               (疑問・否定的?)
    ↑
    ↑
    ↑
※(参考…初出→大正4年)
   「下人は、既に、雨を冒して、
    京都の町へ強盗を働きに急ぎつつあった。」
               (提示・肯定的?)

▼〈まとめ〉
下人が闇の中へ去って行き、行方は誰も知らない

right★補足(+解説)★   



☆下人が新しい勇気を持って生きて行く世界は、
 人間のエゴイズムを認め合うしかない、
 苦しみに満ちた世界である、ことを暗示
=(自分に目覚め、自分を優先する)(近代的な)
 自我に目覚め、悪を実践する人間が生きる世界は、
 底知れぬ真っ暗な闇に閉ざされた世界でしかない。
 →下人を待っているのは、幸か不幸か、生か死か?
エゴイズムに支配された人間の生きて行く世界
 どんなものか、<読者(の想像)に委ねている>
 →曖昧かつ虚無的で、下人はいつか更に巨大な悪に
  呑み込まれてしまいそうなことが予想される

・下人が盗人になって生きて行くことが
 はっきりと示されている
    ↓
☆老婆の説く生の哲学に従って盗人に変身し、明日を
 積極的にたくましく生き抜いて行こうとする下人の
 姿に対して、作者の肯定的な姿勢が感じられる


left★板書(+発問)★   
〈主題〉
善悪が相対化されてしまった中で、心揺れながらも、 生きるためには、必要悪を肯定して実践するという、<エゴイズム>に支配された人間の姿・生き方を描く

〈補足…下人を取り巻く状況と展開〉
 C老婆との出会い
      ↓
     生の哲学を教示(悪の否定)
      ↓
     自分の生を肯定(悪の肯定)
      ↓
     老婆の哲学に便乗して行動(悪の実践)
      ↓
 善悪が相対化された近代は、生きることが必要悪を  伴うことが多いことを認め合うしかないのか(?)


right★補足(+解説)★   


〈参考…エゴイズム〉
〇近代の人間の置かれた状況
 ・<自分>に許されていること
 ・<人間>として許されていること
    ↓
 <自分>を優先・肯定=近代の<エゴイズム>

〇人間存在と倫理・生死の問題
 ・<倫理>の次元
 ・<生死>の次元
    ↓
 <死>に対して<生>を全面的に肯定
※下人が老婆から奪い取ったものは、<生の哲学>
 そのものであり、着物で象徴される
    (人間におけるエゴイズムと倫理との関係)

left★板書(+発問)★   
〈参考〉(…定期テスト出題)
問七 次の文は右の『羅生門』における主人公の下人
   について述べたものである。空欄に当てはまる
   言葉をそれぞれ三〜五字程度で答えよ。
  (但し、本文中から抜き出して答えること)
 右の小説に登場する主人公の下人は、( 1 )が
象徴するようなまだ若い青年である。その若者が最後
には生きていくために( 2 )という選択をする。
そうしなければ生きていけないとわかりながらも、な
かなか決心のつかなかった下人だが、老婆の自己の行
為を正当化する論理を聞いて、その生き方にならうこ
とを決めたのである。
 楼上で燃え上がった下人の正義感は、全く別の方向
に働いてしまい、その転換は、「( 3 )を数える
ばかりである」とたとえられるほどあっけないもので
あった。
 下人の将来は駆け下りて行く「( 4 )」が暗示
するように決して明るいものではない。しかし、彼は
その選択をする以外に自分が生きる道がなかったので
ある。


right★補足(+解説)★   
〈参考〉(…定期テスト出題)
問八 右の作者について記した次の文の空欄に当ては
   まる言葉を、それぞれ三字以内で答えよ。
 芥川龍之介は、二十四歳に発表した『( 1 )』
が夏目漱石に認められ激賞されたことにより、文壇に
華々しくデビューした。彼は、『今昔物語集』などの
( 2 )の世界に取材し登場人物の心理を理知的に
分析して再構成した作風から理知派(新現実主義)と
呼ばれる一方、活躍した雑誌の名前をとって新思潮派
とも呼ばれている。
 最初の作品『羅生門』以降は、愛娘の命と引き替え
に絵師としての道を遂げた良秀を描いた『地獄変』や
滝沢馬琴を主人公とした『戯作三昧』など、芸術至上
主義的な作品へと傾いていく。晩年の彼は、「未来に
対するぼんやりとした( 3 )」に苦しむ。架空の
動物の世界から人間界を風刺的に見た『河童』や自己
批判・敗北を綴った遺書ともいえる『或阿呆の一生』
を残し、三十六歳の若さで自らこの世を去った。
芥川龍之介『羅生門』(YouTube 解説)
         ヘンデル「協奏曲ト短調」
         バッハ「平均律1−24ロ短調」

写真は、ネット上のものを無断で借用しているものも あります。どうぞ宜しくお願い致します。

貴方は人目の訪問者です